昨日、

主演を務めさせていただいた、
Crazy Foxy Beeプロデュース公演
『ゆめゆめこのじ』が千秋楽まで終演しました。

僕は、6月に人生最大の勝負である劇団おぼんろ本公演を控えています。自らで主宰する劇団です。そこで、4194人動員を目指すことを公言している僕は、とにかくあらゆる場所に顔を出そうと躍起になって、昨年末から間髪入れず舞台に出演し続け、4月の頭までまた別の舞台に出ていた自分は、「4月からは、ついにおぼんろに専念」と思っていました。

そこに、ありがたくもいただいたオファー。

当初は出演は厳しいと伝えたけれど、
とにかく自分にやって欲しい役であると言われ、
スケジュール調整もすると言っていただき、
ご迷惑をおかけすることになるとは思いながらも、腹を決めて、この闘いに参加することにしました。プロデューサーの熱意に感動した部分もあるし、もう、意味のない仕事は自分の人生には舞い込んできたりはしないだろうなと信じてました。何もかも、神様の手のひらの上。そこで、ボレロみたいにぐるぐる廻りまくろうと思うのです、なるべく速く、美しく。

稽古の日々はとても苛酷でした。

もろもろの仕事を並行するため稽古だけに集中できるわけではなく、肉体的にも精神的にも相当にアクロバットなことをしでかさねばならず、だけれどそのエマージェンシーな状態が、逆に自分の感覚を鋭くしたようにも思っています。

俳優は、なんだかイタコみたいなものだなとも思ってはいて。

本番が差し迫ってしまうと、さすがに「出雲」と言うこの役の感覚が自分の感覚になってしまい、文章を書いても、打ち合わせをしても、劇団おぼんろ末原拓馬から少し反れてしまっている。「憑りつかれた」よりはもっと親しい感覚。こちらが憑りついているのかもわからない。

遊郭の、遣り手。
接客をし、店を回す仕事をし、
そして遊女たちの面倒を見る役。

男のひとたちの心の憩いの場となる女性たち。そこにはたくさんの恋が渦巻いて、しかしそれは必ずしも安らかなるものではない。

そんな、何もかもを、ひたすらに見つめ続けるのが、僕が演じた、
出雲という役でした。

雲が出る。と言う名前はとても素敵だなと思っていて。雲は月を太陽を包み隠します。雲そのものは、地味だし、しょっちゅう涙を降らす、役立たず。実態すらない。「雲をつかむような話だ」と言う表現があるみたいに、誰にも掴んではもらえない。だけれど、月と太陽を包み込んであげられるのは、雲だけ。

演じるにつけ、紙の上の演技プランでは思いつか鳴った感情が沸き起こり幾たびか鳥肌しました。剣で闘うことができるわけでも、なにかの力があるわけでもない彼が、どうしても大切なひとを守りたくて、結果、彼は世界に笑いかけるのでした。これは、ある日、自然と出てきた感情でした。


恋をしました。長い永い、淡い、本当の恋。


ご来場いただいた皆様、応援くださった皆様に、
心の底から感謝しています。

共演者にも恵まれました。
僕らは再会を約束し、別れる。
そうできるために、また必死で努力をする。

この作品忘れません。
新しい日常は雪崩のように押し寄せては来るけれど、
もう、出雲は自分の一部になっているかとおもうのです。

新たな出会いに感謝します。
客席のみなさま、本当に、本当にありがとうございます。

またお会いできることを、
ことさらに強い気持ちで祈っております。

終演後の影ナレで言わせていただいた言葉ですが、

「どうかこの時間を記憶にとどめておいていただけないでしょうか。
そしてそれが、みなさまにとって、ひとつの新しい風となりますように」

ありがとうございました。


2014年5月5日
末原拓馬 (おぼんろ)