名前と言うのは生まれた時にもらうものだと相場が決まっているように思うけれど、
名前に意味が生じてくるのはそのあとのことであって、
いつの日か自分が誰かの栄養素になっているんだなとおもったら、
その瞬間、
「そういえば、ぼくは、ずっとこう呼ばれてきた」
と初めて名前にキスしたくなる
だからどうかあなたは
おせんべいに
(それは過剰包装のそれかもしれないです)、
えんぴつに
(お尻の部分には、歯形がついてるかもしれないです)
いっぱいの焼酎に
(適当なマグカップに注がれたものかもしれないです)
マグカップに
(ディズニーランドのお土産かもしれないです)
消えゆく19時39分に
(その瞬間あなたはJR阿佐ヶ谷駅のトイレでおしっこをしていたかもしれないです)
いびつな形の今夜の月に
(146円でチューハイを買うかコンビニの前で迷って見上げたらあったかもしれないです)
それらに、
初対面でもかまいません
いちゃもんつけるみたいに、
名前をあたえてください
考え抜いた、おもいつきの、名前を
なんでこんなことを言うのかと言うと、
今日はほとんどひとに会っていなくて、
さみしいのです。
獰猛さのかけらもない白熱電球のあかりに照らされて、
舞台稽古のある日などは決して食べない、
らっきょうや、キムチを食べてみて、
その塩辛さに、
咳こんでいるのです。