「怖いもの見たさ」、と言う言葉があるけれど、
果たして僕は怖いもの見たくなさが勝りすぎて、
積極的に寝違えてもいいくらいの首のひねり方で目をそむけます。

みたくてみたくてがまんできない
より
みたくなくてみたくなくてがまんできない
タイプ。

ひとたび見てしまうと、
自分が元の自分とは別のものになってしまう、
なんてこと、よくあるわけで。

「若いころは、変化を恐れるからねえ」
とかって言うのは
それは変化を終えて、
元に戻れなくなった人が言うからそうなるわけで、
変化しないことがいけないだなんて、どうして証明できるんだ、
変化してしまったひとたちに。

的な居直り方にも、こっちはリーサルウェポンよろしくすがらせてもらう。

もちろん、知ってる、
気付いてる、

ふすまを隔てた向こう、
ギッタンバッタン音が聞こえる向こうであの愛おしい人は、
鶴ならまだ美しいけれど、
怪獣かも知れないし、
山姥みたいに包丁を研いでるかもしれない。

それってば呼吸が浅くなるほどに恐ろしいことだし、
その事実は知っておくべきなのも重々承知でありがなら、

でも絶対に、僕はふすまは開けないし、
障子に穴も開けたかない。

次の日の朝また美しく
「おはよう」と言ってくれるなら、
正体がイグアナだろうがダンゴムシだろうが、
構わない。

嘘。

構う。
気もそぞろになるほど構うけど、
知ってしまうよりは、
知らないほうがいい。

ゾンビになったみたいに、釈然としない朦朧感引きずりながらでも、
綺麗で愛すべき世界の中で生きていたい。

「こう生きていたい」がいつの間にか、
「こうでないと死ぬ」に変わるから、
人間てのは因果な生き物です。

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永田さんの展示会に行ったとき、銀座三越の下を歩いていたら、
ちいさなコップで試飲を勧めてくれる方がいたんです。
いただいてみたら、まあ、酸っぱい!
お酢だったんですね。
そう、お酢やさんなんです。
そこで、店員さんと仲良くなっちゃって、
もう、何か買わないわけにはいかなくなって、
店内に入って、
“オレンジお酢ビール”みたいのを飲みました。
ぜいたく。
おいしかったです。

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さて、

「怖いもの」ってなんだろう?て話ですが、
こと自分だけのことに関しては、
おそらくせいぜいが、
「生命の危機」とか、「肉体が痛いこと」、
くらいしかないとも思うわけで、

もし世界に自分1人だけだとすれば、
「怖いもの」ってのは、もっとシンプルなのだと思うんですが、

ある日出会った野ネズミをペットとして飼い始めるや否や、
ものすっごいいろいろなことが怖くなるのだと思う。

他の仲間と群れてどこかに行ってしまうかも?とか、
病気にかかったかも?とか、
まあ、当然、寿命も人間より短いわけで。

怖いですね。
そんな怖い瞬間は、みたくもないし、
知りたくもない。

独りの時より、なんだか弱点が増えるってんだから、
ああ、もう、バカだなあと思うのに、

それでもネズミを愛してしまう、

そんな低能な始末だから、

人間なんて死に絶えやがれ!とは、
僕ぁどうしても思えないんです。