一棟マンションを売るとき、売却価格だけを見て「次の物件に使える資金」を決めるのは危険です。仲介手数料などの売却費用、ローンの返済、買主に引き継ぐ敷金、翌年の税金は、それぞれ別に計算する必要があります。

また、収益物件の買主が重視するのは建物の見栄えだけではありません。家賃の実績、今後の修繕、融資条件まで含めて価格を判断します。売却相場の調べ方から費用・税金、七つの手順、失敗を防ぐ販売計画までを整理します。

一棟マンションの売却相場を調べる

地域・築年数別の価格は「登録物件の平均」

健美家の2026年7月期レポートでは、一棟マンションの平均登録価格は全国2億618万円、首都圏2億4,015万円です。首都圏は東京・神奈川・埼玉・千葉に茨城・栃木・群馬・山梨を含む同社の区分であり、東京23区だけの相場ではありません。健美家「2026年7月期レポート」

築年数別では、2025年の全国平均登録価格は資料表記の「築10年未満」で3億1,534万円、「築10年~」で2億4,672万円、「築20年~」で1億6,215万円でした。対応する表面利回りは4.85%、6.26%、8.12%です。健美家「2025年年間レポート」

ここから、同じ建物が築20年で必ず半値になるとはいえません。地域、規模、土地面積、掲載された物件の構成が異なる集団の平均だからです。「築20年になる前に売れば必ず有利」という結論にも直結しません。

登録価格は成約価格でもありません。値引き交渉が入ることはありますが、常に一定割合だけ安く成約するわけでもありません。過去の上昇傾向を、そのまま対象物件の将来値上がりの保証にしないことが大切です。

近い条件の取引と、収益から照合する

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格情報や成約価格情報を検索できます。一棟物件なら「宅地(土地と建物)」などの情報から用途・構造・延床面積・建築年を確認し、区分マンション一室の価格と混同しないようにします。取引価格情報はアンケートなどに基づき加工されており、すべての取引や賃貸契約の中身が分かるわけではありません。不動産情報ライブラリ「価格情報について」

不動産会社には、比較事例のほか、現行家賃と想定家賃、運営費、将来工事をどう査定に織り込んだかを説明してもらいます。満室想定の高い利回りだけでなく、実際の入金と経費から収益力を確認できる資料があるほど、価格の根拠を示しやすくなります。

売却にかかる費用を項目別に確認する

仲介手数料は1億円なら上限336万6,000円の例

通常の売買取引で、消費税を除く物件価格が400万円を超える場合、課税事業者である仲介会社が売主から受け取れる手数料の上限は「物件価格×3%+6万円」に消費税を加えた額です。

物件価格が1億円なら、(1億円×3%+6万円)×1.1=336万6,000円となります。約370万円ではありません。これは上限であって一律の請求額ではなく、報酬額と支払時期は媒介契約で合意します。800万円以下の物件には別の特例があるため、低額の取引は条件を確認してください。国土交通省「不動産取引の仲介手数料」

売主が建物売却の消費税を納める立場にある場合は、物件代金に含まれる建物の消費税と、仲介報酬にかかる消費税も分けます。入居者から受け取る住宅家賃が非課税であることと、建物売却の課税判断は同じではありません。国税庁「事業用建物等の譲渡と消費税」

印紙税・抹消登記・返済手数料

2027年3月31日までに作成する対象の紙の不動産売買契約書では、記載金額が1,000万円超5,000万円以下なら印紙税1万円、5,000万円超1億円以下なら3万円、1億円超5億円以下なら6万円です。契約書1通ごとの税額で、領収書には別の基準があるため、契約書用の表をそのまま当てはめません。国税庁「不動産譲渡契約書等の印紙税」

電子契約の電磁的記録は印紙税の課税文書に当たりませんが、別途、課税対象となる紙の契約書等を作ればその判断が必要です。単に紙をスキャンして保存しただけで、元の紙の印紙税がなくなるわけではありません。

抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1筆・建物1個なら2,000円ですが、敷地が複数筆なら数が増えます。司法書士報酬や、必要に応じた住所変更登記等の費用は別です。「登記税1万~2万円」という一括の見積りではなく、税と報酬の内訳を確認します。法務省「抵当権抹消の申請情報作成例」

融資の一括返済手数料も金融機関・契約次第で、必ず数万円で収まるとは限りません。残債、返済申込期限、違約金の有無、担保解除書類が出る日を早めに確認します。測量や境界確認、証明書取得、必要な補修なども加え、総費用を売値の一律3.5%で済ませないようにします。

譲渡所得の税金と、手元資金は別に計算する

個人が投資物件を売る場合の基本は、売却代金から取得費と譲渡費用を引き、適用できる特別控除を反映して課税譲渡所得を求めることです。取得費は過去の購入代金そのままではなく、建物については減価償却費相当額を差し引きます。ローン残高を返した額は、取得費の代わりにはなりません。国税庁「取得費となるもの」

売却年の1月1日時点で所有期間が5年超なら、通常の長期譲渡の合計税率は20.315%、5年以下の短期譲渡は39.63%です。所得税・復興特別所得税・住民税の合計で、法人の売却にはこの区分をそのまま使いません。国税庁「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」

課税譲渡所得が1億円なら、単純計算で長期2,031万5,000円、短期3,963万円です。「売却価格1億円」にこの税率を掛けるのではありません。2021年7月取得の物件を2026年8月に売る例では、実際の経過が5年超でも2026年1月1日時点では5年以下で、短期です。

売却価格1億円の手残り例

個人・免税事業者の例として、売却代金1億円、減価償却反映後の取得費6,000万円、譲渡費用350万円、ローン返済6,000万円、長期譲渡で特別控除なしとします。

課税譲渡所得は1億円-6,000万円-350万円=3,650万円。税額の概算は3,650万円×20.315%=741万4,975円です。売却後の手元資金は、1億円-350万円-6,000万円-741万4,975円=2,908万5,025円となります。

売却価格1億円から費用・返済・税金を分ける計算例

ここでは譲渡費用と現金支出の売却費用がともに350万円と仮定しています。実務では、すべての現金支出が税務上の譲渡費用になるとは限りません。敷金承継、家賃・固定資産税等の精算、その他の所得控除や端数処理も別に確認します。税の支払前に口座へ残った額を、自由に使える利益と考えないことが重要です。

使える特例は、購入時期や買換え条件で確認

2009年・2010年に取得した国内の土地等には、一定の条件で譲渡所得から最大1,000万円を控除する制度があります。建物は対象でなく、親族等からの取得、相続・贈与による取得、他の特例との併用などにも制限があります。国税庁「特定期間に取得した土地等の特別控除」

また、長期保有する事業用資産の買換えには、譲渡益の一部の課税を繰り延べる特例があります。2026年度改正では、買換資産の範囲を一部見直し、2029年3月31日まで延長されています。原則80%繰延べでも資産所在地等で割合は異なり、所有期間、土地面積、用途、取得・事業供用時期などの要件があります。免税ではなく取得費の引継ぎ等を通じた繰延べです。国土交通省「2026年度税制改正概要」

同年中の売却・買換えでは、最初の譲渡日または取得日を含む四半期末の翌日から2か月以内など、確定申告より早い届出も関わります。売ってから検討するのではなく、次の購入契約前に税理士へ確認します。国税庁「買換え特例の届出」

売却は七つの手順で進める

1~3:資料準備、査定、媒介契約

まず、登記識別情報等、購入時契約書、評価証明書、返済予定表に加え、レントロール、賃貸借契約、入金明細、管理契約、工事・点検履歴、建築確認関係の資料を整理します。印鑑証明書など有効期間が関わる書類は、決済予定に合わせて取得します。

