四角いジャングルその2 | 珈琲にハチミツ

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「オラァーッ‼︎」村上は感情の赴くままに、とにかく殴って蹴って投げて、また殴る。ガードの上からでもお構いなしである。

勝敗は度外視、プロレスなんぞクソ喰らえ!自分が1月やられた事の3倍4倍、飯塚を街を歩けない状態まで追い込んでやる…目的は復讐であり相手を叩き潰すそれ一点、これこそが村上の原点だ。

一方で飯塚を支えるものは?それはプロレスメジャー団体としてのプライドか、村上が総合格闘技の実力者とはいえ、この試合がプロレスデビューの人間にホームで負けるわけにはいかない。村上の気迫に押されこれまで全くいいところなしの飯塚であったがガードポジションから何とか腕ひしぎ逆十字に持ち込みついに攻勢に転じる。続いてパンチラッシュからアキレス腱固めと果敢に攻めていく。

そしてこの試合、誰よりも後がない立場の橋本。だがリング上の雰囲気に呑まれる事なくいたって冷静…タッチを受け、なおも飯塚へ攻撃を止めようとしない村上の胸元へドスンとミドルキック。さらに後頭部へ強烈なキックをお見舞いしフェードアウトさせると、対角線へ向けて手招き。

橋本の視線の先には…小川!

試合中一歩引いた形を崩そうとしない小川をとうとう引っ張り込むことに成功。タッグマッチではあるが5度目の対決が実現する。

橋本は初っ端からローで小川をぐらつかせ、体ごと突進しロープ側へと押し込んでいく。過去何度も見られた光景だがここから橋本はフっと体を沈めると、ロープを背にし顎が上がった小川めがけカチ上げ式の頭突き!これは入った。

そのまま一気呵成に攻め込む。ひざ蹴りの連打から前回見られなかった袈裟斬りチョップ。さらに小川の巨体を宙に浮かせてバックドロップ!
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慌てた小川は一旦場外へエスケープ。橋本の勢いは止まらない。リングへ戻った小川をミドルキックで吹き飛ばすと掌打を打ち込む。後退する小川へ来い来い!と力強い挑発。

この小川を圧倒する橋本の姿に東京ドームは歓喜の渦。

しかしそう問屋は卸さない小川、前へ前へ出る橋本をグラウンドへ誘い込むと三角絞めを決めて勢いを止める。
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スタミナを消耗させられた橋本は棒立ちになったところでSTO(スペース・トルネード・オガワ)の餌食になってしまう。もしこの試合がシングルマッチであったなら橋本の敗北は決定的だ。しかしこれはタッグマッチ、マウントポジョンを取られた橋本の窮地を飯塚がドロップキックで救出する!

そのまま橋本と小川は場外戦へ、リング上は再び飯塚と村上へと移行。雄叫びを上げ村上がパンチキックの雨あられ「オラァ!ダウンしたんじゃねえぞオラ!」しかしこの土壇場で飯塚が粘り強さを発揮。体を入れ替えスリーパーで村上を切って落とす。

8分59秒裸絞めで飯塚のTKO勝ち!

ようやくUFOに一矢報いた新日本プロレス。
この結果にご満悦の藤波社長「見てください!飯塚のあの顔を!これが…」「ア゛ァー⁉︎」藤波を遮る辻アナの悲鳴。納得のいかない小川が飯塚を投げ飛ばす。やんやの歓声のなか橋本と新日セコンド陣も加わりリング上は再び大乱闘の修羅場と化した。

「ふざけんじゃねえよ。こんなんで勝ったと思うなよ!」捨て台詞を吐き村上を介抱しながら引き上げる小川。

村上の返り討ちに成功し興奮状態の飯塚は珍しくマイクアピール🎤「オォーイ村上ィ!◯×△◻︎◯×△◻︎…‼︎」※聞き取り不可

橋本もそれに続く。本部席の猪木に対し改めて小川戦を要求する。「猪木さん。もっともっとカード組んでください!新日本の強さ俺らが見せていけないといけないんすよ!」
「二回や三回負けたぐらいじゃ…引っ込めないすよぉ‼︎」

相変わらずSTOの対応に不安をのぞかせたものの減量効果でスピードを増し、ロープ際戦術が功を奏したこの試合の橋本。さらに特筆すべきは前へ打って出る姿勢…ついに一年前の悪夢から脱却に成功した橋本であった。

「…暗黙を破られて、結果的に俺は恐怖心を植え付けられたんだよ。簡潔に言ってしまえば、急所狙い。俺たちは相手にどんな遺恨を抱いていても、その試合がプロレスとしてマッチメイクされたら、どんなことがあっても急所は狙わないわけよ。わかる?それが俺たちのプライドだったりするんだ。でも、小川はそんなこと関係なしに攻撃してきた。例えば、目ね。眼球なんて鍛えようがないんだから。そんなとこ攻撃されたらたまったもんじゃない。いいか、目の付近じゃないぞ。眼球、そのものに攻撃を加えてくるんだからな。」

「…肉体や精神が怖さを覚えてしまうと、なかなかね、自分の気持ちを奮い立たせるのは難しい。」

「一年だね。恐怖心を払拭するのに一年間かかったよ。-中略-三度目と翌年のタッグ戦を比べてみると、俺の闘い方というか対処の仕方が全然違うでしょ。あれはさ、技術的に俺が向上したから力強く見えたとかじゃないんだよね。結局、完全に精神的なもの。恐怖に打ち勝てたからこそ、どんどん前に出れた。-中略-まあ、こんなことを俺が口にすると、猪木さんは『そんなこと当たり前じゃねえか。今さら何を言ってるんだ。レスラーはつねにそういう心構えでなきゃいけねえんだ』となるんだろうけど(笑)でも、引退した人はなんとでも言えるしさ(笑)」

「…俺は自分の中で問うたもん。お前は二番手でいいのか?いや、絶対何がなんでも一番がいい。そうでなければ闘う意味がない。その願いが自分の中に巣食っていた恐怖心を砕いたのだと思う。」


橋本の腹は決まった!そしてシングルでの小川へ真のリベンジを。それなくして栄光は取り戻せない。橋本と小川の死闘ロードはついに最終局面を迎えはじめていた。

続く。