しかし
橋本は再びリングに帰ってきた。
ズルイ話かもしれないが、あの引退を賭けた大一番で小川に負けたとはいえ、このまま引退してはいけないんじゃないか。とファンに思わせた時点で橋本はすんなり引退できるはずがなかったのかもしれないし、リングに未練があったということは本人も認めていた…
もう一度、いやこれからも橋本真也を見ていたい!
百万羽の折り鶴を募った米川兄弟が、全国の橋本ファンの気持ち後押しして、橋本を再びリングへ呼び戻してくれたのだ。
そして迎えた10月。橋本をこれまで何度も地獄に叩き落としてきた魔の舞台、東京ドームに橋本は帰ってきた!
第1試合シングルマッチ
藤波辰爾対橋本真也
特別レフリー
山本小鉄
試合は藤波が男気(?)を見せ、これまでの橋本の葛藤や鬱憤を吐き出してやろうと、あえて橋本の土俵で応じる構えをみせる。藤波の鉄拳を皮切りにして激しい打撃の応酬の中、終盤、橋本のハイキックが滑り込むように藤波の首筋にヒット。ステーン!とマットに昏倒し体が硬直してしまうアクシデントが発生する。
橋本は即座に戦法を切り替え正調式DDTからチキンウイングアームロック。完全に退路を断たれた藤波はギブアップを唱えるが、ここで何故か昂ぶってしまった小鉄レフリーが藤波の意思を無視して橋本に非情な指示を下す⁉︎
「折れ折れ!」
流石にそこまで鬼に徹せない橋本は、藤波の腕を極め続け、ようやくギブアップ勝ちをものにして185日ぶりの復帰戦を飾る。
橋本が東京ドームでスッキリと勝利をおさめたのは97年の1.4以来であった。
バックステージで橋本の口から衝撃的な言葉が発せられる。
「このドームに来てくれているたくさんの人たちの声が僕に届いて復帰することができました。ありがとうございました。今日からすべてが始まりますので。この2年間は、特に集中していろいろなことが学べました。僕にできることをするのがプロレス界のためだと今は思っています。敢えて新日本プロレスのレスラーという誇りを持って…独立したいと思います。」
90年代の新日本プロレスの象徴と呼ばれ、Mr.IWGPのまさかの独立宣言!
この日は選手の大量離脱をうけて死に体となった全日本プロレス代表、川田利明のジャンピングハイキックによりIWGPヘビー級チャンピオン佐々木健介がマットに沈んだ日。
気の遠くなるような長い欠場の日々の中、K−1そしてPRIDEの隆盛を目の当たりにしてきた橋本は、自ら行動を起こし、プロレス界の巻き返しを図るべく、一代決心を起こしたのだった。
まさに、時は来た…⁉︎
続く