次に複数の会社へ査定を依頼し、価格だけでなく販売方法、買主層、近隣の成約実績を比較します。媒介契約は次の違いを理解して選びます。

  • 一般媒介:複数社へ依頼でき、自分で見つけた相手とも取引できる。法定のレインズ登録・定期報告義務はない。
  • 専任媒介:依頼は1社、自分で見つけた相手との取引は可能。レインズ登録は7日以内、報告は2週間に1回以上。
  • 専属専任媒介:依頼は1社、自分で見つけた相手との直接取引は不可。登録は5日以内、報告は1週間に1回以上。

登録期限は媒介契約締結の翌日から数え、業者の休業日を除きます。窓口をまとめる専任媒介は選択肢ですが、一棟だから必ず最適とは限りません。会社の販売力と公開範囲、報告内容で選びます。東日本レインズ「売却の流れ」西日本レインズ「よくある質問」

4~6:販売活動、売買契約、決済・引渡し

販売中も、売主は質問への回答、内見調整、入退去情報の更新を行います。入居中の室内確認は入居者の同意を得て調整し、家賃や不具合を都合よく伏せないようにします。

契約では、代金と手付金だけでなく、融資利用特約、解除期限、契約不適合責任、修繕の分担、敷金・滞納・賃貸条件の承継を確認します。手付金5~10%は取引例であって法定の一律額ではなく、契約後の解消も手付解除・合意解除・債務不履行などで扱いが違います。

決済では代金授受、融資返済、抵当権抹消と所有権移転、各種精算、鍵・管理資料の引渡しを整合させます。売値で残債等を賄えない場合は追加資金や金融機関との調整が必要です。買主の融資や書類準備もあるため、「契約から必ず1か月」と固定しないでください。

7:翌年の確定申告

譲渡益がある場合は原則として申告が必要です。特例で課税額がなくなる場合も申告が適用条件となり得ます。申告期間は原則、翌年2月16日~3月15日ですが、休日等で期限が動くため対象年の案内を確認します。購入・売却双方の契約書、経費領収書、減価償却の記録を保管し、無申告加算税や延滞税が生じる前に処理します。国税庁「確定申告」

一棟マンションを売却する7段階の手順

高く売る工夫と、三つの失敗を防ぐ計画

第一に、希望価格と最低限必要な手残り、現金化期限を分けます。教育費に使いたい金額から相場を上乗せすると、問い合わせが乏しいまま時間だけが過ぎます。販売開始時に反響の確認日を決め、競合との価格差や資料不足を点検します。

第二に、空室改善は賃料と費用をセットで考えます。過度の家賃引下げや長いフリーレントで見かけ上満室にしても、買主の収益評価は改善しないことがあります。共用部清掃、未対応修繕の処理、適切な募集条件と履歴の開示を優先します。

第三に、別の住宅建築費を「3か月後の売却代金」で全額賄うような計画は避けます。一棟物件は買主が限られ、融資審査や契約条件で長期化します。支払期限を先に確約せず、売却が遅れた場合の資金と保有費用を見積もります。

そして、急いで値引きして売れた場合でも、税金を見落とせば使えるお金は減ります。価格設定の失敗、期間の見誤り、費用・税金の失念という三つは、査定額だけでなく「いつ、いくら残るか」の表を作ることで点検できます。

まとめ

一棟マンション売却では、登録価格と成約価格、譲渡益と現金の手残りを分けることが出発点です。地域・築年数の統計を参考に、対象物件の家賃、修繕、融資条件から売れる価格を検討します。

費用と税金を項目別に試算し、必要な手残りと期限を決めてから、査定・媒介契約・販売へ進みましょう。正確な資料と引継ぎ準備は、買主の不確実性を減らし、価格交渉と売却後のトラブル防止にも役立ちます。


不動産投資マスターK
代表 金田大介
運営 オスカーキャピタル(株)
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中古アパートを買うときは、決済日に支払う金額だけでなく、購入後に届く不動産取得税の納税通知書にも備える必要があります。融資実行後の口座残高をすべて修繕や次の購入に回すと、納税資金が足りなくなりかねません。

たとえば購入価格4,000万円の物件でも、不動産取得税が必ず63万円になるわけではありません。計算の出発点は売買価格ではなく、土地と建物それぞれの評価額です。ここでは63万円となる具体例を使い、賃貸用でも使える特例と、自己居住を必要とする軽減を分けて確認します。

不動産取得税は、取得時にかかる都道府県税

不動産取得税は、土地や家屋を売買、交換、贈与、建築などで取得した人に課される税金です。毎年課される固定資産税とは別で、登記をしていない取得や無償の贈与でも対象になります。契約書に貼る印紙税や、登記の登録免許税を払っても、この税金を払ったことにはなりません。

基本式は「課税標準額×税率」です。中古物件では原則として固定資産課税台帳の登録価格を基にし、該当する特例や控除を反映して課税標準額を求めます。売買価格、相続税路線価、金融機関の担保評価とは区別してください。千葉県「不動産取得税」

購入前に売主側から、最新の固定資産税の課税明細書や評価証明書を取り寄せます。明細書には「価格・評価額」と「課税標準額」が並ぶ場合がありますが、固定資産税用に住宅用地特例などを反映した課税標準額を、取得税の計算にそのまま使ってはいけません。

また、「土地も建物も売買価格の70%」と置く方法は、概算の仮定にすぎません。土地と建物では評価の仕組みが違い、売主との価格交渉で安く買えたからといって、評価額が同じ割合で下がるわけでもありません。資料がない段階の試算と、評価額を確認した試算を分けておくと、資金計画の精度が上がります。

土地と住宅の税率・宅地の特例

2027年3月31日までに取得した土地と住宅には、税率3%が適用されます。住宅以外の家屋は4%です。土地の3%は住宅の敷地に限らず、非住宅の敷地にも適用されます。

さらに、同日までの宅地・宅地比準土地の取得では、評価額の2分の1を課税標準額とする特例があります。この特例も自己居住の住宅用地に限定されません。更地、駐車場、商業用ビルの敷地でも、評価上の区分が該当すれば対象です。

住宅だけで構成する中古アパートと、その敷地である宅地を買う場合、追加の住宅控除を使わない基本計算は次のようになります。

  • 建物:建物の評価額×3%
  • 土地:土地の評価額×2分の1×3%

店舗付きアパートでは、家屋の住宅部分と店舗部分を分ける必要があります。東京都の案内では、家屋の評価額を用途別の床面積割合で按分し、住宅部分に3%、非住宅部分に4%を掛けます。建物全体を住宅の3%で計算しないようにしましょう。東京都主税局「不動産取得税Q&A」

購入価格4,000万円・取得税63万円の計算例

土地2,000万円、建物2,000万円、合計4,000万円で中古アパートを購入する例です。資料で確認した評価額を、土地1,400万円、建物1,400万円と仮定します。取得日は上記特例の適用期間内、敷地は宅地、建物はすべて賃貸住宅で、自己居住住宅の追加控除は使わない条件です。

建物は1,400万円×3%=42万円。土地は1,400万円×2分の1×3%=21万円。合計で63万円です。

中古アパートの不動産取得税63万円の内訳

この例では、売買価格と評価額の比率がたまたま70%になっていますが、計算根拠はそれぞれ1,400万円という評価額です。別の4,000万円の物件で評価額が土地1,000万円・建物800万円なら、同条件で土地15万円、建物24万円、合計39万円になります。購入価格が同じでも、税額は一致しません。

