咲きそうな桜に「咲かないで」と言ったのは、咲いたところで永遠には咲き誇ってくれないと知ってたから。

咲き乱れた桜の花びら、いじわるなほどあまり綺麗で、「だめだめだめだめ」と言いながら、私、目を離すことなんて微塵もできなくて

何週間だか桜の木下に跪いて、不眠不休、飲まず食わずで見上げ続けた。

「そんなにずっとそこにいたら根っこがはえちゃうよ!」と道行くおばちゃん笑ってた。それならそれでどんなにか悪くない話だ、と思った。


舞い散る舞い散る舞い散る舞い散る。


「だから咲かないでって言ったのに」って私は、気絶しそうな気持ちで涙を流した。

おばちゃんの予言が現実になり出したのは数週間後、花絨毯が腐り始めたころかしら。ニョキニョキ細い枝みたいなの、体のあちこちからはえてきて、みんな地面に潜ってった。そっか、これ、根っこだー、て思って、私、うれしい、地面に潜りつづける私の根っこ、こつん、て、たどり着いた、桜の根っこにコツンたどり着いた。くるくる、からまれ私、桜にからめ。私、体が茶色くなってきて、関節もかたくなりだして、すぅーっ、て、眠いような心持ち。

夏がくるのです。