第1 設問1
1 ある行政作用について処分(行政事件訴訟法(以下略す)3条2項)といえるためには、それにより一方的かつ直接具体的に、国民の権利義務を形成しまたはこれを確定させる法的効果を有するものでなければならないと解される。
ここで行政計画は、それ自体により直ちに特定の国民の法的地位に変動をもたらすものではないとして、処分性が認められないのではないか、問題となる。
2 この点、Sの言及する平成20年判決は、①当該計画により一定の区域内の私人において一定の権利を制限されるという法的地位に立たせられること、②計画決定がされた時点において取消訴訟によりその効力を争わせなければ、原告の権利救済が図れないという点から、当該計画決定に処分性を認めたものである。
3 これに対して本件では、本件計画が定められることにより一定の区域内において都市計画法53条の許可を受けていない建物は建築確認を受けられないことになり、その区域内の土地所有者は、実質的に許可なしには建物を建築できないという法的地位に立たされることになり、この点は上記①があてはまるといえる。
しかしながら、都市計画決定ののちには、さらにそれに基づく都市計画事業認可が予定されているところ、この時点で計画の効力を争うこととしたとしても原告の救済に遅れることになるべき事態は生じない。そこで、上記②の理由は必要かが問題となるが、必要と考える。取消訴訟は公定力ある処分の効力を否定するためのものであるところ、行政の安定性確保の見地からその対象となるものは制限的に解されるべきであり、直接具体性に乏しい行政計画について処分性を認めるためには、特に原告の救済の観点から必要であると認められる場合に限るべきだからである。
よって、本件計画について、処分性は認められない。
第2 設問2
1 違法とする法律論
(1) 都市計画の変更は、「変更することが明らかとなったとき」にしなければならない(都市計画法(以下「法」とする)21条1項)。
このような場合に当たるかというのは、その文言が抽象的であること、都市計画変更の要否は政策的・専門的・技術的判断を要することから、知事等に裁量が認められる事柄であるとはいえる。もっとも、裁量も絶対無制約ではなく、その裁量の逸脱又は濫用に当たると認められる場合には、変更をしないでいることが違法となる。そのような場合に当たるか否かは、当該根拠法規の趣旨をもとに判断すべきである。
(2) 法21条1項は、変更する必要があるか否かは法6条の基礎調査や13条1項19号の政府が行う調査の結果を元にして判断するものとしている。そして6条1項は、人口規模や交通量についても調査の対象としており、また13条1項19号の規定する政府の調査も人口や交通についてのものも含まれるとしている。
以上のことからすれば、「空洞化」が進行し人口が減少しており、また交通量もここ20年の間に約20%も減少しているにもかかわらず、この点を考慮せず当初の内容を変更しないことは、考慮すべきことを考慮しないことにより社会通念上著しく不当な判断がなされているものとして、裁量の逸脱ないし濫用に当たり違法であるといえる。なお、Q県は本件区間の整備が進めば経済が活性化し、交通量も増えると主張するが、それは本件計画をそのまま実行することを前提としたものであり、考慮すべき事項ではないというべきである。
また、Q県は本件区間を整備しないと道路密度が基準道路密度を1キロメートル前後下回ることになってしまうとも主張するが、この基準道路密度というのはQ県の運用事態として事実上定められたものにすぎないから、これにより直ちに本件計画を変更しないことを正当化することはできない。
2 適法とする法律論
(1) ここでは、違法とする側の規範を前提としたうえで、なお本件計画を変更しないことは裁量の範囲を逸脱ないし濫用するものではない主張することが考えられる。
(2) 法6条1項は、基礎調査について「現況」のみならず「将来の見通し」についてまで行うものと規定しており、法5条は「人口、土地利用、交通量…に関する現況及び推移に勘案して」都市計画区域を指定するものとし、さらに「開発」する必要がある区域もその対象としている。これらのことからすると、法は、当該計画によって開発が進むことでその区域の状況も変化していくことも当然に予定しており、したがって計画を「変更する必要があることが明らか」であるかにつき、当該計画が進んだことを前提として得られる人口や交通量の数値をも考慮することを許すものであると解される。そうであるとすれば、本件区間の整備を進めることを前提として得た推計を元に、その変更をする必要はないと判断したことは相当であり、なならその裁量の逸脱ないし濫用に当たるものではない。
