メジャーレーベルすら足蹴にする 「同人音楽」ってなんなんだ?
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自宅のパソコンで、アイドルソングやアニソンのアレンジ曲、あるいはオリジナル曲をひとりで制作、ニコ動に上げたところ、話題になってメジャーレコード会社が食指を動かす!? ヲタクコミュニティを背景に生まれた、そんな「同人音楽」の魅力を探る!!
CDの売り上げは低迷を続け、もはや"斜陽産業"だといわれて久しい音楽業界。今、そんな音楽業界で「同人音楽」なるジャンルが注目を浴びている。ヲタク系の同人たちが集い、東京・有明の東京ビッグサイトでブースを並べて自分たちの同人誌を出品する世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」、通称「コミケ」はご存じだろう。近年では毎回50万人以上を動員するこのコミケの一角で、同人音楽もその販売スペースを年々拡大し続けているのだ。
同人音楽とは、同人誌と同じく、基本的にその制作スタイルは、アニメ、ゲームなどの音楽に勝手にアレンジを施した二次創作が大半。もちろん同人誌同様オリジナル作品も少なくないが、それらもヲタクカルチャーからのなんらかの影響が垣間見える作品が多い。
同人音楽に詳しい音楽評論家の冨田明宏氏は、その始まりをこう説明する。
「ことの起こりは、1994~95年。この頃はまだ、個人が自分で音楽を作るためのシステムなどほとんど存在しておらず、ゲーム音楽などを手がけるプロのミュージシャンが遊びで始めたものでした。自分で作ったゲーム音源のアレンジ作品などを、即売会に出品していたんですね。しかし、90年代後半にインターネットが普及し始めると、FM音源(パソコン上で再生する電子音源の一種)などを使って、素人がゲーム音楽やアニメソングなどを自分流にアレンジした二次創作曲が続々とネット上にアップされるようになりました。00年にJASRACがこれを問題視していることを表明しますが、同時期にDTM(「デスクトップミュージック」の略。パソコンと電子楽器を接続し演奏・制作される音楽)用のパソコンソフトが低価格化して一般層にまで浸透、CD-Rも安価に入手可能になると、二次創作曲の発表の場はコミケなどの即売会へと移行していきます」
その結果、個人のみならず、即売会・ネットなどで知り合った同人コミュニティ(同人サークル)の手になる同人音楽も増加し、同人イラスト作家によるジャケットやブックレットが付されたもの、音楽的にプロ顔負けのクオリティを持つものも登場、「とらのあな」「メロンブックス」などのヲタク系ショップでの委託販売も広まることにより、00年代前半には、制作から販売に至るシステムとしては、現在とほとんど変わらない構造が完成するに至る。"商品"としての体を成した"同人音楽市場"の成立である。
「さらに06年以降はYouTube、ニコニコ動画などの動画共有サイトが開設され、それらのサイトで同人音楽を楽しむ文化も登場し、再びネット上でのシーンが活発化。結果、『音楽をパソコンで作るアマチュア層』が飛躍的に拡大し、同人音楽はさらなる進化を遂げました」(冨田氏)
では、こうした歴史の中で、実際にどんな音楽コンテンツが制作され、盛り上がりを見せていったのだろうか?
