少年が、独り言を言いながら歩いている

少年「ふあん!ぜうぼう!しっと!めくるめくエトセトラ!ああ、ぼくは、もう、みうごきさえもとれない、いてもたってもいられないばかりか、もう、さいあくだ。うまれてきたことを、ぜんめんてきにこーかいしてる。どうしたらいいんだろう。どうしたら、どうしたらいいのかを、ちゃんとかんがえられるコンディションになれるんだろう」

声が聞こえる。

「なんでぇなんでぇ!未来がたっぷりこんとある身空で、なーにしみったれたこと呟いてんだこのロクデナシめ!」

言葉づかいこそ破滅的に悪質だが、その声にはどこか温かい笑いのようなものが込められている。もちろん、少年はそんなことには気が付かない。

少年は声の主を探す。

と、地面に、そのちっぽけな(態度は大きいですけどね!)そいつは、いた。
 
少年「・・・ねじ?」
ねじ「ねじ。」
少年「・・・・・・なにしてるの?」
ねじ「おい、ロクデナシ。」
少年「え?」
ねじ「俺にもあるぜ?」
少年「・・・なにがあるの?」
ねじ「不安、絶望、嫉妬、めくるめくエトセトラ、さ。」

少年は、独り言を聞かれていたことが恥ずかしくなって顔が赤らんでいくのが自分でもわかった。照れ隠しに、すこし怒鳴り気味に言う。

少年「き、君は何をしているの?って、さっきから聞いてるじゃないか!答えろ!」

ねじは何も動じずに言ってのける

ねじ「伏せてるのさ」
少年「え?」

少年は思わず地面にひざをついて、ねじを覗き込んだ。
――どういうこと?

ねじ「ねじ、が伏せてる。ねじふせてるのさ。俺は、不安やら絶望やら、そういう、無限大数めいた邪悪にブラックホールみてーなもろもろをな、おしなべて、ねじふせてんだ。」

季節は春になっていたが、まだまだ冷たい風が吹いていた。
しかし、その風には甘い花の匂いも混じっていた。

ねじ「どっちみち、お前には生きる以外に選択肢はないんだ。だったら、おう。ねじふせんだよ。何もかも、目障りなもんは力技でねじふせる。背伸びなんかしなくていい、這い蹲って砂を噛んでもいいお前の力で、ぜんぶねじ伏せろ。」

少年は、そのままゴロンと仰向けに寝転がった。
車がやってきて、腹立たしそうにクラクションを鳴らした。
目の前には、空が広がっていた。

少年は、大空に向かって、大笑いをした。