えぞたぬ担当です。 

昨日の天気は雨のち曇り。 

昨日の仔たぬきのご飯は一頭あたり、子犬用ミルク200ml程度、お肉(馬肉)20g程度、ふやかしたドックフード20g程度でした。  

フンの状態は、みんなミルク便(柔らかめ)と少し固形(離乳食も食べているため)でした。

 

ブログを書いている間に寝落ちしましたので上記報告は前日の内容です。

※こたぬきのお散歩は概ね午後に10分程度行っています。密を避けるため告知はしません。会えたら運が良い感じです。

 


さて、

先日は、母たぬきへのご心配や、父たぬきの冥福を祈って下さり、ありがとうございました。

野生動物の「命」について興味を持っていただけたようですので、今日はそんなタヌキたちを取り巻く環境についてお話したいと思います。

(ちょっと長いのでおうちで読んでください)


 

目次

1、巣立ち雛

2、餌付けと感染症(疥癬:カイセン)

3、ロードキル(交通事故)

4、タヌキの生存戦略

5、さいごに…

 


1、巣立ち雛

(春から夏にかけて見られるカラスの巣立ち雛。飛ぶ練習中に地面に落ちている事もあるが、一度人が保護すると親は近寄らなくなってしまいます。)



エゾタヌキは気質的には臆病な生き物の部類だと思います。

今回保護された方の話では、母たぬきはその場にはいなかったと聞いていますが、どこか遠くで見ていたかもしれません。

実はこのような話はよく聞きます。

(園内。どんぐりの家(エゾリス等飼育展示)内にある掲示物)

 

この時期十勝管内の方から、野鳥やエゾリス、エゾモモンガの子供が地面に落ちていると連絡があり、動物園へ連れてこられることがあります。


保護していただける気持ちはとてもありがたいですが、母親の手から離れた野生動物が育つのはなかなか難しいです。

自然界は厳しく、生命力が少ない子供を親が手放すといった取捨選択もあります。

もし道端などで、子供の野生動物を見つけたときは、そっと見守り、自然の選択に任せていただけると幸いです。


また、タヌキのつがいは一夫一妻で、つがいを変えることは少ないと聞いています。ですが、今回のようにパートナーを失くしてしまった母タヌキは、自然界の法則にのっとり、新たなパートナーを見つけ、繁栄していくことを願うしかありません。

これ以上、野生に生きる彼らに干渉する事は出来ないためです。


当園に来た子供たちは責任をもって飼育していきたいと思っています。

 

(あんちゃんの匂い付きクッション、こたぬき達はおっぱいを探してかき分けてました。

今はよだれなどで、げちょげちょです。)


 

2、餌付けと感染症(疥癬症)

当園がある緑ヶ丘公園内では、野生のエゾリスへの餌付け行為も見られます。

野生のエゾタヌキやキタキツネでもそうですが、餌付けによって人間との距離が近づくことで、感染症へのリスクも高くなってしまいます。

(当園内:小獣舎(エゾリス等飼育展示)にある掲示物)

今回こたぬき達は、保護という形で当園に来ましたが、本来人と野生動物達とは棲む世界が違うため、見かけても触れずに見守っていただけたらと思います。

 


3、ロードキル


(昔、上富良野で、道路を横断するたぬきを見ました。鞠のようにポンポン跳ねながら逃げていくのを停車し撮影した様子です。)


森の奥深くに生息するエゾタヌキですが、森を分断した道路を横断中に車に轢かれてしまうことが多いです。

山道や、田舎道を走るときは「タヌキやキツネが出てくるかもしれない」と思って、安全運転に気を付けてください。

(ちなみに北海道の高速道路に動物侵入防止柵がほぼ全てについているのは、タヌキが高速道路内に侵入し、避けようとした方が亡くなってしまったことが起因と聞いたこともあります)


タヌキやキツネも車と衝突すると命を落としてしまいますが、体重150キロ以上のエゾシカなどと衝突すると、シカもヒトも車も無事では済みません。お気を付けください。

 


4、タヌキの生存戦略

(小さくても足は立派)


野生動物の世界は厳しく、タヌキの生存戦略は、「たくさん歩いて、たくさん増えて、なんでも食べる」かなと思っています。
先日NHKの「ダーウィンが来た」でタヌキは「努力家」と言われていた事を聞きました。


タヌキの体のつくりを見ると、キツネのように速く走り狩りをするつくりでもなく、アライグマのように指が分かれていて、
縦横無尽に移動することが得意なわけでもありません。


ひたすら歩いて地面にあるご飯を探し、子供をたくさん産み(一度に3-8頭ほど、性成熟は10カ月程度)死んでいく。

飼育個体のタヌキの寿命は10才超えですが、野生下では5から6年ともいわれ、世代交代が早い動物のようにも思います。


また、ちょっとしたきっかけで体調を崩すと、ヒゼンダニによる疥癬症にかかり死んでしまいます。

(よく人家の近くなどで見られるエゾタヌキが毛が抜けてみすぼらしくなっているのは、疥癬症にかかって体力が落ち、餌も探せなくなって人の領域まで出てきてしまっているためと思います。)

(保護されてから飲んだ子犬用ミルク缶。猫用か、犬用か悩み、イヌ科で判断しました。近所のホーマ○クさんにはいつもお世話になっています)

 

さいごに...


この時期はエゾタヌキの子育てシーズンなのですが、このように不幸な事故で親を失うこともあれば、歩き出した若い個体が車に轢かれることもあります。(何度か当園にも車に轢かれた個体が保護されてきますが、ほとんどが背骨等を骨折し、亡くなっています)

最近読んだ本の「タヌキまるごと図鑑 作:盛口 満 大日本図書株式会社:https://www.lib-obihiro.jp/TOSHOW/asp/WwShousaiKen.aspx?FCode=1368682:帯広市図書館」では、昔のタヌキの天敵は狼と書かれていましたが、「エゾオオカミ」が絶滅した今、次の天敵は「人間」になっています。

お互いに歩み寄れる落としどころをこれからも考えていきたいと思います。


えぞたぬ担当より