また、63万円の計算には、すでに税率3%と宅地の2分の1特例が入っています。「投資用だから軽減は一切ない」として4%をそのまま掛けるのも、「住宅なので建物評価額をさらに半分にする」のも誤りです。

購入諸費用の一覧では、この63万円を仲介手数料や登記費用と別の行に置き、支払時期が未確定でも必要資金として確保します。金融機関が諸費用まで融資する場合も、取得税が融資対象に含まれるか、自己資金で残す必要があるかを契約前に確認します。

中古住宅の追加軽減は、自己居住の要件に注意

建物の控除

個人が自分で住むために取得した中古住宅には、一定の要件を満たすと、評価額から新築年月日に応じた額を控除する制度があります。全室を他人に貸すために購入する通常の中古アパートは、この自己居住住宅の控除の対象ではありません。

2026年4月1日以降の取得では、床面積は40㎡以上240㎡以下が要件です。それ以前の取得は50㎡以上240㎡以下であり、申告日ではなく取得日に対応する基準を使います。共同住宅では共用部分の按分を含むなど、登記上の専有面積だけで判断できない場合もあります。

耐震面では、1982年1月1日以降に新築された住宅、または一定の証明で新耐震基準への適合が確認できる住宅であることが必要です。古い建物の証明には調査時期などの条件があるため、購入してから用意すればよいとは限りません。

控除額は、1997年4月1日以降の新築なら1,200万円、1989年4月1日~1997年3月31日の新築なら1,000万円など、新築時期で異なります。これは税額から1,200万円を引く制度ではなく、評価額から引く制度です。評価額を超えて控除して還付金を生み出すものでもありません。埼玉県「住宅・住宅用土地の軽減制度」

アパートの一室に取得者が住む賃貸併用型なら、その居住区画が要件を満たすかを確認します。一室に住めば賃貸部分まで全額控除できるわけではありません。居住区画の面積・評価額・共用部分の扱いを整理し、適用範囲を税事務所に示して確認する必要があります。

その敷地の減額

要件を満たす中古住宅と土地を同じ人が取得する場合、土地の税額にも減額制度があります。同時取得のほか、土地を取得した前後1年以内に対象住宅を取得する場合などが対象です。建物だけ2026年4月以降、土地はそれ以前という取得では、土地について旧面積基準が関係することにも注意します。

減額額は、4万5,000円と「土地1㎡当たりの価格×住宅床面積の2倍(上限200㎡)×3%」を比べた大きい方です。宅地等の価格は2分の1特例反映後で計算し、納める税額はゼロが下限です。

この土地の減額と、賃貸用でも対象になり得る宅地の2分の1特例は別制度です。全部賃貸の中古アパートで自己居住要件を満たさないのに、住宅が建っているという理由だけで、この追加減額まで織り込まないでください。大阪府「不動産取得税」

不動産取得税の課税・軽減・非課税を確認する流れ

不動産取得税がかからないケース

相続・遺贈と贈与を区別する

相続による取得は非課税です。包括遺贈や、被相続人から相続人への特定遺贈も含まれます。包括遺贈は財産の全部・一定割合を指定するもの、特定遺贈は特定の財産を指定するものです。

「特定遺贈なら必ず課税」ではなく、受け取る人が相続人かどうかが重要です。相続人以外への特定遺贈は課税対象になります。一方、生前贈与や、死亡によって効力が生じる死因贈与契約による取得は、相続と同じ非課税扱いにはなりません。愛媛県「不動産取得税のよくある質問」石川県「不動産取得税」

取得税が非課税でも、相続税や登記費用までなくなるわけではありません。逆に贈与税がかからない仕組みを使っても、取得税の課税判断は別に行います。

少額の取得には免税点がある

2026年4月1日以降の取得では、課税標準となるべき額が土地16万円未満、売買・贈与等による家屋は1戸につき34万円未満なら課税されません。新築・増築・改築による家屋は1戸につき66万円未満です。従来の10万円・12万円・23万円という基準と取り違えないようにします。

判定するのは売買価格でも税額でもありません。また、1年以内に隣接する土地を取得した場合や、一体として使う母屋・附属家屋を取得した場合には、前後の取得をまとめて判定することがあります。名目上の金額や契約を分けるだけで、免税点を適用できるわけではありません。大阪府「免税点」

申告・納付・申請漏れへの対応

申告期限は所在地の自治体で確認します。たとえば東京都は取得から30日以内の申告を求め、同期間内に登記を申請した場合は原則申告不要としています。一方、千葉県では取得から60日以内で、登記による申告省略の期間も60日です。取得申告を省略できても、必要な軽減申告まで省略できるとは限りません。

軽減を申し出る際には、申告書、登記事項証明書、住民票、売買契約書、代金の領収書、各階平面図などから、該当する書類をそろえます。耐震要件の確認が必要な住宅では、耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書など、認められる書類と期限を確認します。すべての取引に同じ書類一式が必須とは限らないため、対象制度を伝えて案内を受けます。

納税通知書の到着時期は評価・課税事務で異なります。決済後すぐ届かなくても非課税と判断せず、通知書に記載された納期限までに納めます。銀行、コンビニ、スマートフォン決済、カード等は自治体や納付書により利用条件が異なり、カードには手数料もあります。税額による上限を確認し、ポイントだけで選ばないことが大切です。

軽減の申告を忘れて納付しても、要件を満たし期間内に手続きすれば減額・還付を受けられる場合があります。ただし、いつでも無条件に戻るわけではありません。新潟県の案内では、取得日や減額要件を満たした日の翌日から数える5年の制限を示しています。通知書、契約書、居住や面積を確認できる資料をそろえ、気づいた時点で所在地の税事務所へ相談します。新潟県「不動産取得税Q&A」

まとめ

中古アパートの取得税は、土地と建物の評価額を確認し、税率・宅地の特例・追加軽減を順に当てはめて計算します。4,000万円の購入で63万円となる例も、評価額と用途などの前提があってこその数字です。

賃貸用に適用できる特例と自己居住住宅の控除を分け、取得日に合う面積要件・免税点を使いましょう。契約前の評価額確認と納税資金の確保、取得後の申告要否確認までを購入手続きに組み込むことで、税額と支払時期の見落としを防げます。


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代表 金田大介
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中古アパートの広告で「利回り8%」と見ても、購入額の8%が毎年そのまま手元に残るわけではありません。満室想定の家賃、現在の入金、運営費を引いた収益では、それぞれ数字が変わります。

中古は購入価格を抑えやすい一方、修繕や退去後の募集費用が収益を左右します。市場の平均を出発点にしながら、築年数、地域、実際の収支、投資回収の順に確認しましょう。

全国平均は約8%、ただし登録物件の表面利回り

不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の2026年7月期調査では、一棟アパートの全国平均表面利回りは7.91%、平均価格は9,033万円でした。同月の区分マンションは6.68%・2,766万円、一棟マンションは7.41%・2億618万円です。健美家の2026年7月期公表資料

この調査は、健美家へ登録された物件を集計したものです。成約価格や、実際に運営した結果の手取り利回りではありません。また、新築と中古を一律に分けた「中古だけの平均」でもないため、候補物件の条件とそろえて読む必要があります。

同調査の一棟アパートは2026年3月に8.01%・9,092万円でした。短期間でも値は動くため、8%を固定的な合格ラインにはできません。掲載物件の地域や築年数の構成が変わる影響も含まれます。

平均価格と平均利回りを掛ければ、平均物件の年間家賃が分かるとも限りません。価格と利回りは別々に集計された値です。候補物件の収入は、各戸の契約家賃と入金資料から積み上げてください。

