クロジ「銀の国、金の歌」千秋楽が終わりました。僕は、北の端の海辺の国のスグリと言う名の女王に使える美禰(ミネ)と言う名前の宦官役でした。

 
僕、末原拓馬は男性の俳優ですし、肉体も男性なのですが、全編を通して女性のような衣装に身を包み。肉体的には女性として生きました。精神的には?・・・それは、とても曖昧なところなのです。もちろん、僕の中ではなんの疑いもない美禰の心がありましたが、あえてここで言葉にて定義することはせず、それはご覧になってくださった方の想像にゆだねたいと思っております。
 
見た目としては、僕は180センチも身長があるし、実は足もそんなには長くないし、骨格はまあまあしっかりしてあるもので、どう女性的な印象を与えるか考えました。元から細身だけれど、身体のラインも変えました。体重で言うと通常時より5キロ落としました。筋肉をなくすことも含めの肉体改造だったので、運動もですが特に食事制限ありきで、どうしても稽古やら仕事やらと同時進行せねば成らない都合上、目眩とも闘いました。なんか、僕の場合はこういうプロセスは役作りを助けてくれたりします。役作りの時にはその人物の痛みと喜びどち僕とが混ざり合う上で、なんか重要なことでもありました。
 
それでも不思議なもので、やはり見た目ではなく、重要なのはメンタル面での役作りで、世界をどのように見据えて、どのように物を考える人間なのかを確立することで、美禰は次第に美禰らしさを得たように思いました。途中からはもう、僕は本編中には身体を受け渡すだけになりました。
 
様々なひとを愛しました。ツッチーもシバくんも、歌うたいも踊り子も、漁師たちも、山賊たちもみんなを笑顔で包むのが自分の役目だと思っていました。それは、自分が一番愛する、スグリちゃんのためになるからです。あの場所は、スグリちゃんの大切な大切な、すがるように大切にしてきた国だから。そこに、少しだけ「スグリちゃんとわたしの」という気持ちがなかったわけではないです。だから、どんなに大切な人たちでも、スグリちゃんのためなら捨てられる。しかも、泣いてるスグリちゃんのためにも、是が非でも笑顔は絶やさずに。
 
台詞としては描かれていないけれど、シバくんの死をスルーしたり、ツッチーを敵とみなしたりというところではやはり自分なりに葛藤がありました。でも、それを乗り越えるほどに、スグリを愛していたとも言えます。
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千秋楽の本番終了後すぐにバラシが始まり、数時間後にはもう、場内はもぬけのカラ。
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バラシが終わった後の劇場でポツンと物思いに耽るのが好き。もう二度とあそこにはいけないんだ、と思うと泣きそうになったりもするから、だからこそ、ちゃんと、ここでの時間が自分に染み込みますように、と祈る。次から次に仕事をこなしていく上では切り替え上手になったほうが得策だとは知りつつも、絶対に切り替え上手になんかならないようにと心に決めている。
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あ、まーくん写り込んでしまった

このチームが好きでした。スタッフも、共演者も、みんなみんなひっくるめて、好きでした。これは、舞台をご覧になっていれば伝わってくださったかとも思うのですが、本当に、素晴らしかったんです。僕らの絆そのものも、なにかしらのまだ科学的には解明されていないエネルギーとなって作品を後押ししたように思います。クロジの主宰ふたりはとにかく過激なほど真剣で、愛があり、いつだって誠実で、小器用というよりは不器用で、だけどとにかく想いが強くって、僕は、この場で共に作品を創る場所にいられたこと、誇りに思います。
 
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なるべく、この舞台のことが今後の人生に関わりのあることであってほしい。自分にとっても、みんなにとっても。本当であれば、出会った共演者、スタッフ、観客、みんなみんな、これからずっと一緒にいたい。だけど、この作品は、もう少ししたらいったん心にしまって、また新しい毎日に出かけていかねばならないから。そして、それはきっと素敵なことだから。
 
また会えること、心から願っています。
どうか、また会いましょう。
会えますように。
 
本当に、ありがとうございました。
心から、
ありがとうなんて表現じゃ足りないくらい、
ありがとうございました。
 

また、思い出したら何かを書くかもしれませんけど。