(続きは「プレミアサイゾー」で/文=岡島紳士[http://oshinshi.web.fc2.com/])
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同人音楽とは、同人誌と同じく、基本的にその制作スタイルは、アニメ、ゲームなどの音楽に勝手にアレンジを施した二次創作が大半。もちろん同人誌同様オリジナル作品も少なくないが、それらもヲタクカルチャーからのなんらかの影響が垣間見える作品が多い。
同人音楽に詳しい音楽評論家の冨田明宏氏は、その始まりをこう説明する。
「ことの起こりは、1994~95年。この頃はまだ、個人が自分で音楽を作るためのシステムなどほとんど存在しておらず、ゲーム音楽などを手がけるプロのミュージシャンが遊びで始めたものでした。自分で作ったゲーム音源のアレンジ作品などを、即売会に出品していたんですね。しかし、90年代後半にインターネットが普及し始めると、FM音源(パソコン上で再生する電子音源の一種)などを使って、素人がゲーム音楽やアニメソングなどを自分流にアレンジした二次創作曲が続々とネット上にアップされるようになりました。00年にJASRACがこれを問題視していることを表明しますが、同時期にDTM(「デスクトップミュージック」の略。パソコンと電子楽器を接続し演奏・制作される音楽)用のパソコンソフトが低価格化して一般層にまで浸透、CD-Rも安価に入手可能になると、二次創作曲の発表の場はコミケなどの即売会へと移行していきます」
その結果、個人のみならず、即売会・ネットなどで知り合った同人コミュニティ(同人サークル)の手になる同人音楽も増加し、同人イラスト作家によるジャケットやブックレットが付されたもの、音楽的にプロ顔負けのクオリティを持つものも登場、「とらのあな」「メロンブックス」などのヲタク系ショップでの委託販売も広まることにより、00年代前半には、制作から販売に至るシステムとしては、現在とほとんど変わらない構造が完成するに至る。"商品"としての体を成した"同人音楽市場"の成立である。
「さらに06年以降はYouTube、ニコニコ動画などの動画共有サイトが開設され、それらのサイトで同人音楽を楽しむ文化も登場し、再びネット上でのシーンが活発化。結果、『音楽をパソコンで作るアマチュア層』が飛躍的に拡大し、同人音楽はさらなる進化を遂げました」(冨田氏)
では、こうした歴史の中で、実際にどんな音楽コンテンツが制作され、盛り上がりを見せていったのだろうか?
(続きは「プレミアサイゾー」で/文=岡島紳士[http://oshinshi.web.fc2.com/])
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よりによってアノ曲! 紫綬褒章の久石譲作品紹介でフジテレビが大間違い
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宮崎駿監督アニメ作品などで音楽を担当していることで知られる作曲家の久石譲氏が紫綬褒章を受章した。17日に放送されたフジテレビのバラエティー番組『どーも・キニナル!』では、16日に行われた同章の伝達式の模様を伝え、久石氏のインタビューも紹介したが、その際に画面バックで久石氏の作品ではない楽曲が使われていたことが問題となっている。
久石氏はインタビューのなかで、これまでで最も思い出に残る作品をレポーターからたずねられると、「『風の谷のナウシカ』ですね」と答えた。ところが、その様子を伝える画面のバックに流れていたのは、安田成美が歌う「風の谷のナウシカ」。この曲、実は作詞は松本隆氏、作曲は細野晴臣氏であって、久石作品ではない。
そもそも、この曲は、関係者が映画の主題歌にしようと作ったものの、歌と映画の内容が乖離していることなどから、宮崎監督らが作中での使用に反対。結局、プロモーション用のイメージソングとしてしか使われなかったという、いわくつきの楽曲なのだ。
久石氏が作曲した『ナウシカ』作中の曲は、雄大な作品のイメージを見事に表現したいくつかの交響曲や、当時4歳だった久石氏の娘、麻衣さんが歌う「ラン ラン ララ ランランラン」といったフレーズが耳に残る「遠い日々」という楽曲だ。
それらが宮崎監督に評価されて一躍脚光を浴びた久石氏は、以降、『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』など宮崎作品に次々と楽曲を提供、宮崎アニメには欠かせない存在となり、今の地位を築いた。それだけに、ナウシカの楽曲は、思い出深い作品なのだ。
一方、安田成美が歌った曲は、映画製作時に周囲の関係者がビジネスのために作り出した作品で、映画そのものから見た場合には、いわば"鬼っ子"のような存在。よりによって、そんな曲が、最も思い出深い作品だと紹介されたなら、久石氏もたまったものではないだろう。