また、基準道路密度を下回ることになるという点については、相当の根拠をもって運用されてきたものであると考えられ、道路密度が過小にならないようにすることは交通の便宜・安全のために必要不可欠のことでもあるから、この点も考慮要素として、計画を変更する必要がないとすることは正当であるといえる。
第3 設問3
1 本件計画を変更しないままでいることが適法であることを前提とした場合、本件土地の地価が本件建築制限により低落している分に相当する額の支払いをQ県に対して求める手段としては、損失補償によることが考えられる。そして、このような請求について具体的な法の規定は存在しないところ、憲法29条3項が直接の根拠となるが、どのような場合に損失補償を請求することができるか。その要否の基準が問題となる。
2 この点、同項の趣旨は、公的利益のために私人の財産権に制限を加えることで特定の私人において生じた損失を、国民全体の負担とすることにより公平を図る点にあると解される。したがって、損失補償の要否は、特定個人において、社会通念上受忍限度を超えた制約を課すことになるかをもって判断するのが相当である。
3 これを本件についてみると、確かに本件建築制限によって生じた地価の低落は、経済的損失として軽微なものとはいえず、受忍限度を超えるものといえると思える。
しかしかかる損失は、建築制限によってその区域の地価が全体的に下落したことにより反射的に被ったものに過ぎず、また特定の個人に対してではなくその区域に土地を所有する者について一般的に生じた不利益であるといえる。
したがって、かかる損失は本件建築制限から生じた反射的、一般的な損失にすぎず、特定個人に生じた受忍限度を超えた損失であるということはできないから、損失補償は不要である。
4 よって、本件支払い請求は認められない。
以上
【体験談】
・設問1について
ぱっと見たとき、計画についてはある程度勉強していたので大丈夫だろうと思った。しかし本問の誘導の趣旨が全くわからず、また条文の構造についてもよくわからなくなってしまい、かなり混乱した。結局誘導をかなり無視するかたちで、引用されている判例について知っているその法的論理構成を引き合いに出して論じることしかできず、かなり抽象的な議論に終始してしまった。
・設問2について
設問1で混乱したせいで、設問2についてもきちんとまとまっていないまま見切り発車してしまったため、バランスの悪い論述になってしまった。
基準道路密度に関する問題について、法規範でないことを中心に論じてしまったが、もっと実質的に考慮してはいけないもしくは重視すべきでない事項であるか、といった点を法令の趣旨と関連させて論じるべきだったと思う。
・設問3は憲法で勉強した損失補償の話を思い出しながら書いた。行政法として損失補償について論述したことはなかったので若干怖かったが、それ以外書けないし、どの法分野に位置づけるにせよ損失補償は損失補償なので問題なかろうということで、迷わず書いた。
第1 設問1
1 提訴すべき訴訟
本件では既にB村からA寺への助成金の支給は完了してしまっているところ、Dとしてはかかる支給が憲法に違反する違法なものであるとしてA寺の不当利得でありB村へ返還るよう求めるのが適当である。
すなわち、地方自治法242条の2第1項4号に基づきB村村長を被告としてA寺へ助成金の返還を求めることを義務付ける訴えを提起するべきである。
2 憲法上の主張
(1) A寺への総額7500万円に上る助成金はB村の予算として支出されたものであるから「公金」の「支出」に当たることは明らかである。またA寺はC宗の末寺として特定の宗教の信仰等を主な目的とする団体であるから「宗教上の組織」に当たることも明らかである。
したがって、本件助成金の支出は憲法(以下略す)89条前段に反し違憲であるのではないかと考えられる。
(2) ここで、89条前段は、20条1項後段や3項の規定する政教分離の原則を財政面から規定したものと解されるが、宗教上の組織に対する公金等の支出のすべてが政教分離原則に反し許されないというものではない。