築年数別に比べると、価格と家賃の関係が見える

健美家の2025年年間レポートでは、全国の一棟アパートの表面利回りは、資料表記の「築10年未満」で6.22%、「築10年~」で7.15%、「築20年~」で9.41%でした。平均価格は順に1億2,473万円、9,746万円、5,735万円です。健美家の2025年年間レポート

築年数が進むほど利回りが高いのは、家賃に対して価格が大きく下がる場合があるためです。ただし、同じ建物を20年間追跡した結果ではありません。異なる物件群の比較なので、「買えばこの割合で値下がりする」とは読めません。

築浅では当面の設備交換が少なくても、購入価格が高い分だけ家賃下落の影響を受けます。築10〜20年では、外壁・屋根・防水や給湯器などの更新履歴が重要になります。築20年以上では、給排水管、雨漏り、シロアリ、建物の傾きまで含め、未実施の工事を洗い出します。

同じ築25年でも、屋根と配管を更新済みの物件と、修繕を先送りしてきた物件では必要資金が違います。築年数の目安を、建物状態の確認の代わりにしないことが大切です。

地域別の利回りは、広いエリアの平均

2026年7月期の一棟アパートは、首都圏7.00%・1億34万円、関西8.42%・8,669万円、九州・沖縄10.31%・5,768万円でした。ほかの地域は北海道12.60%、東北12.72%、信州・北陸12.85%、東海9.29%、中国・四国12.10%です。健美家の地域別集計

この調査の首都圏は、東京・神奈川・埼玉・千葉だけでなく、茨城・栃木・群馬・山梨も含みます。都心の駅近物件を、この広いエリアの平均とそのまま比較すると、判断がずれます。

首都圏では価格の高さと、沿線ごとの需要を確認します。関西は大阪・京都・神戸の中心部と郊外で条件が異なり、同じ府県でも駅や大学への距離で募集状況が変わります。九州・沖縄でも、福岡市の中心部と地方の小規模都市をひとまとめにはできません。

各地域で共通して見るのは、実際に競合する物件です。単身向けなら通勤・通学、ファミリー向けなら学校や駐車場など、入居者が選ぶ理由を調べます。近隣の募集家賃だけでなく、募集開始からどれくらい残っているかも確認すると、空室期間の想定に役立ちます。

地方の高利回りは長期空室を補うために必要な場合があります。逆に、人口の多い都市でも同じ間取りの供給が増えれば競争は厳しくなります。「地方は危険」「都心は安全」という地域名だけの判断はできません。

2026年7月期の一棟アパート表面利回りと価格の地域比較

中古の利回りが新築より高くなりやすい三つの理由

一つ目は取得価格です。新築には建築費や販売経費などが反映され、中古では建物の経年によって価格を抑えられる場合があります。木造かRC・SRC造かといった構造も建築コストに関わりますが、構造だけで売買価格は決まりません。土地、規模、仕様、立地をそろえて比べます。

建築着工統計の「工事費予定額」は、実際の中古取引価格や完成後の確定工事費ではありません。1㎡当たりの統計値を使う場合も、住宅の建て方・構造・利用関係を確認し、対象物件の見積額とは区別してください。e-Stat・2025年住宅着工統計第34表

二つ目は修繕負担です。屋根や外壁、設備の交換が近い物件は、買主がその費用を見込むため、価格が抑えられることがあります。購入時点の利回りが高くても、直後に大きな工事が必要なら、その分の資金を別に準備しなければなりません。

三つ目は空室や家賃下落です。駅から遠い、間取りが需要に合わない、近隣に新しい競合が多いといった条件が、価格に反映されます。現在の入居者が長く住んでいても、退去後に同じ家賃で決まるとは限りません。新規募集の家賃まで下げて計算し直すことが有効です。

三つの利回りを、同じ物件で計算する

以下では、購入価格1億円、満室想定の年間家賃850万円、購入諸費用700万円、年間運営費170万円という仮定を使います。諸費用7%、運営費20%はこの計算例の条件で、どの物件にも当てはまる固定比率ではありません。

表面利回り:広告の入口の数字

満室想定の年間家賃を価格で割る場合、850万円÷1億円×100=8.5%です。物件を大まかに絞るには便利ですが、空室や運営費を反映していません。

広告の利回りには、満室想定か現況かが示されているかを確認します。名称だけで決めつけず、分子に何の収入を使ったかを見ることが大切です。

現行利回り:現在の稼働を反映する数字

現在の入居状況に基づく年間家賃が765万円なら、765万円÷1億円×100=7.65%です。満室想定との差は85万円あります。

現行利回りも運営費を引く前の値です。また、契約家賃を年換算した額と実入金は一致しない場合があります。滞納やフリーレント、退去予定があれば、入金ベースの収支を別に作ります。戸数の入居率と賃料ベースの稼働率も、各戸の家賃が違えば一致しません。

実質利回り:費用と取得総額を反映する数字

この記事では、年間収入から運営費を引き、購入諸費用を含む取得総額で割ったものを実質利回りとします。借入利息・元本返済、減価償却、所得税等は、この段階では差し引きません。資料によって定義が違うため、比較時には式をそろえます。

満室時は、(850万円−170万円)÷1億700万円×100=約6.36%。現況家賃765万円で運営費を同額とすると、(765万円−170万円)÷1億700万円×100=約5.56%です。

同じ物件でも利回りの定義で数字が変わる

表面8.5%、現行7.65%、現況の実質5.56%は、別の物件の数字ではありません。同じ物件を異なる条件で見ています。ここから借入返済や大規模工事の支出を考えるため、実質利回りも最終的な手取りそのものではありません。

最低ラインは「何%なら安心」ではなく逆算する

表面6〜10%、実質5〜7%といった数値は、候補を探す際の仮の目標にはなります。しかし、表面5%・実質3%を全国共通の最低ラインとしたり、実質5%なら安定すると決めたりする根拠にはなりません。借入額や返済期間が違えば、必要な収入も違います。

例えば、年間運営費170万円、元利合計返済360万円、将来工事のために残す資金60万円に加え、所得税等を払う前に150万円を残したいとします。必要な年間入金は170+360+60+150=740万円です。

家賃の回収・稼働を満室想定の85%と置くなら、満室時に必要な家賃は740万円÷85%=約871万円。価格1億円なら必要な表面利回りは約8.71%となります。満室家賃850万円では、同じ85%条件の残額は132.5万円で、目標150万円に届きません。

これは一例ですが、目標利回りを運営条件から作る考え方が分かります。税引後150万円が必要なら、税額も加えて再計算します。空室が増えると広告費や原状回復費が増える可能性もあり、運営費を固定した試算だけで終わらせないようにしましょう。

投資回収期間は、物件全体と自己資金を分ける

回収期間は「投じた資金÷年間の回収額」で考えます。ただし、借入前の物件全体の収益と、返済後の自己資金の回収は別の指標です。

先ほどの現況収支では、運営費控除後は765−170=595万円です。取得総額1億700万円を595万円で割ると約18年ですが、借入返済・大規模工事・所得税等を考慮する前の単純回収年数にすぎません。

一方、自己資金2,700万円と借入8,000万円で取得し、年間返済を360万円、将来工事用資金を60万円と仮定すると、残額は595−360−60=175万円です。自己資金の単純回収は2,700÷175=約15.4年で、これも所得税等を払う前の計算です。

「5〜10年なら理想」と一律に決めるより、予定する保有期間の中で、累計収支と売却手取りを確認してください。元本返済は現金を減らしますが残債も減らすため、返済額をすべて損失とみなすのも不正確です。売却時には価格から残債、売却費用、税金を引きます。