久石氏の事務所は、今回の件について「特にコメントはしません」としているが、今後のテレビ局への対応を含め、久石氏本人の感想を求めると「これから検討します」との返答だった。
国民的な人気を誇る映画音楽家のめでたい席を、台無しにしかねなかった今回のミス。ファンの間でも「よりによってあの曲とは」「一番やっちゃいけない間違いだろ」などと怒りの声が上がっている。今後、フジテレビと久石氏側の関係が悪化しなければいいが......。
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久石氏はインタビューのなかで、これまでで最も思い出に残る作品をレポーターからたずねられると、「『風の谷のナウシカ』ですね」と答えた。ところが、その様子を伝える画面のバックに流れていたのは、安田成美が歌う「風の谷のナウシカ」。この曲、実は作詞は松本隆氏、作曲は細野晴臣氏であって、久石作品ではない。
そもそも、この曲は、関係者が映画の主題歌にしようと作ったものの、歌と映画の内容が乖離していることなどから、宮崎監督らが作中での使用に反対。結局、プロモーション用のイメージソングとしてしか使われなかったという、いわくつきの楽曲なのだ。
久石氏が作曲した『ナウシカ』作中の曲は、雄大な作品のイメージを見事に表現したいくつかの交響曲や、当時4歳だった久石氏の娘、麻衣さんが歌う「ラン ラン ララ ランランラン」といったフレーズが耳に残る「遠い日々」という楽曲だ。
それらが宮崎監督に評価されて一躍脚光を浴びた久石氏は、以降、『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』など宮崎作品に次々と楽曲を提供、宮崎アニメには欠かせない存在となり、今の地位を築いた。それだけに、ナウシカの楽曲は、思い出深い作品なのだ。
一方、安田成美が歌った曲は、映画製作時に周囲の関係者がビジネスのために作り出した作品で、映画そのものから見た場合には、いわば"鬼っ子"のような存在。よりによって、そんな曲が、最も思い出深い作品だと紹介されたなら、久石氏もたまったものではないだろう。
久石氏の事務所は、今回の件について「特にコメントはしません」としているが、今後のテレビ局への対応を含め、久石氏本人の感想を求めると「これから検討します」との返答だった。
国民的な人気を誇る映画音楽家のめでたい席を、台無しにしかねなかった今回のミス。ファンの間でも「よりによってあの曲とは」「一番やっちゃいけない間違いだろ」などと怒りの声が上がっている。今後、フジテレビと久石氏側の関係が悪化しなければいいが......。
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タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』
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クエンティン・タランティーノ監督が構想から10年を費やして完成させた、初の戦争映画『イングロリアス・バスターズ』。第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されたパリの小さな映画館を舞台にした"映画愛"に満ち満ちた作品だ。タランティーノ版『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)と言ってもいい、戦争と映画館を巡るおとぎ話となっている。
でも、そこは"永遠の映画小僧"タラちゃんだけに、万人が泣ける感動作になるはずがない。「映画が好きで好きでたまらないから、映画館ごと宇宙の彼方まで吹き飛ばしてしまえ!」という、タラちゃんならではの歪んだ愛情が炸裂している。『レザボア・ドッグス』(92)ばりの拷問シーンに、『パルプ・フィクション』(94)的な変人たちが続々と登場し、『キル・ビル』(03)のような血まみれの復讐が遂行されるのである。ポイズン度120%。すでに映画が公開された欧米では、タランティーノ映画史上最高のヒットを記録しているが、彼が監督デビューして約18年の間に、それだけ世の中にはおかしな人たちが増えてきたということか。まぁ、ラストシーンで思わず拍手してしまった自分もその1人なわけだが。
