神様に気を使われている節がある。

確かに、多忙で、多忙な割には報われず、ストレスで呼吸の浅い日々だけど、そんなのぜんぜん、ミカラデタサビだし、ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜん気にしないでいいのに。

昨晩も、22時までの稽古後に打ち合わせで、案の定終電だったわけだけど


……


道端に、
1000円冊が2枚落ちていた。

「あれ……」

届けるのも癪なので、色合い以外は極めてサンタクロースに似たガード下の住人に差し上げた。

「これ、落とした?」
「……ぉぉ、ありがとう。探してた」


更に駅では、

さめざめと泣く絶世の美女にナンパをされた。

残念なことに、体力もないし、なによりポケットにも小銭しかない。拾っておけばよかったら2000円、なんて思うまでもなく、

仕事以外で異性と過ごすのは決定的に好きくない。

持っていた練り梅の袋(食べかけ)を渡して、電車に乗り込んだ。

「元気だして。これ、すっぱいから」
「……は?」



山手線に揺られながら、いささか後悔していた。

お気に入りの練り梅だったのだ。あまりに疲労のたまっている自分を励ますために、なけなしの120円も投資して購入したのだった。

内容量全15粒そこらを、どうにか少しでも長持ちさせようと、「食べたい!」と思った三回に二回はグッとこらえて、

大事に大事に食べていた、練り梅だった。

あぁ……

しかも、せっかくあげたのに美女のリアクションは「……は?」だ。

練り梅が嫌いだった可能性さえある。

豚に真珠、猫に小判、美女に練り梅。

ため息がでた。

ぐらり。きゃー!
「緊急停車しまーす」

車内は急ブレーキに揺さぶられ、騒然とした。

で、この流れで、おじさんと仲良くなった。本当に、仲良くなって、「よし、おごるよ」というところまでいったのだけど、

終電車だし、
稽古中だし、
過労気味だし、
徹夜は苦手だし、

帰ってきてしまった。


たぶんもう、
二度と会えない。

 

それにしても、

落ちていた現金、

声をかけてきた美女、

打ち解けた友人、

タダ酒のチャンス・・・・


神様に気を使われた節がある。

疲労で落ち込み気味な拓馬に、

ちょとしたオヤツ程度の奇跡たち、


ありがとうございます。

なんか、受け取れなくてごめんなさい。
だいじょうぶです、
疲れているけど、
だいじょうぶ。

今日もがんばります。