大規模工事の支出時期、募集家賃の変化、空室期間を年別に置くと、何年目に資金が不足し得るかが分かります。回収年数が短く見えても、途中の工事代金を支払えなければ運営は続けられません。

まとめ

中古アパートの利回りは、築年数と地域だけでなく、何を収入・費用として数えたかで変わります。全国平均は比較の入口とし、候補物件では満室想定、現況、費用控除後を同じ条件で計算しましょう。

購入判断では、必要な返済と修繕資金から利回りの最低ラインを逆算し、自己資金の回収と売却手取りまで確認します。高い数字を探すだけでなく、その数字で実際に運営を続けられるかを確かめることが重要です。


不動産投資マスターK
代表 金田大介
運営 オスカーキャピタル(株)
公式サイト:https://oscar-c.jp

収益物件を比べるとき、販売図面に載っている表面利回りだけを見ると判断を誤ることがあります。広告の表面利回りは満室想定の家賃収入を物件価格で割って示すことが多く、空室、管理費、修繕費、税金などを十分に反映していないためです。

そこで確認したいのがキャップレートです。キャップレートは、物件が生み出す純収益と価格の関係を見る指標で、収益物件の価格が妥当かどうかを考えるときに役立ちます。

この記事では、キャップレートの意味、NOIの計算方法、価格の逆算、地域差、調べ方、実務での注意点を整理します。

キャップレートとは

キャップレートは還元利回りとも呼ばれます。簡単に言えば、物件価格に対してどれくらいの純収益が得られるかを見る指標です。

同じ1億円の物件でも、年間の純収益が800万円ある物件と500万円の物件では、投資対象としての見方は変わります。価格だけを見ても、その物件が割安なのか割高なのかは判断できません。収益に対して価格が見合っているかを確認するために、キャップレートを使います。

キャップレートは、借入条件や所得税率のような投資家ごとの事情をいったん外し、物件そのものの収益力を見ます。そのため、複数の物件を同じ基準で比較しやすくなります。

ただし、キャップレートは単独で結論を出す指標ではありません。立地、築年数、構造、入居状況、修繕履歴、将来の売却しやすさと合わせて読む必要があります。

NOIを正しく出す

キャップレートを計算する前に、NOIを確認します。NOIは「Net Operating Income」の略で、日本語では純収益と呼ばれます。年間収入から年間運営費を差し引いた、物件運営そのものから得られる収益です。

NOI = 年間収入 - 年間運営費

年間収入には、家賃収入、共益費、駐車場収入、更新料などを含めます。ただし、満室想定だけでなく、現在の稼働率や空室見込みも考慮します。空室が多い物件で満室賃料だけを使うと、実態よりよい数字になります。

年間運営費には、管理委託料、共用部の水道光熱費、日常修繕費、固定資産税、都市計画税、火災保険料、広告料、原状回復費などを入れます。借入利息、ローン返済元本、減価償却費、所得税は通常NOIには含めません。これらを混ぜると、物件同士の比較ができなくなります。

たとえば、年間収入が900万円、年間運営費が250万円なら、NOIは650万円です。この650万円を使ってキャップレートを計算します。

ここでは基本を理解するため、NOIを基準に計算します。ただし鑑定評価や市場資料では、資本的支出などを調整したNCF(純キャッシュフロー)を使う場合もあります。例えばNOI650万円から資本的支出50万円を差し引き、ほかの調整がなければNCFは600万円です。同じ1億円に対する利回りでも、前者は6.5%、後者は6.0%になります。

大規模な設備更新を日常修繕費と同じように扱ったり、NOI基準の数値をNCF基準の市場利回りと直接比べたりしないようにします。比較資料の「純収益」に何が含まれるかを確認することが、計算式を覚えるより先です。

キャップレートの計算式

キャップレートは、NOIを物件価格で割って求めます。

キャップレート(%)= NOI ÷ 物件価格 × 100

年間NOIが650万円、物件価格が1億円なら、キャップレートは6.5%です。同じ価格ならNOIが大きい物件ほどキャップレートは高くなり、同じNOIなら価格が低い物件ほどキャップレートは高くなります。

キャップレートを使うと、価格帯が違う物件でも収益性を同じ尺度で比較できます。5,000万円の物件と1億円の物件では金額の大きさが違いますが、NOIと価格の関係に直すことで、収益に対して価格が高いか低いかを見やすくなります。

価格を逆算する

キャップレートは、物件価格の目安を逆算するときにも使えます。

不動産価格 = NOI ÷ 想定キャップレート

NOIが650万円で、想定キャップレートを6.5%と見るなら、価格の目安は1億円です。想定キャップレートを7.5%と見るなら、価格の目安は約8,667万円になります。

このように、想定するキャップレートが少し変わるだけで、評価額は大きく動きます。だからこそ、想定レートを何となく決めるのではなく、周辺相場、築年数、構造、空室率、修繕リスクを踏まえて置く必要があります。

売主の希望価格を検証するときにも有効です。たとえば売出価格が1億1,000万円で、現実的なNOIが650万円なら、キャップレートは約5.9%です。周辺の類似物件で6.5%程度が妥当なら、価格が強めに設定されている可能性があります。

NOI650万円の想定キャップレート別価格

この逆算は、同程度の収益が続くとみなす直接還元の考え方です。6.5%を代入するときは、計算上は0.065として扱います。売出価格から計算した利回りを、そのまま逆算式へ戻しても、元の売出価格が出るだけです。価格を検証するには、類似物件などから独立して妥当なレートを考える必要があります。

さらにNOIが650万円から585万円へ10%低下し、想定レートも6.5%から7.5%へ上がると、価格目安は7,800万円になります。当初の1億円より22%低い水準です。これは予測ではなく、収益の減少と市場の要求利回りの上昇が重なる影響を示す例です。

NOIからキャップレートを使って価格を判断する流れ

高ければよいとは限らない

キャップレートが高い物件は、収益性が高く見えます。しかし、高い数字には理由があります。空室が多い、家賃下落が進みやすい、築年数が古い、大規模修繕が近い、災害リスクがある、売却時の買い手が限られるといった事情が価格に反映されている場合があります。

逆に、駅近や人気エリア、築浅物件では価格が高くなりやすいため、キャップレートは低く見えます。ただし、空室リスクが低く、賃貸需要が安定し、将来売却しやすい物件であれば、低いキャップレートにも合理性があります。

つまり、見るべきなのは「高いか低いか」だけではありません。そのキャップレートになっている理由です。数値の背景を確認しないまま、高利回りというだけで購入すると、購入後の修繕や空室で収支が崩れることがあります。

地域差を考える

キャップレートの水準は地域によって異なります。都心部や人気エリアは物件価格が高く、キャップレートは低くなりやすい傾向があります。一方で、郊外や地方の物件は価格が抑えられるため、キャップレートが高く出やすいことがあります。

ただし、地域別の平均値をそのまま使うのは危険です。同じ市区町村でも、駅距離、周辺施設、競合物件、人口動態、災害リスクによって賃貸需要は変わります。築浅か築古か、木造かRC造か、入居者層が単身かファミリーかでも、投資家が求める利回りは変わります。

平均値はあくまで基準線です。検討物件が平均より低い場合は、低くても買える理由があるかを確認します。平均より高い場合は、高い利回りを求められるだけのリスクが隠れていないかを確認します。

地域別の数字は、対象と件数まで読む

二十一鑑定の2025年4月〜2026年3月発行の評価書に基づく集計では、共同住宅の全築年平均は全国4.9%・126件、都心5区3.8%・16件、都心周辺区4.9%・15件、神奈川東京周辺市5.0%・7件、埼玉東京周辺市6.2%・5件です。店舗・事務所との併用物件も含みます。二十一鑑定の評価先例集計

