武者震いを貧乏ゆすりと勘違いされてもハンスはまったくお構いなし。
それに、事実として彼は確かに貧乏でした。

「知れば知るほど怖くなるものなーんだ??」

スフィンクスの出したそのナゾナゾに、
「大切なもの!」
と大声で答えたハンスはすぐにハッと口をつぐみ、
「じょ……浄水場の裏事情。」
と言い直しましたが、時すでに遅し、ハンスの体はフワフワと軽くなり、ついに凧になってしまいました。

大空から見下ろすと、村の様子が手にとるようにわかります。
ハンスはいつの間にか、自分がポロポロと泣いていることに気づきました。
「どうしてこんなに苦しいんだろう」

そろそろ日の出の時間です。
凧のハンスは人間に戻らねばなりません。

魔法が解ける寸前、
ハンスは薬指についた糸を奥歯で噛みちぎり、
それからすぐに人間にもどったものですから、
まるで吸い込まれるように、地面に墜ちていきました。


めでたしめでたし。