雲 |  阿古・二本の虹 第2章

 阿古・二本の虹 第2章

滝の中に洞窟がある。

滝の外側から落ちてくる水に限りなく近づいたとき、砕け散る小さな水玉に二本の虹は見えた。

[ 真 ]


 「阿古、結婚してくれませんか?」

「だめよ」

「なぜ?」

「理由は難しいわ。あなたは今医学を勉強している。そして立派なお医者さんになるのよ」

「ならなくてもいい」

「それはわがままよ。沖縄のおじいさんおばあさんを喜ばせなきゃだめよ。それがあなたの最後のお勤めじゃないの?」

「そうだけど」

「それをわかっているならまっとうしなきゃだめよ。それほど永く二人は生きられないわ」

「わかるけど、わからない」

「そういうことよ、生きるって。そういう渦の中で理性の方向を見れば立派になれるし、逆方向に行けば芸術家になれるわ」

「おれ、ジャズもやりたい」

「やればいいじゃない、勉学もね。あなたの才能は小さくないの。大きいからいろいろなことができるの。目の前にあるいろいろな事柄に無心でぶつかっていけばいいのよ」

「今、おれは無心で阿古にぶつかっている」

「私は別格よ」


「あの雲夏の終わりみたいだな」

「違うわ、秋の始まりをおしえてくれているのよ」