これは同社の評価事例の平均で、全国の売買を網羅した平均ではありません。主としてNCFに対するレートで、一部にNOI基準を含むという注記もあります。地域によって件数や築年数の構成が違うため、数値の差を立地だけの影響と考えないようにします。

実務での調べ方

日本不動産研究所の調査

日本不動産研究所は、年2回「不動産投資家調査」を公表しています。主要都市・用途別に投資家が求める期待利回りを把握できます。2026年4月調査では、東京・城南の賃貸住宅一棟はワンルームタイプ3.6%、ファミリータイプ3.7%でした。第54回調査の公表資料

これらは、一定の想定物件に対する回答であり、対象エリアの全取引価格から計算した平均ではありません。キャップレートという言葉は市場が求める還元利回りにも使われるため、「期待利回りはキャップレートと無関係」と切り離すのではなく、期待値・鑑定評価での採用値・実際の取引価格からの計算値を区別するのが実用的です。

CaprateMapで周辺事例を探す

ICHIのCaprateMapは、REITの公表情報や地価公示などを地図上で確認するサービスです。取引キャップレートはNCFを取得・譲渡価格で割る方式と説明されています。鑑定キャップレートや想定建物の数値を、実際の成約利回りと取り違えないようにします。CaprateMapの利用方法・計算定義

機能によって一般ユーザーと特別ユーザーの区分があるため、登録すれば全情報を無条件に使えるとは考えず、利用条件を確認します。事例の用途、築年数、価格時点を合わせ、候補を絞ってから元の公表資料へ戻ると、数字の意味を確認しやすくなります。

個別資料でNOIを確かめる

ほかにも、周辺の売買事例、賃貸募集データ、レントロール、固定資産税資料、修繕履歴、管理会社の月次報告を確認します。販売図面の満室想定だけでなく、現在の入居率でNOIを出し、空室が増えた場合のNOIも試算します。

購入後に家賃を上げられる余地があるなら、改善後NOIを見ることもできます。ただし、改善前の数字で返済が回るかを先に確認します。満室化や賃料上昇を前提にしないと成立しない物件は、計画が少し崩れただけで資金繰りが悪化します。

購入判断では、価格と資金繰りを分ける

NOIが十分に見えても、借入返済と将来工事のために残す現金を引くと余裕が小さい場合があります。キャップレートは物件価格を考える指標であり、投資家の手取り利回りや返済能力そのものではありません。

取得諸費用込みの投資収益率を計算する場合も、物件価格だけを分母にする比較と区別します。どちらも必要ですが、分母を変えた値を同じ名称で並べると、割高・割安の判断がずれます。

また、近い将来に空室の集中や大きな工事が見込まれる物件は、安定した1年の数字だけでは捉え切れません。年ごとの収支と売却額を評価するDCF法なども検討し、一つのレートにすべてのリスクを押し込めないことが大切です。

まとめ

キャップレートは、NOIと物件価格を結びつける便利な指標です。物件価格が収益に見合っているか、周辺相場と比べて妥当かを考えるときに役立ちます。

一方で、キャップレートは万能ではありません。高い数値にはリスクが隠れている場合があり、低い数値には安定性や資産性が反映されている場合があります。NOIの計算を丁寧に行い、立地、築年数、修繕、空室、融資、出口戦略まで含めて判断しましょう。

数字だけで判断せず、なぜその利回りになっているのかを説明できる状態にしておくことが、購入後の失敗を避ける第一歩です。


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木造アパートを購入すると、「何年で減価償却するのか」「中古物件は新築と同じ計算でよいのか」と迷いやすいものです。減価償却費は税務上の利益だけでなく、保有中のキャッシュフローや売却時期の判断にも関わります。

この記事では、木造アパートの法定耐用年数、新築・中古の計算方法、3つの試算例、実務上の注意点を順番に整理します。なお、税務上の取扱いは取得時期や契約内容、個人・法人の違いなどで変わるため、実際の申告では税理士や所轄税務署へ確認してください。

木造アパートの法定耐用年数は22年

木造または合成樹脂造の住宅用建物は、税法上の法定耐用年数が22年です。これは減価償却費を計算するための期間であり、建物が物理的に使用できる期間を示すものではありません。適切に点検・修繕された建物が22年を超えて利用されることもあります。

減価償却の対象になるのは、原則として建物や建物附属設備などです。土地は時間の経過によって価値が減る資産として扱われないため、減価償却できません。売買価格が土地と建物の合計で示されている場合は、契約書、固定資産税評価額、不動産鑑定など合理的な根拠を用いて区分する必要があります。

木造アパートの減価償却で最初に確認する区分

新築木造アパートの計算方法

ここでは、個人が現在取得して賃貸に使う物件を想定します。建物は1998年4月1日以後、建物附属設備は2016年4月1日以後の取得について、原則として定額法で計算します。古くから保有する資産は取得時期に応じた確認が必要です。基本式は次のとおりです。

年間の減価償却費 = 建物等の取得価額 × 定額法の償却率

耐用年数22年の定額法償却率は0.046です。ただし、年の途中で賃貸を始めた場合は、事業に使用した月数に応じた月割計算が必要です。現在取得する資産の定額法では、償却が終わる際は未償却残高が1円残るよう調整します。償却率を22回そのまま掛ければよい、という計算ではありません。国税庁「定額法と定率法による減価償却」

たとえば、土地を除いた建物の取得価額が3,000万円で、年初から12か月使用した場合の概算は次のとおりです。

3,000万円 × 0.046 = 年間138万円

例えば7月から12月までの6か月間使う場合は、138万円×6÷12=69万円です。購入代金を払った日だけでなく、賃貸の用に供した時期を資料で確認します。

「物件の購入総額」へ0.046を掛けるのではなく、減価償却の対象となる建物等の取得価額を使う点が重要です。

中古木造アパートの耐用年数

中古資産は、取得後の使用可能期間を合理的に見積もれる場合、その見積年数を使用できます。見積りが難しいときは、税法上の簡便法を用いることがあります。

築22年未満の場合

法定耐用年数の一部を経過した木造住宅では、次の式を用います。

耐用年数 =(22年 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%

築10年なら、(22−10)+10×20%=14年です。1年未満の端数は切り捨て、計算結果が2年未満になる場合は2年とします。

築22年以上の場合

法定耐用年数をすべて経過している場合は、法定耐用年数の20%で計算します。

22年 × 20% = 4.4年 → 4年

したがって、簡便法による耐用年数は4年、定額法償却率は0.250となります。

大きな改良工事をしてから貸す場合

事業に使うための資本的支出が、購入した中古資産の取得価額の50%を超える場合は、簡便法で耐用年数を算定できません。例えば中古建物の取得価額が1,000万円で、使用開始に必要な資本的支出が600万円なら、築年数だけで「4年」と決めることはできません。

一方、同等の新品を取得する場合の金額である「再取得価額」の50%を超える資本的支出では、法定耐用年数を使う取扱いになります。取得価額と再取得価額は違う数字です。工事がすべて資本的支出になるとも限らないため、工事の内訳と建物価格をそろえて判定します。国税庁「中古資産の耐用年数」

