島根2日目も、それなりにガツン衝撃的だった。
とりあえず、
1日目『ズタボロ一代記』を終えて、
制作さんの車でまさひとの家に共に帰り、
食事とともに晩酌とともに、
次の日の打ち合わせ。
一晩目が「ひとりじゃできねぇもん」だったのに対して、
2日目は「たくまとまさひとのふたりならできるもん」
毎週月曜日にまさひとがやっている
「マンデーワンマンショー」にゲスト出演する形だ。

しかし、
「トークや即興」と極めてファジーな告知をしていたものの
何を隠そう、微塵たりとも具体的なことを決めていなかった我々。
と言うか、神様ごめんなさい。
たくまは、たくまは、マサヒトとお芝居をするのは初めてです。
以前イベントに出演しているところをチラッとみたことしかないのです。

ってことで、
「・・・なにやる?」

と言う話し合いをし続ける事数時間。
即興と言っても様々なシステムがあるもので、
あれこれ、実際に試しましたよ深夜に居間で。

で、気付けば3時半。
「ま、明日考えよう。風呂はいっといで」と言われて、
お風呂からあがったらもうマサヒトは完全に爆睡しておりました。
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で、次の日の朝。驚くべきは「自宅以外ではねむりがたい」と言う業苦を背負っているはずのオイラだと言うのに、熟睡。まあ、前日が2時間ほどしか眠れぬままのヘビーデイだったってのもあるのだろうけど、いや、明らかに、酸素が濃い。酸素カプセル県だよ!

で、その“爽やかな朝感”に腕を引かれる形で、ちょい早めに目覚め。マサヒトが「温泉いこう」と言ってくれたので、行く事に。今夜何をしよう?と言う課題を抱いたまま、車に乗り込んだのでした。とりあえず一緒に過ごし続けているうちに何か思いつくだろう!と。

それにしても、旅行や観光に一切興味を持たずに生きてきた自分なのであって。「できれば旅はしないで旅公演ができたらなあ」などと夢見る自分にとって、このスケジューリングはなかなかにアドベンチャー。
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景色・・・!山!山!
この、「雲南」と言う地名が特に好き。
雲の南。
雲を目印に名付けられる場所と言う、なんとも詩的な土地。
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「源泉掛け流しだよ」と言われて、たくま個人的に「ゲンセンカケナガシ」の意味を長年知ったかぶりでやり過ごして来ていたので、恥を忍んで聞いたよね、マサヒトに。ほほーう。ご存知ですか?「そのまま入れる温度の温泉」みたいなこと。これは「太陽と地球の距離の同じくらいの奇跡」なのだそうだ。

お風呂気持ちよかった。シャワーすらない極めて硬派な温泉。日本書紀の時代から存在しているらしく、自分がちっぽけに感じる。更に、なんとなく、マグマに温められてるんだなあと思ったら感慨深く。2人でかなり長い間、いろいろ語りましたふやけながら。お互い主宰の立場だしね。あがったら、安定のコーヒー牛乳。
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ちなみにこの川は斐伊川っつって、あれだよ、スサノオノミコトが箸が流れて来たのを発見するでお馴染みのあの川。おー。神々の里。当たり前に、神様がいる。
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さあ、ご飯を食べて、稽古。
「夜は、トークはほとんどしないで、即興劇をメインに」
と、この頃には腹が決まっていた我々。
個人的には、前日の独り芝居以上のものを提出する心意気。
ノリと勢いの芸なんか見せたくない。

とにかくお互いの芸風が噛み合うかどうかも怪しく、はっきりしているのは、それぞれが日頃やっている物語りの雰囲気はまったく違うぞと言う事で。
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互いの呼吸や感性を擦り合せることに時間を費やす午後。延々、川縁を歩いたり、街の中を散歩したり。とりあえずはっきりしているのは、島根に来てからほぼずっと一緒だ、と言うことで。
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「願い橋」と言う、目をつぶって渡り切ったら願い事が叶うと言う橋を、なぜか走り抜ける我々。ちなみに、このイメージは、後ほど、本番に大いに生かされたのでした。
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劇場に入って、リハ室であれこれ試行錯誤。演出家同士マンツーマンでワークショップめいたこともやってみたり。この頃にはだいたい頭の中では何をすべきかのビジョンが出来上がっていて、試してみたところ、光明が。
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本番前ギリギリまで、設営した舞台の上で場当たりとリハーサル。
とは言え、本番での内容はまったくわからない。
本番で自由にやれるよう、不安ごとはすべて解消しておく。

スタンバイ。
とりあえず、緊張。
そして、本番。


参加者から3つほどお題となる単語を頂いて物語りを始める。「語り部」こそを我が職業と看板出している自分にとっては勝負。この日でた単語は「クリスマス」「トイレットペーパー」「スターウォーズ」の3つ。脈絡なさすぎるぜ島根県民め。などと思いながら、「じゃあラストは水がたくさんある場面にするね」と我ながらノープランで謎の宣言。ハードル高くしておいた方が飛んだ時にかっこいいもんな。どんな時も、飛べる前提でハードル上げ続けるオイラです。左上の写真は「ふたりなら・・・できる、もんっ」のポーズ。右上のは・・・ほら、走っているでしょう。願い橋での稽古が生きたんよ。
ハタチ族の俳優兼スタッフの大原さんと言う人間が居るのだけれど、彼女は『パダラマ・ジュグラマ』島根公演のときに照明家をつとめてくれた。すごい才能の持ち主。この日も、彼女もアドリブで様々な外的要因を「仕掛ける」と言うのをひとつルールにしていたのだけれど、いやはや、本当に素晴らしく。