すなわち、その目的が宗教的意義を有し、それにより特定の宗教を助長し他の宗教を圧迫するような効果を生じさせることになるようなものに限り、89条前段に反するとして違憲となる。そして、このような許されないかかわり合いに当たるか否かは、支出の外部的側面のみならず、当該宗教上の組織の性格、当該支出の目的や経緯、支出の対象となるものの性格、支出の規模、当該支出に対する一般人の評価等の諸般の事情を考慮して総合的に決するべきである。
(3) 以上にしたがい、本件公金の支出が違憲であるかを検討する。
ア A寺の性格
A寺は、C宗の末寺であり、礼拝供養といった宗教儀式も行なっており、宗教団体であることは明らかである。B村ではA寺は村民の交流の場ともなっており檀家でない者も含め村民の相談の場となっているが、そのことから直ちにA寺の宗教性が失われるものではない。
イ 本堂の性格
本堂は一般的な寺院の建築様式で建てられており、観音菩薩像が祀られ、礼拝供養等の宗教儀式も行われているというのであるから、宗教的性格の強い施設であり、一般人からみてもそのような印象を強く受ける場所であるといえる。本堂では他にも村民の相談も行なっているというが、それだけをもって世俗的な施設であるということはできない。
ウ 墓地の性格
A寺の墓地はB村唯一の大きな墓地であり、「宗旨・宗派は問わない」としていることから世俗性が強いかにも思える。
しかし「宗旨・宗派は問わない」というのは希望者がC宗の典礼方式以外で埋葬又は埋蔵を行うことまで許す趣旨ではなく、C宗という特定の宗教のそれに従って埋葬等することを求められるのであるから、A寺の墓地はなお宗教的性格を有しているといえる。
エ 庫裏の性格
庫裏は住職の住居であって、それ自体は宗教的な施設とはいえない。しかしA寺の住職の住居のために公金を支出するという行為は特定の宗教の長に特権を付与することにほかならず、20条1項後段の趣旨に照らしてその行為自体の目的が多分に宗教的意義を有し、またA寺を特に助長するものであるといえる。
オ 助成の経緯、助成金の金額等
本件の助成は、偶然に起こった災害の復興を目的とするものであり、一見するとその目的は宗教的意義を有しないようにも思える。しかし、あくまで私人であるA寺にのみ特別に再建助成金を支出することは村としての復興支援の一環とみることはできず、各再建費用の半分ないし4分の1とはいえその総額が7500万円と相当高額に上ることも鑑みれば、A寺に特別に利益を与えるものといえ、また一般人をしてそのような印象を抱かざるをえないものである。
カ 以上からすれば、本件助成は明らかに宗教団体であるA寺の宗教施設に対して行われるものであり、その目的は宗教的意義を有し、A寺の宗教を助長し他の宗教を圧迫しうる効果を生じさせるものであるといわざるをえない。
よって、89条前段に反するものであるといえる。
第2 設問2
1 被告側としては、上記のような原告の主張に対し、本件助成の目的は宗教的意義を有するものではなく、またA寺の宗教を助長したり他の宗教を圧迫するようなものではないと反論すると考えられる。
そこで、以下では、原告主張であげた基準に照らし、本件助成がそのような目的及び効果を有するものであるか、検討する。
2 A寺の性格
原告主張のとおり、A寺は、C宗の末寺としてその宗教儀式等も行なっている以上、特定の宗教の信仰等をする団体であるから「宗教上の組織又は団体」であることは明らかである。
もっとも、A寺はB村にある唯一の寺として檀家でない者も含め村民の交流の場として機能しており、そこで行われる灌仏会等の行事についても檀家でない村民の多くも参加しているなど、B村においては世俗的性格の強い場所となっているといえる。
3 本堂の性格
A寺の本堂は村民の相談にも使われているが、一般的な寺院の様式で建てられ、観音菩薩増が置かれ、宗教儀式が行われていることからすれば、やはりその機能目的は主にC宗の信仰等にあり、よって宗教的性格の強い施設であるというべきである。
4 墓地の性格
A寺の墓地はB村にある唯一の大きな墓地であり、また「宗旨・宗派を問わず」受け入れていることからすればB村にとって公共性・世俗性の高い施設であるといえる。
ここで、原告はA寺がC宗の典礼方式で埋葬又は埋蔵することを条件としていることからなお宗教的性格の強い施設であるという。しかし、埋葬等の方式は宗教によって様々でありそれぞれ専門的知識・技術及び特殊な道具や儀式を要することになると予想されるところ、方式まで全く自由とすることは相当の困難を伴うと考えられる。したがってC宗の典礼方式によって行うことを条件とすることはやむをえず、一方でそれ自体は宗教的な理由から埋葬等の求めを拒むものであるとはいえない。墓地、埋葬等に関する法律が「正当の理由」があれば埋葬等の求めを拒むことができるとしているのも、このような観点に基づくものであるといえる。
