わたしは裕福なの。


ビルゲイツには目と鼻の先をゆかれてしまっているけれど、

自分たちは蹴れもしないサッカーボールを縫い合わせている

どこぞで裸足の少年たちよりは、幾分、リッチマンだなとおもう。


「人生は運命でぜんぶ決まっているから、レイルウェイをトボトボ金メッキな闊歩してかなきゃならない、逆らえない。残念だもじゃ。ほどほどに、生きてくれぃ」

てのは好きじゃない、

し、

間借りなりにもわたし、拓馬っていうタフネスネームを背負ってるわけで。


じゃあ、生まれた境遇、育った環境、には逆らえない?

知らず知らずのうちに?歩かされている?


知るかボケ。なの。わかんない。


なのだけど、単純におもったのは、今のわたしね、

俳優に命を懸けると決心をしていて、

あ、小さいころ思ったのは、

「レイチャールズやスティービーワンダーのようになれるといわれたら目をつぶせる?」

ということだったわ。


なあ、きみも、よくよくロダンなブロンズしなきゃだ、考える人にならなきゃだ。


きみの歩いてる道は、どれくらい、どうしようもなく、あきらめられない?


一日が24時間しかない地球に抗議をしたいの。

そのうちの半分あまりを睡眠や食事、排せつに費やさなければならない肉体を呪いたいし、

残った時間の半分余りを、そのためのアルバイトに費やさなければならない社会について悪態つきたい。


わたし、あらゆる時間を、芝居に使いたい、

呼吸の数と同じだけ、せりふをしゃべりたい。


そうおもって、イライラもするけれど、


じゃあ、一日の半分どころか睡眠以外はすべて労働な、

エジプトでピラミッドの意志を運んでいたような人間に自分が生まれていたとしたら、

わたし、どしてた?

ておもうの。


リッチマンだから、やってるのか?

て。

時代も境遇も、まったく違っても、


だとしても。


ああ、わたしは、同じことをやっていたい。



そういうことを確認した、

23時過ぎの寒々しいうたた寝のなかの、ショートドリーム。


イソップめいているほどに、もの言いたげな、寓話的な、夢。