新築・中古3パターンの試算

比較しやすいよう、土地を除く建物の取得価額をすべて3,000万円、年初から12か月使用したものとして概算します。

新築・中古木造アパートの減価償却費比較

新築の場合

耐用年数22年、償却率0.046を使用します。

3,000万円 × 0.046 = 年間138万円

築10年の場合

簡便法による耐用年数は14年、定額法償却率は0.072です。

3,000万円 × 0.072 = 年間216万円

築30年の場合

築30年なら法定耐用年数22年をすべて経過しています。簡便法を使える条件では耐用年数は4年、定額法償却率は0.250です。

3,000万円 × 0.250 = 年間750万円

取得価額が異なる例も確認しましょう。新築の建物が6,000万円なら年276万円、築10年で4,000万円なら年288万円、築30年で2,000万円なら年500万円です。いずれも土地を含まない建物取得価額、12か月使用、簡便法の適用条件を満たす場合の比較です。物件総額を建物価格と取り違えると、計算全体が過大になります。

償却期間が短いほど、初期の減価償却費は大きくなります。ただし、支出した購入代金そのものが減るわけではなく、経費計上の時期が前倒しになる側面があります。短期間で償却が終われば、その後は減価償却費が減って課税所得が増える可能性もあります。

減価償却で間違えやすいポイント

土地と建物を合理的に区分する

土地は減価償却できないため、建物価格を根拠なく高く設定すると、税務上問題になる可能性があります。契約書に区分がない場合も、固定資産税評価額など客観的な資料を使い、合理的な方法を継続して適用することが大切です。

建物と設備を適切に分類する

給排水、電気、空調などの建物附属設備は、建物本体と異なる耐用年数になる場合があります。工事見積書や請求書を保存し、資産ごとの取得価額を説明できる状態にしておきましょう。単に初年度の経費を増やす目的で区分するのではなく、実態に沿った処理が必要です。

修繕費と資本的支出を区別する

通常の維持管理や原状回復に当たる支出は修繕費となる場合があります。一方、使用可能期間を延ばしたり、価値を高めたりする支出は資本的支出として減価償却が必要になることがあります。金額だけで機械的に決めず、工事内容と国税庁の判定基準を確認します。

税額だけでなく現金収支を見る

減価償却費は現金の支出を伴わない経費ですが、ローンの元本返済は原則として必要経費になりません。そのため、帳簿上は赤字でも現金が増えるとは限らず、反対に減価償却終了後は税負担が増えて手残りが減ることもあります。

減価償却を検討するときの5つの確認事項

青色申告や少額設備も別に確認する

原価を期間配分する減価償却と、青色申告特別控除は別の制度です。2026年分の個人の不動産貸付けで55万円の控除を受けるには、事業的規模、複式簿記、期限内申告などの要件があります。65万円には、これに加えてe-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存が必要です。青色申告なら全員65万円というわけではありません。国税庁「青色申告特別控除」

エアコン等の少額資産は、通常の減価償却、一括償却、一定の特例のどれに該当するかを別途判断します。2026年度改正後の中小企業者等の特例では、取得価額40万円未満、年間合計300万円までという基準があります。ただし、青色申告等の対象者要件や、貸付用資産の制限も確認が必要です。中小企業庁「少額減価償却資産の特例」

2027年分からは、要件に合う記帳と期限内e-Tax申告で65万円、さらに優良な電子帳簿または所定のデジタルシームレス保存と届出等を満たすと75万円となります。書面申告の上限は10万円へ変わり、簡易記帳では前々年の事業収入1,000万円超による制限もありますが、事業的規模でない不動産所得はその制限から除かれます。償却方法と申告方法を別々に選んで準備してください。国税庁・2027年分からの変更

例えば設備1台35万円でも、購入日・使用開始日、対象者、用途によって結論が変わります。2026年3月以前の取得分と改正後を混同しないでください。また、建物価格を便宜的に細分化して少額資産に変えることはできません。

償却が終わると手元資金はどう変わるか

仮に家賃等の年間収入が600万円、減価償却以外の必要経費が250万円、減価償却費が300万円なら、控除前の不動産所得は50万円です。経費250万円の中に支払利息を含み、別途ローン元本を年間200万円返すとすると、税引前の現金収支は600万円-250万円-200万円=150万円です。

減価償却費300万円は、この現金収支からさらに差し引きません。逆に、元本返済200万円は所得計算の経費にはしません。二つの計算を分けることが、資金計画の出発点です。

他の条件が同じまま減価償却が終了すれば、所得は50万円から350万円へ増えますが、税引前の現金は150万円のままです。税額は他の所得や控除によって変わるため一律には計算できませんが、納税資金が増える可能性を見込む必要があります。

節税だけで物件を選ばない

中古木造アパートは短い期間で大きな減価償却費を計上できる場合があります。しかし、修繕費、空室、金利、出口価格まで含めて収益性が低ければ、税負担が軽くなっても投資全体で利益が残るとは限りません。

購入前には、少なくとも次の2つのシナリオを確認します。

  • 減価償却期間中の税引後キャッシュフロー
  • 減価償却終了後の税引後キャッシュフロー

さらに、大規模修繕、空室率上昇、金利上昇、売却価格下落を加えた試算も行います。償却が終わる年に借入も終わるとは限らず、古い建物では屋根や配管の工事時期が重なることもあります。

売却時は、建物の取得費から減価償却費相当額を控除して譲渡所得を計算するため、購入額と同額で売れても税務上の利益が生じる場合があります。保有中の税負担だけでなく、売却代金から借入残高・売却費用・税金を払って残る金額で評価しましょう。

融資についても、法定耐用年数を超えれば一律に不可になるわけではありません。金融機関によって建物評価や融資期間の考え方が異なり、土地の評価、物件収支、借り手の資産状況も関わります。買い手が利用できる融資の範囲が狭まれば売却条件に影響するため、売却直前ではなく保有中から複数の選択肢を確認しましょう。

まとめ

木造住宅用建物の法定耐用年数は22年です。中古物件では、使用可能期間の見積りまたは簡便法により、築年数に応じた耐用年数を求めます。築22年以上なら簡便法で4年となるのが一般的ですが、資本的支出の状況などによって適用できない場合があります。

計算では土地を除外し、建物・設備の取得価額を合理的に区分することが重要です。減価償却費の大きさだけで判断せず、償却終了後の税負担、ローン返済、修繕、空室、売却まで含めて計画しましょう。


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金融資産に余裕があるのに、なぜ借入をしてまで不動産を持つのでしょうか。理由は家賃収入だけではありません。資金の使い方、所得税、相続、資産全体の配分を組み合わせて考えられることが、不動産の特徴です。

ただし、資産が多い人なら必ず有利になるわけではありません。物件から生まれる収入が弱ければ、本業の利益や預金で損失を埋める結果になります。ここでは、選ばれる7つの理由と、それぞれが成り立つ条件、物件の種類、購入前の確認点を整理します。

1.借入で運用規模を広げられる

自己資金だけで買う場合に比べ、融資を利用すれば大きな物件を検討できます。これがレバレッジです。ただし、拡大するのは利益だけでなく損失の影響も同じです。

自己資金2,000万円、表面利回り8%の仮定で考えます。現金で2,000万円の物件を買うと、満室想定の年間家賃は160万円です。一方、6,000万円を借りて8,000万円の物件を買えば、年間家賃は640万円になります。

借入残高6,000万円が年間を通じて変わらず、金利2%と単純化すると、利息は120万円です。640万円から利息だけを引いた520万円は、手取り利益ではありません。空室、管理費、税金、修繕費、元本返済がまだ差し引かれていないためです。

より現実に近づけるため、借入ありの物件について、家賃の未収・空室による減収を64万円、運営費を160万円、元利合計の年間返済額を300万円と仮定します。

年間の返済後資金=640万円-64万円-160万円-300万円=116万円

ここから将来修繕用に60万円を確保すれば、残るのは56万円です。所得税等は別途見込む必要があります。「利息を払っても520万円残る」という説明だけでは、購入判断に必要な費用が抜けてしまいます。