したがって、C宗の典礼方式に従うことを条件にしているとはいえ、なお本件墓地は公共性・世俗性が高く、宗教性の希薄な場所であるといえる。
5 庫裏
庫裏は、住職の住居であるところ、原告主張のとおり、これ自体は宗教的施設そのものではないが、これに対して公金で拠出することはA寺にて特別の便宜を図るものとして、宗教的意義の強い行為といえる。そのような意味で、庫裏も宗教性の高い施設であるといえる。
6 助成の経緯、金額等
本件助成は、B村で起こった火災の復興のために、全焼した村立小学校の再建を主たる目的とした補正予算の一環として拠出されたものであり、一見その目的は宗教性の希薄なものとも思える。
しかし、あくまで私人であり、上記のような宗教的性格を有するA寺の各宗教的施設に対し、特別に総額7500万円もの助成金を拠出することはただちに一般公共のためのもので即断することはできない。ここで、A寺の再建には莫大な費用がかかるところ、その檀家の人たちの務めていた会社等も全て被災したためにこれが難しくなっているという事情があるが、それならばその檀家ないし会社等への直接の助成をする方がB村全体の復興のために直接的であるしなにより公平である。
7 結論
以上からすると、本件助成のうち本堂と庫裏に対するものは、あくまで私の宗教上の組織ないし団体であるA寺の有する宗教性の強い施設に対して併せて5000万円もの公金を支出するものであるところ、その額がそれぞれの再建にかかる費用の4分の1、2分の1に過ぎないとはいえ、その目的は宗教的意義を有し、A寺を助長し他の宗教を圧迫する効果を生じさせるものであるといわざるをえない。
一方墓地については、公共性、世俗性の高い場所であり、その再建は村民全体の利益になるものであるといえるので、これへの助成は宗教的意義は希薄であり、A寺を助長する等の効果を生じさせるものでないといえる。
よって、前2者の助成に限り、89条前段に反する。
以上
【体験談】
・一読して頭に浮かんだのは、「砂川市神社土地利用提供行為訴訟」だった。当然事案はかなり異なるが、基本的な考え方は同じだと思い、これに関する判旨を意識しながら書くことを心がけた。そこで、政教分離原則について、20条3項も指摘するか迷ったが、同訴訟では89条前段は20条1項の趣旨を財政的側面から…と論じていたことを思い出し、その点を指摘したうえ、89条前段のみで論じることにした。
・政教分離についての法律論についてはどこまで論じるべきか悩んだが、本問では事実が多く、実際の訴訟ではそれぞれの事実の評価、またそれらを併せた全体的な評価として政教分離に反するかが争われるだろうと思い、法律論にはあまり立ち入らず(また原告被告で対立もさせず)、専ら事実の評価について主張反論を展開させることにした。今思えば、もう少し法律論も丁寧に論じておくべきだったとも思う。
・「墓地、埋葬等に関する法律」についてはどのように使えばよいかわからなかったが、全く触れないのはよくないと思い、なんとかこじつけて触れた。
・結論については、書き進めていくうちに固めた。ひとつひとつを分析的にみていく中で、墓地は公共(的必要)性・世俗性が高いから合憲とするのが妥当だろうが、他は宗教性が高いから違憲とすべきという方向に持っていきやすいと気づいた。本堂についての助成は費用の4分の1になっている事実に関してはうまく論じられなかった。
1 提訴すべき訴訟
本件では既にB村からA寺への助成金の支給は完了してしまっているところ、Dとしてはかかる支給が憲法に違反する違法なものであるとしてA寺の不当利得でありB村へ返還るよう求めるのが適当である。
すなわち、地方自治法242条の2第1項4号に基づきB村村長を被告としてA寺へ助成金の返還を求めることを義務付ける訴えを提起するべきである。
2 憲法上の主張
(1) A寺への総額7500万円に上る助成金はB村の予算として支出されたものであるから「公金」の「支出」に当たることは明らかである。またA寺はC宗の末寺として特定の宗教の信仰等を主な目的とする団体であるから「宗教上の組織」に当たることも明らかである。
したがって、本件助成金の支出は憲法(以下略す)89条前段に反し違憲であるのではないかと考えられる。