タランティーノ監督、主演のブラッド・ピット、映画館の支配人役のフランス人女優メラニー・ロラン、『キル・ビルvol.2』(04)に続いての出演となったジュリー・ドレフュスらが揃った来日会見が、11月4日六本木のザ・リッツ・カールトンで行なわれ、400人の報道陣が集まった会見場の末席に座ることができた。質疑応答での「AERA」(朝日新聞社)の「ナチス・ドイツを取り上げた理由は? 戦後60年の今だからこそ描きたかったことは?」という問いに対して、タランティーノ監督は「戦争映画が好きだから! 戦争映画が作りたかったから!」という身も蓋もない返答。さすが、我が道を行くタラちゃんだ。また、ブラピのアゴ髭は撮影時よりずいぶんと伸びて、ボーボー状態。かなり奇妙なことになっていたが、ハリウッドいちのスター俳優のルックスについてツッコめる記者はいない。ブラピ、自分が二枚目であることにすっかり飽きているんだろうな。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)でもシワシワのおじいちゃんを嬉々として演じていたし。
そんなブラピが、本作で演じているアルド・レイン中尉は、『12モンキーズ』(95)、『ファイト・クラブ』(99)で演じた役柄以上の奇人変人。米軍の特殊部隊イングロリアス・バスターズ(名誉なき野郎ども)を率いて、ナチスを見つけては次々とサディスティックに痛めつけ、そんでもって頭の皮を剥いでポイントカードのように貯め込んでいる。正義のためではなく、それが楽しいから。そんなクレイジーなレイン中尉が牢獄行きにならないのは、ひとえに戦時中ゆえ。ナチスを血祭りにすればするほど、彼は連合軍側の勇敢なヒーローとして称賛を浴びる。すべての歴史は勝者によって書き残されるのだ。
隠れユダヤ人であるショシャナ(メラニー・ロラ
ン)が経営する小さな映画館が舞台。本多猪四郎
監督作『ガス人間第一号』(60)や大林宣彦監督
作『HOUSE ハウス』(77)が好きな人たちなら、
拍手喝采したくなるようなクライマックスが待っ
ている。
同い歳生まれのタランティーノとブラピは、本作が2度目の顔合わせだ。最初のコラボは、タランティーノが脚本提供したトニー・スコット監督作『トゥルー・ロマンス』(93)。『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)で売り出し中だったブラピは、マリフアナ中毒のプー太郎役でカメオ出演している。このときのキャラ設定は元の脚本にはなく、ブラピ自身が提案したもの。そういえば『トゥルー・ロマンス』も"映画愛"が溢れ出したストーリーだった。コミックショップに勤めるオタク青年がコールガールのヒロインと運命的に出会う場所が、ソニー千葉主演のアクション映画『激突!殺人拳』(74)を上映する場末の映画館(グラインドハウス)だった。映画館を起点に、無鉄砲な男女の甘美な愛の逃避行劇が始まった。いつもは冗漫になりがちなタランティーノ作品だが、映像職人トニー・スコット監督のテキパキした仕事ぶりによって、ピチッとした出来映えとなっている。好き嫌いの分かれるタランティーノ作品の中では、幅広く映画ファンに親しまれている作品だろう。
『イングロリアス・バスターズ』に話を戻そう。公開初日の11月20日(金)から11月23日(月)の4日間限定で、"面白さタランかったら、全額返金しバスターズ"キャンペーンを実施することでも話題となっている。上映開始1時間以内に退場すれば、入場料を劇場で返金するというもの。"洋画離れ"が進む日本の配給サイドからの提案に対し、タランティーノいわく「受けてやろうじゃねえの。途中で出れるものなら、出てみやがれ。全然構わないぜ。残ったお客さんたちとオレたちで、大いに盛り上がっちゃうもんね」とのことだ。
本作は5章立てとなっており、映画館の女支配人ショシャナがナチスへの報復を決意する第3章の終わりで、約1時間経過となる。この後の第4章がタランティーノ作品で恒例となっている、酒場での大ヨタ話大会。このシーン、タランティーノ好きなバイリンガルでないと正直言ってダレてしまう。しかし、下らないヨタ話が続けば続くほど、その後にドーンと大きな見せ場が待っているのがタランティーノ作品のセオリー。そして、その期待通り、最終章となる第5章「ジャイアント・フェイスの逆襲」の素晴らしいこと! ヒトラーも来場する戦意高揚映画の上映会場に選ばれたショシャナの映画館が、ナチス撲滅作戦の実行場所となる。新作映画がプレミア上映されるというワクワク感とヒトラー暗殺というハラハラ感が寄り添う、異様な胸騒ぎ。そしてついに、レイン中尉率いるバスターズの面々とナチスへの復讐を誓うショシャナ、ショシャナに恋心抱くドイツ兵、さらにヒトラーにゲッペルス......と有名無名、フィクション上の人物、歴史上、実在する人物たちの運命がグランドクロスのように映画館で重なり合う。その瞬間に、この映画館はかつてない大歓声(悲鳴)が湧き上がる。