(写真提供:スダユウジ)
「ここで、今夜しか観られないもの創ろうぜ」が我々の目標。内容についてはここには詳しく書かないけれど、スーパーから出た事がないゴキブリがサンタクロースに認めてもらうために宇宙船と戦う物語り。なんのこっちゃ。アホみたいに汗かいたし疲れまくったけれど、笑いや涙に包まれた特別な時間。まあ、俺ら天才だな、と。

ご来場頂いたみなさま、本当にありがとうございました。また島根行きたいなあ、と、超ミラクル思った。本当にありがとう。愛してるぜ。
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あまりに気持ちが高揚していたもので、楽屋でとりあえずビールを飲んでしまう俺たち。いろいろな差し入れありがとうでした。楽屋を散らかしすぎたたくまは、やや、現実逃避。物語り成功したからまあいいや、てなメンタルコンディション。
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ハタチ族のみんなと。みんな優しくておっとりしているし、言葉にあちこちに「けん」が織り混ざるけれど、365日公演をここまでやってきたみんなは、たくましくて。兄弟劇団、て思ってる。野心と信念に満ちた制作も居て、楽しみ。
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其の夜も我々は、スタッフともども大はしゃぎで。つっても、打ち上げってよりは、たいていは今後の話だったな。これからどうするか、ってことだけで一晩中語れてしまう。おぼんろ5人でも来たいなぁ、なんてこと、けっこうマジで思っていたりもして。少なくとも、たくまはまた来るぜ。で、深夜ながら突然に、「そうだ、盃を交わそう!」と謎のハイテンションに絡めとられた我々。

あと、個人的にうれしかったことが、ひとつ。



この2日目のショウは、投げ銭公演でやった。おぼんろで言うところの「イイネ公演」。公演終了後に、おもしろかった分だけ自由な額を入れてくれ、というシステム。オイラに関しては路上時代をずっとこのシステムで過ごしていた。つまらなければ一銭ももらえないし、作品を良くして行けばちゃんともらえる額が上がる、と言うのがとっても恐ろしく、そして嬉しかったのでした。「芸能界はコネとかが大事」と言う噂があるけれど、ここの生存競争は、もっともっとシンプルで。

上の写真は、お馴染み、当時の「ズタボロ一代記」の奴。帽子を被ってると思うのだけれど、これは、拾った帽子に、フェイクファーの切れ端を自分で仕付け糸で縫い合わせたと言うものなのだけれど、これ、ずっと被っていて。で、当時、演目が終わると必ず「オイラに今夜の晩ご飯代を!」だとか叫びながら、この帽子の中にお金を入れてもらっていたんですな。で、もらったジャラジャラのお金を、銀行から頂いて来た(ごめんなさい)封筒に突っ込んで退散。みたいな感じ。

で、この封筒を、捨てられなくて、いまでも持っていたりするのだけれど、それが、例えば以下。注目すべきは、額。
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200円て!マチネに至っては、これ、もらえてないってことなんじゃなかろうか。おそろしい・・・!当時、収入源が他に何ひとつなかったもので、シビアにシビアに悩んだ、。と言うか、その後に俳優の仕事で稼げるだなんてビジョンさえも特になかったので、自分はこの帽子の中にお札をたくさんもらえるようにならなかったら、死ぬ!くらいに思った。「お前は一生そうやって小銭数えてるんだろうな」と言われたことがあった。反論する材料が「根拠のない自信」の他に何もなくて、泣きながら悔しがったのを覚えてる。

悔しいし、実際問題困ってしまうし、アホみたいに稽古したし、頭も使った。しゃべくりが急激にうまくなったのもこの時期のような気がする。誓ったよ、絶対にこの帽子にお札溢れさせてやる!と。お金が欲しかったんじゃなくて、なんとなく、何かを、照明してやりたくて。当時は、ズタボロと自分だけの戦い。ズタボロと話し合ってたもんな、リアルな話。で、毎日やるうちに、日によるにせよ、ほんの少しずつ額は増えてくるようになった。応援してくれる常連さんなんかも出来始めたし。
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「3188円と1セント」。セントて!そう、他にもお菓子とかお酒とかジュースとか、現物支給の日も多かったなあ。そこから作品カスタマイズし続けて、「お札が入った!」と言う日がちょいちょいあるようになったりして。

あれから5年。
ぜんぜん、オイラ変わった。
変わってないけど、変わった。
変わるように努力した結果、変わった。

で、今回。ズタボロと共に島根。

投げ銭だってことで、
せっかく用意してくださった箱じゃなくて、
頼み込んで、
あの帽子をつかわせてもらうことにした。
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ごめん、お金の写真なんて載せるもんじゃないけれど、涙ぐんだオイラに免じて許してくんろ。当時から使っている仲間のような道具と「やったなあ。信じて続けてよかったなあ」なんつって、喜び合った。どうしても、この帽子に、一度いい思いをさせたかったんよ。当時の10倍以上だ。

些細な事だとは思う。
自分以外には分かち合えないような感動だとは思う。
でも、そう言う事じゃないのかな、
俺らが生きていられる理由って。

改めて、いままで支えてくれたすべての人に、
すれ違ったすべての人に、
心から感謝した夜だったんだ。
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さんきゅー島根。
さんきゅーハタチ族。
サンキューまさひと。

まだまだこれから。

最高の2日間だった。
また来るけん。

待っちょって。