夜中に近くの公園に巨大絵を描いた。

ナスカの地上絵は果たしてどう描かれたのか!?というミステリに心をざわつかせたことが昔あったけどらいまならわかる。締切に追い詰められた人が夢遊病者のように散歩に出掛けて描いたんだと思う。あくまで仮説だけどね。

もっと大きいの描きたい。あと、真上から見たい。見れない。


超じいちゃん子だった。

 

じいちゃんが亡くなったとき、「冷凍庫にある、じいちゃんの干し柿はいつ食べればいいんだろう」と心配になった。毎年、作って送ってくれてたのだ。で、1年かけてゆっくり食べてた。でも、今あるうちで最後なのだ。その、最後のやつを、どう食べ終わればいい?最後のひとつを、どんな気分で食べるのか?

 

結局、いつどう食べたかは覚えてない。

 

。。。

 

うちのパパはなんだかんだ、発泡酒、第3のビールを毎日ごくごく飲んでいた。安いからだ。たまに現場から「ちゃんとしたビール」をもらって帰って、パパにあげると喜んだ。パパはなんなら常夏の国で生活したいと思うひとで、だからかドライとかオリオンビールが好きなタイプだった。ギター1本で家族を養っていたパパに、せめて毎日上等なビールを飲ませてあげたかったなといまさら思ったりはする。2人でライブをやった帰り道、車でコンビニに寄ってビールを買うのはお気に入りの習慣だった。そのときは、上等なのを飲んだ。でも、音楽室でふたりでドラフトワンなんかで乾杯した思い出も、いい感じの思い出だ。鹿児島出身のせいか、途中からは焼酎になる。

 

そんなパパが天国にスタジオを移したとき、ビール好きだったパパのためにたくさんのビールが贈られた。パパは自分の本なんかの中でもビール好きを書いていたから、ビーラーであるのは有名なことだった。で、パパへのプレゼントであるビールとはいえ、パパは死んでるわけで、飲むのは遺族の我々ということになる。で、このビール、冷やしたまま、まだ飲めてない。かれこれ3年である。なのに、飲めてないのである。こうなってくると、もう、神聖なビールという気がして、いつ飲む?という感じになる。

 

この前、朗読リュズタンの衣装デザインを手掛けた時、母にも縫製などを相当手伝ってもらった。この千穐楽の後だったかは、確かふたりで一本飲んだ。なんだか、然るべきタイミングという気がしたのだ。

 

さあ、次はいつか。そろそろ、ビールの賞味期限も気になり出す。

 

だがしかし、これにも最後の一本という熾烈な瞬間がある。

 

「パパ関連のビールをいつ飲もうかと思ってる日々」のを締めくくる瞬間を、自分は決められるのか。そのときの気持ちに耐えられるのか。

 

そんなどうでもいいことに悩む。

 

。。。。。

 

仕事に集中しすぎて、いきなり、日本語が喋れなくなる。「してきてくれた」か「してくれてきた」がわからなくなって瞬時に混乱して日常で言葉を噛む、みたいなことが多い。疲れているのだと思う。締め切りたちが迫りくる。三國志と、おぼんろ本公演と、後一本。描かないといけない絵もたくさんあるし、決断しないといけないこともたくさんある。


劇団員と会った。基本、会議は好きじゃないので、この日もそういう類ではなく、なんか、会って、公演に際しての自分の気持ちを共有、みたいなところ。さひがしさんの誕生日プレゼントを渡そうと思って洋服に絵を描こうとしたのだけど、めぐみさんのプレゼントを渡していなかった(9月なので、この時期に会う予定がなかった)ことを思い出し、2人分用意することに。迫り来る締切の恐怖をほんの少しだけしまいこみ、作業。やっぱり、好きな人のプレゼントを創るのが一番幸せな時間な気がする。



おぼんろ。
タイトルを発表する都合で、この日までに決めてください。という脅しを受けた。数ヶ月前にプロットもタイトルも提出してはいたけれど、直前で悩む。数ヶ月前に自分とは気持ちが違ったりする物だ。結局、土壇場でそれまでと8割くらい内容を変えたタイトルを出した。
 

今回は公演の概要に関しては制作と製作委員会にほとんど全て任せてしまった。お金や運営のことは正直、本来まったく興味がないもので、繰り返される話し合いはそれなりに苦痛だった。なので、素直に、今回はただただ物語を描いて演出して出演することに集中させてもらおうかなとおもう。とは言っても主宰ではあるから責任は持つけれど。悩んだところで結局は大人の事情を気にしないといけない物事と向き合うと、どうやら自分はジャンプ力が落ちる。跳んで翔ぶことが、自分にだけできることなのだとしたら、そっちに専念したい。

 

。。。。

目がかゆい。でも、ものもらいのような、結膜炎?のような症状がすぐに現れるようになってしまった昨今、触っちゃだめだ!と自分を制している。花粉症なんだろうか?

