キャリアが長ければ…という訳ではない。腕っ節があればいいという事でもない。一言でいえば信頼。ファンに支持され集客力があり、かつ団体内でも認められ、さらに様々な歩みをファンと共有してきた語るべきストーリーを有していることが絶対条件である。
その点で小川という存在はアンタッチャブル。新日本参戦時は格の行使を拒み続けてきた男だが…意外にも先に突っかけていったのは小島。ブーイングの最中持ち前のブルファイトで果敢に小川へ挑んでいく。ドロップキック、ダイヤモンドカッターは甘んじて受けた感のある小川だったがコーナーからのいっちゃうぞエルボーは背後からのローで阻止。敵に背を向けるのは小川の世界観ではNGだ。
いよいよ武藤の出番。登場の一幕、小川が客席を煽ると一段と大きな歓声。が武藤は2、3度ロープの感触を確かめるお馴染みのアクションひとつで会場の視線を独り占めにしてしまう。こと魅せる部分に関しては武藤の足元に及ばないであろう小川は威嚇するような眼光でじりじりプレッシャーをかける。パンチをチラつかせながら武藤流のグラウンドにも応じてみせる。一見優勢にみえる武藤が場外エスケープ時に首をかしげたのはどんな意味が?
OHは橋本にタッチ、シャイニングよっこらしょ(?)を浴びて膝に負担がかかってしまった武藤は一旦交代。小島はやや興奮した表情、ロープ際でバチンと橋本の胸元にチョップを放ち来い来いと手招き。この挑発が実にいい。「新日本の時とは違うんだ。」小島の心がほとばしるような一瞬の仕草。ファンは橋本と小島の関係を知っている。だからこの挑発にも燃えるのだ。そしてこの辺りからアウェーの全日本勢が試合を支配し始める。
小川のロー!ガクッと体勢が崩れる武藤のこの表情。ヤバいか?ところが小川を含むこの会場全てが虚をつかれた。油断を誘った武藤は隙をついてドラゴンスクリューから十八番の足4の字固めで…この表情!喰えない男である。そして耐える姿、攻める姿全てが絵になるとんでもない存在が武藤敬司。恐るべし!
続く