劇中に『意志の勝利』(34)、『オリンピア』(38)といった史上最強のプロパガンダ映画を手掛けたドイツ出身の女優&監督レニ・リーフェンシュタール(1902~2003)の名前も出てくるが、タランティーノは"強い美女が好き"というだけで、「プロパガンダ映画は許すまじ。映画は平和のためにあれ」という主義主張は格別ないと思われる。映画そのものに善悪の区別はなく、つまらない映画こそ糾弾されるべきという考えだろう。だがタランティーノは、やりたい放題の悪趣味な戦争映画を完成させたことで、極めて正しい反戦映画の新しいマスターピースを作ってしまった。ブラピ扮するレイン中尉がナチスの頭の皮を剥ぐシーンは、現実の戦争が行なっている無差別大量殺戮に比べれば、とても慎ましい牧歌的風景にしか映らないではないか。
(文=長野辰次)
●『イングロリアス・バスターズ』
監督・脚本・製作/クエンティン・タランティーノ 出演/ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリスト・ヴァルツ、イーライ・ロス、ミヒャエル・ファスベンダー、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、マイク・マイヤーズ、ジュリー・ドレフィス 配給/東宝東和 11月20日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー R15+
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クエンティン・タランティーノ監督が構想から10年を費やして完成させた、初の戦争映画『イングロリアス・バスターズ』。第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されたパリの小さな映画館を舞台にした"映画愛"に満ち満ちた作品だ。タランティーノ版『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)と言ってもいい、戦争と映画館を巡るおとぎ話となっている。
でも、そこは"永遠の映画小僧"タラちゃんだけに、万人が泣ける感動作になるはずがない。「映画が好きで好きでたまらないから、映画館ごと宇宙の彼方まで吹き飛ばしてしまえ!」という、タラちゃんならではの歪んだ愛情が炸裂している。『レザボア・ドッグス』(92)ばりの拷問シーンに、『パルプ・フィクション』(94)的な変人たちが続々と登場し、『キル・ビル』(03)のような血まみれの復讐が遂行されるのである。ポイズン度120%。すでに映画が公開された欧米では、タランティーノ映画史上最高のヒットを記録しているが、彼が監督デビューして約18年の間に、それだけ世の中にはおかしな人たちが増えてきたということか。まぁ、ラストシーンで思わず拍手してしまった自分もその1人なわけだが。
タランティーノ監督、主演のブラッド・ピット、映画館の支配人役のフランス人女優メラニー・ロラン、『キル・ビルvol.2』(04)に続いての出演となったジュリー・ドレフュスらが揃った来日会見が、11月4日六本木のザ・リッツ・カールトンで行なわれ、400人の報道陣が集まった会見場の末席に座ることができた。質疑応答での「AERA」(朝日新聞社)の「ナチス・ドイツを取り上げた理由は? 戦後60年の今だからこそ描きたかったことは?」という問いに対して、タランティーノ監督は「戦争映画が好きだから! 戦争映画が作りたかったから!」という身も蓋もない返答。さすが、我が道を行くタラちゃんだ。また、ブラピのアゴ髭は撮影時よりずいぶんと伸びて、ボーボー状態。かなり奇妙なことになっていたが、ハリウッドいちのスター俳優のルックスについてツッコめる記者はいない。ブラピ、自分が二枚目であることにすっかり飽きているんだろうな。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)でもシワシワのおじいちゃんを嬉々として演じていたし。
そんなブラピが、本作で演じているアルド・レイン中尉は、『12モンキーズ』(95)、『ファイト・クラブ』(99)で演じた役柄以上の奇人変人。米軍の特殊部隊イングロリアス・バスターズ(名誉なき野郎ども)を率いて、ナチスを見つけては次々とサディスティックに痛めつけ、そんでもって頭の皮を剥いでポイントカードのように貯め込んでいる。正義のためではなく、それが楽しいから。そんなクレイジーなレイン中尉が牢獄行きにならないのは、ひとえに戦時中ゆえ。ナチスを血祭りにすればするほど、彼は連合軍側の勇敢なヒーローとして称賛を浴びる。すべての歴史は勝者によって書き残されるのだ。
隠れユダヤ人であるショシャナ(メラニー・ロラ
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監督作『ガス人間第一号』(60)や大林宣彦監督
