俺の大好きだったじいちゃんは天草出身だからけっこうガッツリ海の男で、

俺が小学校くらいのときだったかしら、

「従兄弟のレオ(当時、幼稚園生)と海にいくー!」とはしゃいでたらば、


いきなり目をつり上げて「気を付けろ!」みたいに言うわけ。

たくまは、陸でもスポーツ万能だったけど、これがまあ、ごめん、本当にごめんなんだけど泳ぎもかなりなものだったもんで、ちょいとムッとした。

「大丈夫だよ!」

って。そしたらじいちゃんが言うには、

「溺れられた子供に抱きつかれたら、大人でも溺れるんだ。手と足が使えなくなるから。」

って言う。

大人になると、いろんなひとに会うもんで、溺れてるひとにも、やっぱりよく会う。

「助けて!」て抱きつかれでもしたら、こっちまで溺れちゃうよせっかく調子よく泳ぎ回ってるのに!

て、それは、普通は、そう考えるべきなんだろうけど、

でも、ごめんなさい。

特殊な仕事についちゃったよ。エンターテイナーなんだオイラたち。

溺れてるひとにワラよろしくすがられて、ようやく泳ぐ意味があるんだな、って思ってるんだここのところ。

「もちろんこの場合の“ワラ”てのは、“わらい”の“わら”なのだけれども!」て、これは『ビョードロ』の台詞だけどさ。

圧倒的なエネルギーで、泳ぎ回っていたいよ。カナヅチも、沈没船から逃げ出した遭難者も、みんなみんな、宝島まで連れて行きたいよ。

そんな劇団の一員に、いまなっています。