神様に気を使われている節がある。
確かに、多忙で、多忙な割には報われず、ストレスで呼吸の浅い日々だけど、そんなのぜんぜん、ミカラデタサビだし、ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜん気にしないでいいのに。
昨晩も、22時までの稽古後に打ち合わせで、案の定終電だったわけだけど
……
道端に、
1000円冊が2枚落ちていた。
「あれ……」
届けるのも癪なので、色合い以外は極めてサンタクロースに似たガード下の住人に差し上げた。
「これ、落とした?」
「……ぉぉ、ありがとう。探してた」
●
更に駅では、
さめざめと泣く絶世の美女にナンパをされた。
残念なことに、体力もないし、なによりポケットにも小銭しかない。拾っておけばよかったら2000円、なんて思うまでもなく、
仕事以外で異性と過ごすのは決定的に好きくない。
持っていた練り梅の袋(食べかけ)を渡して、電車に乗り込んだ。
「元気だして。これ、すっぱいから」
「……は?」
●
山手線に揺られながら、いささか後悔していた。
お気に入りの練り梅だったのだ。あまりに疲労のたまっている自分を励ますために、なけなしの120円も投資して購入したのだった。
内容量全15粒そこらを、どうにか少しでも長持ちさせようと、「食べたい!」と思った三回に二回はグッとこらえて、
大事に大事に食べていた、練り梅だった。
あぁ……
しかも、せっかくあげたのに美女のリアクションは「……は?」だ。
練り梅が嫌いだった可能性さえある。
豚に真珠、猫に小判、美女に練り梅。
ため息がでた。
ぐらり。きゃー!
「緊急停車しまーす」
車内は急ブレーキに揺さぶられ、騒然とした。
で、この流れで、おじさんと仲良くなった。本当に、仲良くなって、「よし、おごるよ」というところまでいったのだけど、
終電車だし、
稽古中だし、
過労気味だし、
徹夜は苦手だし、
帰ってきてしまった。
たぶんもう、
二度と会えない。
それにしても、
落ちていた現金、
声をかけてきた美女、
打ち解けた友人、
タダ酒のチャンス・・・・
神様に気を使われた節がある。
疲労で落ち込み気味な拓馬に、
ちょとしたオヤツ程度の奇跡たち、
ありがとうございます。
なんか、受け取れなくてごめんなさい。
だいじょうぶです、
疲れているけど、
だいじょうぶ。
今日もがんばります。