真っ青な秋空を眺めていたら、確か宮沢賢治が亡くなったのは9月だったはず…
1933年(昭和8年) 9月21日でした。 もう過ぎていましたね。
「目にて云う」 「疾中」より
だめでしょう
とまりませんな
がぶがぶ湧いているですからな
ゆうべから ねむらず 血もでつづけるもんですから
そこらは青くしんしんとして
どうも間もなく死にそうです

けれどもなんといい風でしょう
もう清明が近いので
あんなに青空からもりあがって湧くように
きれいな風が来るですな
もみじの若芽と毛のような花に
秋草のような波をたて
焼痕のあるいぐさのむしろも青いです

あなたは医学会のお帰りか何かは判りませんが
黒いフロックコートを召して
こんなに本気にいろいろ手当てもしていただければ
これで死んでもまずは文句もありません
血が出ているにもかかわらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
ただどうも血のために
それがいえないがひどいです

あなたの方から見たら ずいぶんさんたんたる けしきでしょうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青空と
すきとおった風ばかりです
賢治は37歳の若さで 急性肺炎で亡くなりました。
信仰心が篤かったためか、死期が近い自分をも ごく客観的に眺めています。
死とは 日に日に弱って 「さんたんたる けしき」になっていく病人を
看ている側が 辛くて切ないだけであって
本人にすれば 苦しみからの解放される 穏やかな時なのかもしれませんね。
下の2枚の写真は 宮澤賢治の家で撮影したものです。
最期の日々、こんな景色を眺めていたんでしょうね。