(2) ここで、89条前段は、20条1項後段や3項の規定する政教分離の原則を財政面から規定したものと解されるが、宗教上の組織に対する公金等の支出のすべてが政教分離原則に反し許されないというものではない。
すなわち、その目的が宗教的意義を有し、それにより特定の宗教を助長し他の宗教を圧迫するような効果を生じさせることになるようなものに限り、89条前段に反するとして違憲となる。そして、このような許されないかかわり合いに当たるか否かは、支出の外部的側面のみならず、当該宗教上の組織の性格、当該支出の目的や経緯、支出の対象となるものの性格、支出の規模、当該支出に対する一般人の評価等の諸般の事情を考慮して総合的に決するべきである。
(3) 以上にしたがい、本件公金の支出が違憲であるかを検討する。
ア A寺の性格
A寺は、C宗の末寺であり、礼拝供養といった宗教儀式も行なっており、宗教団体であることは明らかである。B村ではA寺は村民の交流の場ともなっており檀家でない者も含め村民の相談の場となっているが、そのことから直ちにA寺の宗教性が失われるものではない。
イ 本堂の性格
本堂は一般的な寺院の建築様式で建てられており、観音菩薩像が祀られ、礼拝供養等の宗教儀式も行われているというのであるから、宗教的性格の強い施設であり、一般人からみてもそのような印象を強く受ける場所であるといえる。本堂では他にも村民の相談も行なっているというが、それだけをもって世俗的な施設であるということはできない。
ウ 墓地の性格
A寺の墓地はB村唯一の大きな墓地であり、「宗旨・宗派は問わない」としていることから世俗性が強いかにも思える。
しかし「宗旨・宗派は問わない」というのは希望者がC宗の典礼方式以外で埋葬又は埋蔵を行うことまで許す趣旨ではなく、C宗という特定の宗教のそれに従って埋葬等することを求められるのであるから、A寺の墓地はなお宗教的性格を有しているといえる。
エ 庫裏の性格
庫裏は住職の住居であって、それ自体は宗教的な施設とはいえない。しかしA寺の住職の住居のために公金を支出するという行為は特定の宗教の長に特権を付与することにほかならず、20条1項後段の趣旨に照らしてその行為自体の目的が多分に宗教的意義を有し、またA寺を特に助長するものであるといえる。
オ 助成の経緯、助成金の金額等
本件の助成は、偶然に起こった災害の復興を目的とするものであり、一見するとその目的は宗教的意義を有しないようにも思える。しかし、あくまで私人であるA寺にのみ特別に再建助成金を支出することは村としての復興支援の一環とみることはできず、各再建費用の半分ないし4分の1とはいえその総額が7500万円と相当高額に上ることも鑑みれば、A寺に特別に利益を与えるものといえ、また一般人をしてそのような印象を抱かざるをえないものである。
カ 以上からすれば、本件助成は明らかに宗教団体であるA寺の宗教施設に対して行われるものであり、その目的は宗教的意義を有し、A寺の宗教を助長し他の宗教を圧迫しうる効果を生じさせるものであるといわざるをえない。
よって、89条前段に反するものであるといえる。
第2 設問2
1 被告側としては、上記のような原告の主張に対し、本件助成の目的は宗教的意義を有するものではなく、またA寺の宗教を助長したり他の宗教を圧迫するようなものではないと反論すると考えられる。
そこで、以下では、原告主張であげた基準に照らし、本件助成がそのような目的及び効果を有するものであるか、検討する。
2 A寺の性格
原告主張のとおり、A寺は、C宗の末寺としてその宗教儀式等も行なっている以上、特定の宗教の信仰等をする団体であるから「宗教上の組織又は団体」であることは明らかである。
もっとも、A寺はB村にある唯一の寺として檀家でない者も含め村民の交流の場として機能しており、そこで行われる灌仏会等の行事についても檀家でない村民の多くも参加しているなど、B村においては世俗的性格の強い場所となっているといえる。
3 本堂の性格
A寺の本堂は村民の相談にも使われているが、一般的な寺院の様式で建てられ、観音菩薩増が置かれ、宗教儀式が行われていることからすれば、やはりその機能目的は主にC宗の信仰等にあり、よって宗教的性格の強い施設であるというべきである。
4 墓地の性格
A寺の墓地はB村にある唯一の大きな墓地であり、また「宗旨・宗派を問わず」受け入れていることからすればB村にとって公共性・世俗性の高い施設であるといえる。
