三軒茶屋にあるシアタートラムで「アット・ホーム・アット・ザ・ズー」(第1幕:ホームライフ 第2幕:動物園物語)を見てきました。

堤真一、小泉今日子、大森南朋の共演という大変、魅力的な配役、演出は千葉哲也さんです。

原作は、「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」のエドワード・オルビー。(翻訳・徐賀世子)

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ただ、作品は少しややこしい。彼、オルビー(1928年~)の30歳の時のデビュー作「動物園物語」(59年ベルリン、60年ニューヨーク初演)は不条理な世界を描いた傑作といわれ、度々日本でも上演される。短いので学生演劇などでとくに好まれるらしい。

ところが8、9年前になってオルビーさん、この話の前段階を思い立ち、04年「ピーター&ジェリー」を発表。07年に「アット・ホーム・アット・ザ・ズー」と改題してオフ・ブロードウェイで上演となったのである。80歳近くになってもまだ、自分の作品に手を加える。さすがに、戦後アメリカ演劇の最高の劇作家である。生き方が、前衛で、不条理を地でいってる気がする。

めたぼっちのライフログ

「第1幕:ホームライフ」登場人物は二人。ピーター(堤真一)とその妻アン(小泉今日子)。

「話があるんだけど」妻が夫に、言葉をかける。夫は本を読むのに夢中で気がつかない。教科書の出版社役員の夫、アッパー・イーストサイドの住宅街、二人の娘に猫とインコとの暮らし。妻は夫を愛してると思う。でも…何かが足りない。心ここにあらずの受け答えを繰り返すピーターに、次第にアンは挑発的な話題を投げかけていく・・・。

「第2幕:動物園物語」登場人物は二人。ピーター(堤真一)と見知らぬ男ジェリー(大森南朋)。

「動物園に行ってきた」見知らぬ男が突然、ピーターに話しかけてくる。妻との会話の後、本を片手にセントラル・パークに来て、いつものベンチでいつもの読書をしてるときのことだ。その男はジェリーと名乗り、アッパー・ウエスト・サイドに住んでいると一方的に喋りまくる。やり過ごそうとするが、いつの間にか自分のことも話てしまうピーター。やがて、ジェリーは犬の話を延々と語りはじめ様子がだんだんおかしくなっていく・・・。

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居心地のよさそうなソファを中心に、交わされる夫婦の会話から、公園のベンチへの舞台が転換していくのが、面白かった。

なにしろ、二人芝居が、延々とつづく。ピーターの堤さんは、ともかく受けの演技専門で、とくに2話では、ほどんど大森さんの一人芝居だ。このあたりのバランスの悪さが、作者のオルビーさんとしては、もう少し、ピーターの話を書きたいと思ったのではないかと思うのだが・・・。

でも1幕が加わると強烈な不条理劇でなくなちゃうみたいです。ディスコミニュケーション劇?なんか、かえって解りづらい劇になっちゃたような気もする。

セントラル・パークを挟んで、アップタウンのイーストサイドとウエストサイドがある。あまりにも違う生活をしている(今じゃ、ウエストサイドも高級住宅地らしいが)ピーターとジェリーは、そのちょうど中間のベンチで出会う。

そして、わけの解らないジェリーの深い孤独と狂気に不条理にも巻き込まれていく、常識人のピーター…。と思いきや、その前段階で、やはり愛するものと暮らしてるはずなのに、孤独感に襲われる妻アンによって、すでにピーターも得体の知れない衝動を抱えていることが、暴かれている。

アンもジェリーもほんの少し、ピーターと関わって、「ちょっとした幸せな気分」を確かめたかっただけかも知れないのに、ピーターったら・・・。鈍感というか、結局、善き人間であれ、善き生活の送れる人間であれと、真面目に努力してきたピーター、鈍感力を磨いて来た堤さんが一番の悪人ということ? ちょうど北野武さんの「アウトレイジ」を見てきたところなので、こちらも結局、全員悪人?ということなのか・・・。

ん~、けっこうテーマがぼんやりしていて、体調が悪いとちょっとついていけなくなる。とくに私、連日いろいろなことが重なり、睡眠調整がうまくいかなかったために、一番の山であろう犬の話あたりは、寝落ちしそうになってしまった。

でもとにかく、この3人を生でしかもかなりの至近距離でみることができるのは、それだけでうれしいのだわ。ピカピカのスターだからね。

堤さんと小泉さんの夫婦は、本当に「絵」に書いたような美男美女で知的で裕福なカップルで、「お似合い」というやつだ。際どいSEXがらみのお話も、ち~っとも下品じゃない。私は、小泉さんをみながら、強く強く、再ダイエットを誓ったのだわ。以前にも足に惚れた話はしたけど(「楽屋」)、全身のシルエットもキレイなんだわ(当たり前ですが)。

堤さんも特に汚さなくて、いい役なので、高めのカジュアルを着る高級取り編集者だから、まあ、普段着の感じが、ほんまいい男だわ。やっぱり、うれしいよお、小さな劇場は、なんだか大きく見えるし・・。

一方、大森さんは、もし「ジェリー」とういう人間がいたら、絶対こんな風体だろう、という完璧な姿で現れる。そこに「ハゲタカ」だの「武市さん」だのいくら見つけようとしても見あたらない。「自分の主張を消し去った演技ができる」というのはハゲタカのプロデューサー氏の言葉ですが、まっことここにはジェリーさんしかおりません。

堤さんとは、まったく違い相性も悪そうだけど、そういう役柄だからね。絡まれたら嫌だけど、明からさまに拒否もできない、とくに知識人はね。そんなところに、どんどんつけ込む。

嫌な奴だけど、私はただのミーハーなので、私に絡んでほしいなあ、とつくづく思うめたぼっちでした。

「おい、めたぼっち、体調は整えろよ」と
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