鄙の春 里は ぽかぽかだったのに 山は 雪で 白く 霞んでいる ここは 風の通り道だから じきに 吹雪が 下りて来るよ 鼻先が 凍てつきそうだ これでも 春が来たんだよね ざすざすと 乾いた路面を 馬橇を曳いて こちらを見るまなざしが 主従 そっくりだ 一週間は またたく間に 過ぎて行くのに 春の訪れは 遠く 遠く 果てしなく 待って 待って 待ちくたびれたころに のらりくらりと 道草しながら やって来る