借入を利用した場合の家賃から手元資金まで

2.資産背景を融資の相談に生かせる

金融機関は、物件の担保価値や家賃収入に加え、借りる人の収入、金融資産、既存借入、返済履歴なども審査します。手元資金が厚ければ、空室や修繕に対応できる点を説明しやすくなります。

とはいえ、「年収の何倍まで必ず借りられる」という共通基準はありません。本業が好調でも、物件の収支が合わない、借入が集中している、担保評価が不足するといった事情で条件は変わります。

融資額だけでなく、期間、固定・変動の別、繰上返済の条件、追加担保の範囲まで比較しましょう。借りられる上限と、家賃で無理なく返せる金額は別です。本業の収入が減る年にも維持できる計画でなければ、資産背景の強さが過大な借入につながります。

3.減価償却を通じて所得の計算が変わる

建物の取得費は、原則として買った年に全額を経費にするのではなく、減価償却により複数年へ配分します。土地は減価償却できません。減価償却費は、その年の現金支出を伴わない経費です。国税庁「減価償却のあらまし」

その結果、不動産所得が赤字になり、給与所得などと損益通算できる場合には税負担が下がることがあります。ただし、赤字のうち土地取得のための借入利子に相当する部分など、通算できないものがあります。国外中古建物の減価償却にも特別な制限があります。国税庁「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

税金が減っても、それ以上に空室損失や工事代が出れば資産は減ります。償却が終わった後の税負担や売却時の取得費への影響も含め、保有期間全体で比較する必要があります。

4.管理を委託して継続収入を持てる

入居者募集、家賃の集金、清掃、問い合わせ対応などは、管理会社へ委託できます。本業を続けながら賃貸事業を持てる点は、時間に制約のある人にとって利点です。

ただし、委託しても所有者の仕事がなくなるわけではありません。家賃を変更するか、設備を交換するか、滞納にどう対応するか、売却するかといった判断は残ります。管理料に含まれる業務、別料金の作業、緊急時の決裁額を契約前に確認しましょう。

毎月の送金額だけを見るのではなく、未収金、空室期間、募集条件、工事の進捗まで報告を受ける仕組みが必要です。管理を任せることと、経営の確認をやめることは異なります。

5.相続時の資産構成を調整できる

相続では、不動産の評価方法が現金と異なります。土地は路線価方式や倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額を基に評価し、貸付けの状況による調整が生じることがあります。購入額から一律に何割下がると決めつけることはできません。国税庁「土地家屋の評価」

また、相続税の最高税率が55%でも、現金で残した財産のすべてに55%がかかるわけではありません。基礎控除、法定相続分による計算、速算表の控除額などを経て税額を求めます。「現金なら半分以上を失う」という説明は不正確です。国税庁「相続税の税率」

2026年度税制改正大綱は、相続等の前5年以内に有償取得・新築した一定の貸付用不動産について、通常の取引価額相当額で評価し、2027年1月以後の相続等から適用する方針を示しています。直前に買えば従来どおり評価が下がると考えず、通達と経過措置も確認が必要です。財務省・資産課税の見直し

評価額だけを下げても、相続人が分けにくい一棟物件ばかりでは遺産分割が難しくなります。誰が経営を引き継ぐか、納税資金をいくら現金で残すか、修繕や借入返済を誰が負担するかまでセットで考えることが大切です。

6.インフレへの備えの一部になる

物価が上がると、同じ金額の預金で買えるものは少なくなります。実物資産である不動産を持つことは、現金だけに資産が偏る状態を変える選択肢になります。

ただし、不動産価格や家賃が物価と同じ割合で上がる保証はありません。入居中の家賃はすぐ変更できるとは限らず、地域の需要が弱ければ値上げが難しい一方、修繕費や保険料は先に増えることがあります。

借入が変動金利なら金利上昇も負担です。家賃が増える想定だけではなく、家賃据置きのまま運営費と返済額が増える場合も試算しておきましょう。

7.金融資産とは違う収益源を組み込める

給与や株式配当に加えて賃料収入を持てば、収入の出所を増やせます。しかし、不動産なら価格が急落しない、景気の影響を受けない、ということではありません。需要減少や災害、金利変動によって収益と売却価格の両方が下がる可能性があります。

さらに、売りたい日に希望額で売れるとは限りません。複数棟を持っていても、同じ駅や同じ勤務先の入居者に集中していれば、共通の要因で空室が増えます。資産の種類だけでなく、地域、入居者層、返済時期、すぐ使える現金も含めて偏りを確認します。

不動産投資を検討する7つの理由と成立条件

どの種類の不動産を選ぶか

新築一棟は設備や間取りを計画しやすい反面、取得総額が大きくなります。新築時の家賃が将来も続く前提を避け、周辺の築浅・中古物件の成約状況から次の募集条件を考えます。

中古一棟は、実際の入居状況や支出履歴を確認できる点が利点です。一方、安い取得価格よりも、購入後の屋根・外壁・給排水の工事負担が重要になる場合があります。税務上の償却期間が短いことと、建物の状態がよいことは別です。

区分マンションは、一室ずつ購入・売却できるため規模を調整しやすくなります。ただし、一室だけなら退去中の家賃収入はゼロです。管理費・修繕積立金の改定予定や管理組合の方針も、自分一人では決められません。

海外不動産は地域や通貨を分散できる一方、為替、現地の税務、権利関係、管理会社との連絡が加わります。現地通貨で利益が出ても、円高で円換算の利益が減ることがあります。国内とは異なる知識と管理体制が必要です。

新築一棟・中古一棟・区分・海外不動産の比較

購入前に確認する4つのポイント

好みではなく、借り手の需要を調べる

駅までの距離だけでなく、通勤先、買い物、学校、駐車場、競合の募集期間を確認します。都心の単身者と車移動中心の家族では必要な条件が異なります。広告家賃だけでなく、実際に決まった条件を管理会社へ確かめると、収入の見積りが具体的になります。

利回りと4つのリスクを結び付ける

金利上昇、自然災害、空室、経年劣化をそれぞれ金額に置き換えます。災害はハザードマップと保険の補償範囲、空室は退去から再入居までの期間、劣化は工事項目と実施年を確認します。保険がすべての損害や休業を補うとは限りません。

差別化に使う費用を回収できるか考える

家具家電、ペット対応、初期費用の軽減などは、入居者の選択理由になります。ただし、設備の交換費や原状回復負担も増えます。例えば30万円の設備追加で月5,000円の増収なら、満室・追加費用なしでも単純回収に5年かかります。実際には空室期間や保守費を加え、値上げ以外の効果も見ます。

相談先に根拠を示してもらう

販売会社には価格と収入の根拠、管理会社には募集と維持費、金融機関には返済条件、税理士には税引後収支を確認します。提案の魅力よりも、不利な条件や費用を具体的に説明できるかが重要です。担当者の試算と契約書・入出金記録が一致しているかまで確かめましょう。

まとめ

富裕層が不動産を選ぶ理由は、借入、税務、管理委託、相続、インフレ、分散を組み合わせられることにあります。ただし、どの利点にも成立する条件と負担があります。

判断の中心に置くのは、節税額や満室家賃ではなく、空室・運営費・返済・修繕・税金を差し引いた後に残る資金です。資産に余裕があるからこそ、急いで規模を広げず、家族への承継と売却まで含めて持つ意味を確認しましょう。


不動産投資マスターK
代表 金田大介
運営 オスカーキャピタル(株)
公式サイト https://oscar-c.jp