雨の日には畑に恐竜が現れるようだ。

運がいいと、
次の日の朝早くになら、
明るい日差しの中で、彼女に会える。

首長竜は、女性か少年だ。
目が優しいからだろうか。

なんにせよ、ブルーシートを被った耕運機は、僕には十分すぎるほどにジュラシックしていた。
末原拓馬の瞬く間-HI3E3640.jpg
ユネスコ村の恐竜展は大好きだった。舟に乗って、恐竜の間を進んでゆく。

恐竜の中に入り組むネジやバネや歯車への気付きは欠片ほどもなく、僕は、ジュラ期の運河で僕は1億6000万年後の少年に生まれ変わる夢をみていた。

数年前、ユネスコ村の恐竜展がに閉鎖すると知り、僕は再びあのタイムスリップを試みに西武線を下った。

恐竜の絶滅をなかったことにし得たかの場所が閉鎖する。

二度死に絶える恐竜たちの間をすり抜けながら、僕は内心不安だった。恐竜の機械音が聞こえるほどに、僕の聴覚は邪悪に進化していたからだ。

僕は公演祝いでもらったアルコールをペットボトルに詰め替えて持参して、舟に乗りながら、必死でジュラ期の入り口を探していた。

隕石の衝突や倒産を待つまでもなく、恐竜はとうの昔に死に絶えていた。

なんてのは、恐れていた事態だったけど、数年前のそこには、幼いころよりよっぽど強大な、凛とした恐竜たちがいた。

僕はそのときたくさん泣いたのを覚えている。