岡山2日目。早朝から劇場にこもり、スタッフ、語り部共に全力で公演準備に取り組みました。明日は初日。楽しみでならないのです。

気付いている人もいるかも知れないけれど、馬鹿みたいに効率の悪い公演です。だって、神奈川で二週間公演をしたのと同じだけのセットを、岡山に運んで来て、創った訳です。そして、3回だけ公演をして、バラして、東京に帰るのです。アホみたいに大きいトラックを借りました。運転手さんもお願いしました。スタッフ、キャスト全員で飛行機に乗り、宿泊をします。もしソロバンはじきをまっとうにできるプロデューサーのようなひとがいたとしたら、絶対にゴーサインを出さない闘いだと思います。別に岡山だから爆発的に人気がある訳でも勿論ない。・・・採算なんて合う訳がないのは、はなから承知なんです。

 

でも、どうしても来たかったんです。二年半前に、「おぼんろは必ず岡山に戻って参ります!」とカーテンコールで叫んだその約束を守りたかったと言うのももちろんありますし、それから、なんか、どうしても、どうしても、と思ったのです。

 

以下は岡山の知人が多いFacebookに投稿した文章だけれど、なんと言うか、岡山公演は祈りや願いにまつわる公演です。誰かのそれが、自分のそれになったんです。

 

どうか、明日と明後日、素晴らしい時間になりますように、と願うのです。

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岡山県近辺にお住まいのみなさまへ

 

突然ですが、
明日、12月18日と、明後日19日、
いかがお過ごしでしょうか。

 

演劇の魅力に触れてみませんか?

 

初めましての方も、そうでない方もいらっしゃる方と思います。東京を拠点に活動しております【おぼんろ】と言う劇団の主催、末原拓馬と申します。

この度、「企画on岡山」と言うNPO法人に呼んで頂き、岡山にて演劇公演を行う事になりました。その公演に、ぜひお越し頂けないかと思ってこの文章を書いています。もちろん、作品を用意している身として、観て頂きたいと考えるのは当然の事なのですが、僕らが、あなたに是非この作品をご覧頂きたいと思うのには、特別な理由があります。

 

岡山の演劇を盛り上げたい。
僕が最初に言われたのはそんなことでした。

 

僕も、僕の劇団員も、決して岡山出身なわけではありません。出会いはほとんど偶然でした。たまたま知人から紹介された戯曲コンクールの主催が岡山県だったのです。僕は、「賞とかもらえたらいいな」くらいに思って応募して、幸運にも選んで頂けて、わあ、うれしい!と、本来ならば、それだけで終わるくらいの関係だったように思います。

そのコンクールはそもそも、全国公募で脚本賞を取った作品を岡山の市民キャストで上演する、と言う主旨のものでした。受賞以降、僕が執筆した『月の鏡にうつる聲』と言う作品は、何十人ものキャストやスタッフの手で大切に準備され、上演されました。その過程で何度か岡山に赴き、現地の演劇に携わる方々と出会うにつれ、僕はこの岡山と言う土地に大変興味を持ったのでした。

 

ひとつは、僕にとって東京以外の地で活動する事がほとんど皆無だったと言う事もあります。20代半ば頃だった自分には少なからず地方で活動する事への憧れもあり、初めてその機会を与えてくれた岡山県に対しては大きな感謝も抱いたものでした。

それとは別に僕が大きく心を動かされたのは、「岡山演劇を盛り上げたい」と強く思いながら岡山演劇に携わる方々のその想いでした。

岡山在住のあなたは一体どれだけ演劇と言うものをご覧になった事があるのでしょうか?

 

言われるまで意識もしなかった事ですが、東京と言うのは岡山よりも演劇が盛んなようです。東京では毎日何十本と言う演劇作品が上演されています。規模は小さいものから大きいものまで様々ですが、大袈裟かもしれませんが、ほとんどの駅に大なり小なり劇場と言うものがあります。テレビや映画、音楽に比べ演劇が一般的な娯楽になり得ないと言うのは東京で活動する我々にとっても日頃の悩みの種ではありますが、岡山の演劇人におけるその悩みは、東京におけるそれの比ではないと言う事を僕はだんだん知りました。

 

観るひとが少ないと言う事は、直接的に、演る人が少ないと言う事に繋がりますし、逆もまた然りです。観客が育つ事で表現は成長し、表現が成長する事によって観客も育つ、その良いサイクルさえ始まればいいのですが、それはもちろん、とても難しい事だと言うのも事実です。

初めて岡山に赴いてから4年、僕は何度も岡山で芝居をさせて頂きました。独り芝居の上演はもう十回を越えます。ワークショップ、対談イベント、それに以前に賞を頂いた『月の鏡にうつる聲』は三度の再演とともに、岡山キャストによって台湾でも上演されました。2年前には主宰する劇団の『パダラマ・ジュグラマ』と言う作品を美術と機材を丸々持ち込んで岡山公演も行いました。ここ二年間は、夏になると岡山のこどもたち数十人とともに音楽劇を創り上演する活動もしています。なぜ、東京で活動する僕がこんなに何度も岡山の演劇に携わる事が出来たのか。それはすべて、お呼びくださった岡山演劇人のみなさんの熱意によるものです。

岡山の人間に、良い演劇作品を贈り続けたい。そうすることによって、演劇は面白いんだと思ってもらって、観客も、表現者も増やしたい。

そのお気持ちによって、僕は何度も岡山の演劇に携わらせて頂いています。もちろん、自分たちがその願いを受け止められるほどの立場であるのかの判断は僕自身にはできませんが、そうあれるようにと全力で臨んでいます。

 

12月18日、19日、僕ら【おぼんろ】は最新作の『ヴルルの島』と言う物語を岡山で上演させていただける折となりました。東京から俳優、スタッフ、機材や美術などすべて持ち込んでの公演です。チケット代も、関東での公演よりもうんとお安く設定させて頂きました。正直に言えば、採算など取れようもない予算組での公演です。今回に限らず、毎回、東京から人を呼んで芝居を上演すると言う事は、旅費、滞在費、機材費、とにかく莫大な予算がかかります。それなのに毎回僕に声をかけてくださる企画on岡山のみなさんの熱意に、僕らは強く賛同しています。

 

岡山の演劇事情について、もちろん東京在住の僕は本当の意味では理解できていないかもしれません。でも、岡山演劇人に心から感謝をする者として、たくさんのこども達の指導にも当たらせてもらった者として、岡山演劇の今後の発展を願わないではいられません。

 

作品を贈る以外になんの力もない僕らですが、心を込めてご用意しております。

『ヴルルの島』。神奈川公演で大盛況を頂いた物語です。もしよろしければ、ご来場いただき、心からお楽しみください。

演劇をご覧になり慣れていない方も、老若男女どなた様でもお楽しみ頂けるような内容となっております。