 

まぶたとうまくいってない日々。目は口ほどにものを言ってしまうんだから、気をつけないとだ。余計なことを言わないように、目を口止めしないと。

 

。。。

 

前に、大阪土産のみたらし団子みたいなのを稽古場に差し入れしたら評判が良かった。実際、すごくおいしかった。鹿児島にはじゃんぼ餅というのがある。みたらしってすごいよな。僕ら年間、みたらしを口にする機会が何回くらいあるのだろう。生クリームとかとは合わないんだろうか?考えてしまう。

 



喧嘩などを見てどっちに味方をするべきか、と悩むときは、弱い方、と決めとくのがいいと思う。強いほうは味方なんかいなくてもそのまま勝つけど、弱い方は死んじゃうかも知れないからね。

 

悪いものは罰さないと!という人がいるけど、その考えはたぶん、悪い。僕らきっと、何も傷つけない方法を考えた方がいいと思う。悪いことをした人に、それは悪いことだとぞと伝えることは大切だけど、殴って教えた方がいい、てのはなんか違うよ。

 



3月1日

仕事帰りに締切があったので渋谷の駅前に座って台本を書いていたら男の人に声をかけられた。熊本から1週間ほど東京に遊びにきていて、人と会うはずだったけれどドタキャンされた、相手はコールセンターのバイトを入れてしまってた、今日は女の子とご飯だと、家に泊めてもらっている友人に宣言して出かけてきたから気まずい、などと話し続ける。いつまで経っても隣からいなくならないので、こちらも色々尋ねる。こちらのことも尋ねられる。パソコンを覗き込まれ台本も読まれる。台本の続きを描きたい。だがしかし埒があく気配が全くしないので、「飲みに行く?」と言ったら「そうなったらめっちゃ嬉しい!」と言われ、「コンビニでもいい!」とも言われ、そのあと2時間、ふたりでお酒を飲みながら渋谷の町を歩いた。「締切大丈夫スか!?」と心配された。いや、大丈夫じゃないんだけど。一本飲み終わったので解散しようと思ったら、「あの、あの、もう一本お願いします!」と柔道家みたいな頼まれ方をしたので、次のコンビニを探す。あんまり詳しくない渋谷の案内もした。彼がその日、表参道で、インスタグラマーが勧めていた美容院で髪を切ったことや、父親は学校の教頭先生であることなど様々なことを知ったし、池袋と新宿と渋谷と調布の都会度を数値で教えて欲しいと言われ試みたし、FC東京の最近の状況についても教わったりした。経堂は素晴らしい町だとも力説された。

 

締切やばい。

 



3月5日

本読みの日だ。長かった。会ったことない俳優さんたちのことを調べ、想像し、描きあげた。劇団公演の時は、仲間へのラブレターという気持ちで筆がノることも多いけど、今回は、これから会う相手へのラブレター、好きになってみせるぞという、言うなればタイミング的にはちんぷんかんぷんな告白という今のラブレターだ。妙な緊張感があった。

 

ようやくだ。本人の声で聴ける!!その期待と高揚が、なんだかそのまま緊張になったりもする。大事な現場、いよいよな瞬間の前って何をしたらいいのかわからなくてずるずるしがちだ。

 

のちに親友になるとしても、まずは初めまして。不思議だ。

 

3月6日

稽古初日は素敵だった。本読みは何か答え合わせめいてもいたし、これから何をするべきかをザクッと頭に浮かべた。

 

昨日、到着直前に稽古場近くで迷子。雨も強まり途方に暮れ、屈辱的だし申し訳はないけれどスタッフに電話して助けを求めるしかないかと思ったところで、横断歩道の向こうに巨大な男性を発見。執筆中何度となく写真や動画を見倒したから、あぁ、わかる、俺にはわかるぞ、おそらくアレは...出演者の一人である郷本直也さんである。信号が変わるのを待ち、助けを求めた。

 

「場所、わかりますか」

 

なんてことだろう。最初の一言がこれだなんて。しかもずぶ濡れで半泣きだ。嘘みたいに優しい直也さんは王子様のようなエスコート力で導いてくださり、どうにか到着できたのだった。

 

8月7日

稽古はごりごりと前進してみてる。俳優たちとは結婚を前提にお見合いというか交際を深めている感覚で、「あ、あなたそんな人なの??」と、言うなれば一番楽しい時期なのかも知れない。もちろん、一番ドキドキする時期でもある。

 

まずは頭の中にあるものを吐き出して共有して、物語をみんなの遊び場にしたいという気持ち。キャストはもちろん、スタッフがすごすぎて好きすぎてどうしたものかと、嬉しさにのたうちまわる。

 

稽古を終え、その後の打ち合わせを終えた帰り道、道端で体育座りをしているスーツ姿の女性がいた。周りの人が誰も立ち止まらないので妙だなと思って声をかけたら「大丈夫、大丈夫。」というから、ああ良かったと思って顔を見たら血だらけだった。「ごめんなさい、ごめん、えー、どうしよ・・・ごめん〜」謝り続ける彼女。・・・その気持ち、とてもよくわかる。怪我をするのって気まずい。結局、救急車は呼ばないことにして、落ち着くまで一緒にいて家まで送って行ったのだけれど、何があったのかは分からずじまいだった。お姉さまは、「あなたは、いい子!なんていい子なの〜!」と歌舞伎俳優のように見栄を切って(本当に)家の中に入っていかれた。元気になったようで良かった。

 


雪降った。3月の雪。


悲しい出来事がそれなりに重なりますね。

まあ無理もない、そもそも、僕らそういう構造でつくられている生き物だし、そんな世界設定だから。なんて思うけど、でも、悲しいもんは悲しい。

 

だけれどどうか、あなたが幸せでありますようにと心から願います。そうすることが、自分の幸せだからです。

 

どうか今日もあなたが少しでもたくさん嬉しい気持ちになれますように。


てはじめに、まず、あったかい飲み物でも飲んでくださいね。