ここで、原告はA寺がC宗の典礼方式で埋葬又は埋蔵することを条件としていることからなお宗教的性格の強い施設であるという。しかし、埋葬等の方式は宗教によって様々でありそれぞれ専門的知識・技術及び特殊な道具や儀式を要することになると予想されるところ、方式まで全く自由とすることは相当の困難を伴うと考えられる。したがってC宗の典礼方式によって行うことを条件とすることはやむをえず、一方でそれ自体は宗教的な理由から埋葬等の求めを拒むものであるとはいえない。墓地、埋葬等に関する法律が「正当の理由」があれば埋葬等の求めを拒むことができるとしているのも、このような観点に基づくものであるといえる。
したがって、C宗の典礼方式に従うことを条件にしているとはいえ、なお本件墓地は公共性・世俗性が高く、宗教性の希薄な場所であるといえる。
5 庫裏
庫裏は、住職の住居であるところ、原告主張のとおり、これ自体は宗教的施設そのものではないが、これに対して公金で拠出することはA寺にて特別の便宜を図るものとして、宗教的意義の強い行為といえる。そのような意味で、庫裏も宗教性の高い施設であるといえる。
6 助成の経緯、金額等
本件助成は、B村で起こった火災の復興のために、全焼した村立小学校の再建を主たる目的とした補正予算の一環として拠出されたものであり、一見その目的は宗教性の希薄なものとも思える。
しかし、あくまで私人であり、上記のような宗教的性格を有するA寺の各宗教的施設に対し、特別に総額7500万円もの助成金を拠出することはただちに一般公共のためのもので即断することはできない。ここで、A寺の再建には莫大な費用がかかるところ、その檀家の人たちの務めていた会社等も全て被災したためにこれが難しくなっているという事情があるが、それならばその檀家ないし会社等への直接の助成をする方がB村全体の復興のために直接的であるしなにより公平である。
7 結論
以上からすると、本件助成のうち本堂と庫裏に対するものは、あくまで私の宗教上の組織ないし団体であるA寺の有する宗教性の強い施設に対して併せて5000万円もの公金を支出するものであるところ、その額がそれぞれの再建にかかる費用の4分の1、2分の1に過ぎないとはいえ、その目的は宗教的意義を有し、A寺を助長し他の宗教を圧迫する効果を生じさせるものであるといわざるをえない。
一方墓地については、公共性、世俗性の高い場所であり、その再建は村民全体の利益になるものであるといえるので、これへの助成は宗教的意義は希薄であり、A寺を助長する等の効果を生じさせるものでないといえる。
よって、前2者の助成に限り、89条前段に反する。
以上
【体験談】
・一読して頭に浮かんだのは、「砂川市神社土地利用提供行為訴訟」だった。当然事案はかなり異なるが、基本的な考え方は同じだと思い、これに関する判旨を意識しながら書くことを心がけた。そこで、政教分離原則について、20条3項も指摘するか迷ったが、同訴訟では89条前段は20条1項の趣旨を財政的側面から…と論じていたことを思い出し、その点を指摘したうえ、89条前段のみで論じることにした。
・政教分離についての法律論についてはどこまで論じるべきか悩んだが、本問では事実が多く、実際の訴訟ではそれぞれの事実の評価、またそれらを併せた全体的な評価として政教分離に反するかが争われるだろうと思い、法律論にはあまり立ち入らず(また原告被告で対立もさせず)、専ら事実の評価について主張反論を展開させることにした。今思えば、もう少し法律論も丁寧に論じておくべきだったとも思う。
・「墓地、埋葬等に関する法律」についてはどのように使えばよいかわからなかったが、全く触れないのはよくないと思い、なんとかこじつけて触れた。
・結論については、書き進めていくうちに固めた。ひとつひとつを分析的にみていく中で、墓地は公共(的必要)性・世俗性が高いから合憲とするのが妥当だろうが、他は宗教性が高いから違憲とすべきという方向に持っていきやすいと気づいた。本堂についての助成は費用の4分の1になっている事実に関してはうまく論じられなかった。
リクエストがあったのでうpします。
順位が出た後にしようと思っていたのですが、
リクエストがあったのでうpします(大事なことなので2回(ry)。
作成したのは試験後2週間以内でしたので、まあまあ記憶は新鮮な中で書きました。
それでもところどころ盛ってるかもしれません(^^;)
順位が出た後にしようと思っていたのですが、
リクエストがあったのでうpします(大事なことなので2回(ry)。
作成したのは試験後2週間以内でしたので、まあまあ記憶は新鮮な中で書きました。
それでもところどころ盛ってるかもしれません(^^;)