アンデルセンの「最後の真珠」 | 宝石★Wonderland

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こんにちは。





またお目にかかれて嬉しいです。
いつも本当にありがとうございます。






昨日は、傷つきやすく繊細な物質である真珠が、

そのもろさをも含めて

貴重で価値のある宝石とされていることをお話しました。


繊細さやはかなさが一種の憂いを持ち、

より美しく感じられるのでしょう。


そんな真珠の本質を描いたような物語を紹介します。

 

ハンス・アンデルセンの「最後の真珠」です。


 

 

 




《最後の真珠》

あるところに裕福な家族が暮らす家がありました。
幸いなことに、今まさに、この家にとって跡取りとなる赤ちゃんが

誕生しました。
赤ちゃんの誕生を祝って、妖精たちがプレゼントの真珠を持って駆けつけました。
赤ちゃんの襟元には、細かい網目でつながれた

いくつもの真珠が輝いています。
その真珠には、友達、裕福、健康、など、あらゆる幸せの元が詰まっています。


この家の守護神はそれを見て満足げに言いました。
「これで妖精たちは皆、赤ちゃんに真珠を持ってきた。

すべての幸せはプレゼントされ尽くされた訳だ。」


すると、赤ちゃんの守護天使がいいました。
「あと一つだけ足りない真珠があります。

でもそのうちに必ず妖精は真珠を持ってやってきますから

それまで待っていましょう。」


けれど守護神は待てません。
妖精の居場所がわかるという守護天使に、

その場所まで連れて行ってもらうことにしました。


守護天使が連れて行ったのは、

町外れにある古びた小さな家でした。
部屋の中ではお父さんが子供を膝の上に載せていました。
この家では、たった今しがた、お母さんが亡くなったのでした。
子供たちとお父さんは悲しみに打ちひしがれています。

この部屋の隅にはいつもお母さんが座っていた小さな椅子があり、そこに妖精が座っています。

「最後の真珠を持っているのは、この妖精です。」と

守護天使は言います。

見ると、椅子の上の妖精の目からは一粒の涙がこぼれ、それが美しい一粒の真珠と変っていきました。

守護天使は、裕福な家の守護神に更に言います。
「あの真珠は悲しみが詰まっているのです。
ひとは悲しみを知ることで本当の幸せが解るようになるのです。
人生に無ければならない最後の真珠なのです。」
    
《おしまい》




悲しい出来事は、否が応でもいずれ必ず訪れるものなのに。

こちらからわざわざ迎えになど行く必要などないのですけれどね。

 

 


デンマーク生まれの作家、アンデルセンはたくさんの苦労と挫折を経験した人生でした。


恋も実らず生涯独身、なかなか才能を認められずお金の苦労も絶えず、精神病の発症の恐れすら抱えていました。


それでも彼のお葬式には、

お金持ちの貴族から街の片隅の浮浪者まで、

老弱男女あらゆる人が大挙して押し寄せたと言います。
それは、アンデルセンが幅広い層の人々に愛された証拠でした。



この物語はアンデルセンが生涯追求した、

一部の裕福な人々の陰で忘れられた存在の、貧しい人々への愛情が詰まった物語です。

 


真珠で表される貧しい人々の悲しみは、

決して裕福な方々にとっても無縁ではないことを

訴えているように思います。