「心の不安」前年より増加 震災2年8カ月、大槌町で調査
2013・11/10付 岩手日報より
東日本大震災で甚大な被害を受けた大槌町の仮設住宅入居者で、
精神状態が震災後から好転していない人が約66%に上ることが、
岩手大教育学部社会学研究室の調査で分かった。

同じ調査を行った昨年より約8ポイント増加。
社会活動への参加や仮設住宅への訪問者が
減少している実態も明らかになり、被災者の
孤立も懸念される。
11日で震災から2年8カ月。 仮設生活が長期化する中、専門家は継続的な
心のケアと 生活課題解決の必要性を訴える。

調査では、心の変化について
「平穏になりつつある」は前年より5・5ポイント減少。
一方で「ほとんど変わらない」(前年比5・3ポイント増)
「厳しくなった」(同2・8ポイント増)と共に増加した。
暮らし向きも「被災前も厳しく、今も厳しい」(同5・3ポイント増)
「被災前も厳しく、さらに厳しくなった」(同1・7ポイント増)と共に増加。
復興の遅れや資金難などから住宅再建のめどが立たないことや、不安定な雇用
なども精神状態の悪化につながっているとみられる。
被災地では、住宅再建に向けた土地区画整理事業や高台造成などの事業が始まった一方、
人員・資材不足などによる遅れも出ており、被災者の不安は募るばかりだ。
「仮」の生活の長期化が、被災者の不安の深刻化や被災者間の生活再建の格差を生むこともある。
「外部とのつながり」になる催しへの参加者の固定化や、交通手段がないために部屋から出なくなる
住民がいるなど問題を抱える仮設住宅も少なくない。
「住宅再建の遅れなど現実的な不安が数字となって表われてきているのではないか。
心のケアなどの取り組みは必要不可欠だが、目に見える形で復興が進まなければ根本的に
はどうしようもならない。」 ≪大槌町で被災者の生活再建支援を行なう男性談≫
「窮屈な仮設暮らしが長引き、安らぎを得られていない傾向にある。 今後、震災後の
緊急雇用や公的支援が切れ目を迎えれば、被災者の孤立化が進んでしまう。 精神的ケアや
生活問題を解決する支援がますます必要になる。」 ≪調査を行なった岩手大教授談≫
震災から2年8ヶ月。
この調査で浮き彫りになった「現状」は岩手県内の他の自治体にも共通する。
震災の悲しみは癒えず、復興事業の遅れによる不安を抱える被災者の「心の復興」への
道のりは遠い。