作『HOUSE ハウス』(77)が好きな人たちなら、
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ている。
同い歳生まれのタランティーノとブラピは、本作が2度目の顔合わせだ。最初のコラボは、タランティーノが脚本提供したトニー・スコット監督作『トゥルー・ロマンス』(93)。『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)で売り出し中だったブラピは、マリフアナ中毒のプー太郎役でカメオ出演している。このときのキャラ設定は元の脚本にはなく、ブラピ自身が提案したもの。そういえば『トゥルー・ロマンス』も"映画愛"が溢れ出したストーリーだった。コミックショップに勤めるオタク青年がコールガールのヒロインと運命的に出会う場所が、ソニー千葉主演のアクション映画『激突!殺人拳』(74)を上映する場末の映画館(グラインドハウス)だった。映画館を起点に、無鉄砲な男女の甘美な愛の逃避行劇が始まった。いつもは冗漫になりがちなタランティーノ作品だが、映像職人トニー・スコット監督のテキパキした仕事ぶりによって、ピチッとした出来映えとなっている。好き嫌いの分かれるタランティーノ作品の中では、幅広く映画ファンに親しまれている作品だろう。
『イングロリアス・バスターズ』に話を戻そう。公開初日の11月20日(金)から11月23日(月)の4日間限定で、"面白さタランかったら、全額返金しバスターズ"キャンペーンを実施することでも話題となっている。上映開始1時間以内に退場すれば、入場料を劇場で返金するというもの。"洋画離れ"が進む日本の配給サイドからの提案に対し、タランティーノいわく「受けてやろうじゃねえの。途中で出れるものなら、出てみやがれ。全然構わないぜ。残ったお客さんたちとオレたちで、大いに盛り上がっちゃうもんね」とのことだ。
本作は5章立てとなっており、映画館の女支配人ショシャナがナチスへの報復を決意する第3章の終わりで、約1時間経過となる。この後の第4章がタランティーノ作品で恒例となっている、酒場での大ヨタ話大会。このシーン、タランティーノ好きなバイリンガルでないと正直言ってダレてしまう。しかし、下らないヨタ話が続けば続くほど、その後にドーンと大きな見せ場が待っているのがタランティーノ作品のセオリー。そして、その期待通り、最終章となる第5章「ジャイアント・フェイスの逆襲」の素晴らしいこと! ヒトラーも来場する戦意高揚映画の上映会場に選ばれたショシャナの映画館が、ナチス撲滅作戦の実行場所となる。新作映画がプレミア上映されるというワクワク感とヒトラー暗殺というハラハラ感が寄り添う、異様な胸騒ぎ。そしてついに、レイン中尉率いるバスターズの面々とナチスへの復讐を誓うショシャナ、ショシャナに恋心抱くドイツ兵、さらにヒトラーにゲッペルス......と有名無名、フィクション上の人物、歴史上、実在する人物たちの運命がグランドクロスのように映画館で重なり合う。その瞬間に、この映画館はかつてない大歓声(悲鳴)が湧き上がる。
劇中に『意志の勝利』(34)、『オリンピア』(38)といった史上最強のプロパガンダ映画を手掛けたドイツ出身の女優&監督レニ・リーフェンシュタール(1902~2003)の名前も出てくるが、タランティーノは"強い美女が好き"というだけで、「プロパガンダ映画は許すまじ。映画は平和のためにあれ」という主義主張は格別ないと思われる。映画そのものに善悪の区別はなく、つまらない映画こそ糾弾されるべきという考えだろう。だがタランティーノは、やりたい放題の悪趣味な戦争映画を完成させたことで、極めて正しい反戦映画の新しいマスターピースを作ってしまった。ブラピ扮するレイン中尉がナチスの頭の皮を剥ぐシーンは、現実の戦争が行なっている無差別大量殺戮に比べれば、とても慎ましい牧歌的風景にしか映らないではないか。
(文=長野辰次)
●『イングロリアス・バスターズ』
監督・脚本・製作/クエンティン・タランティーノ 出演/ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリスト・ヴァルツ、イーライ・ロス、ミヒャエル・ファスベンダー、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー、マイク・マイヤーズ、ジュリー・ドレフィス 配給/東宝東和 11月20日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー R15+
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