早稲田大学電子政府・自治体研究所(東京都新宿区)はこのほど、「第16回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2021」を発表した。デンマークが1位を獲得し、日本は前回の7位より2つランクを落とし、9位となった。2位は「シンガポール」、3位は「英国」だった。
同調査はICT先進国64カ国のデジタル政府の進捗度を、10指標(「デジタル・インフラ整備」「行財政最適化」「アプリケーション」「ポータルサイト」「CIO(最高情報責任者)」「戦略・振興」「市民参加」「オープン政府]「セキュリティ」「先端技術」)で多角的に評価するもので、今回が16回目。
●1位はデンマーク 理由は?
デンマークは、18年以来の1位。コロナ対策として早い段階から情報インフラを活用した「コロナパス」と呼ばれるデジタル証明を整備・発行し、EUによる互換性のあるデジタルグリーン証明書で導入の先陣役を担った。コロナの検査体制構築の迅速性や、ユーザー目線でシステムデザインを構築することで、国民が検査を受けやすい制度を設計したことで高評価を得た。10項目による分析結果でも、ほぼ全項目において世界トップにランクインした。
2位はシンガポール。デジタル化は同国の国家戦略の中で最重要課題と位置づけられている。2025年を目標とした製造業の競争力維持や革新的技術の研究開発に約2兆円を投じるなどDX(デジタルトランスフォーメーション)の強化がうかがえる。コロナ対策としては、全事業者にSafe Entry(入退場記録システム)の導入を義務化し、感染者や濃厚接触者の特定を効率化。感染抑制に成功した。同時に、行動の可視化による軽犯罪の減少や治安維持向上にも効果がみられ、安心、安全な社会の構築に寄与したことが国民や、高齢者をはじめとするデジタル弱者からの信頼を得たとみられる。
3位の「英国」では、医療を一手に担う国営の国民保健サービス(NHS)で遅れていたDXがコロナ禍で一気に進んだ。集中治療室(ICU)内では、医療チームが意思疎通のため専用アプリを導入したほか、低所得者向けの「ユニバーサル・クレジット」には約100万人が申請。納税情報から支援対象者を割り出して連絡し、申請があればすぐに給付金を振り込めたことが奏功したとみられる。
●日本の評価は?
同研究所は、日本の課題と構造的弱点として「官庁の縦割り行政、DXやスピード感の欠如」「電子政府(中央)と電子自治体(地方)の法的分離」「地方公共団体の財政、デジタル格差」「デジタル政府・自治体の推進役となるICT人材不足」などがあると指摘する。
そうした課題を解消するため、同研究所は「将来を見据えたデジタル活用により官民連携やデジタル・イノベーションの推進で行政のコスト削減や効率化により、国民生活の利便性向上に寄与すべき。強力で迅速なデジタル化による新生活様式へのシフトと行政DXの推進、デジタル庁は個別ではなく中央と地方の全体最適を目指すことが必要だ」と提言。「3大先端技術『5G、AI、8K』の統合力がデジタル・イノベーション成長戦略の基軸となり、その点でデジタル庁は司令塔として期待される」とした。
トップ10のその他の順位は、4位「米国」、5位「カナダ」、6位「エストニア」、7位「ニュージーランド」、8位「韓国」、10位「台湾」だった。新型コロナウイルスへのデジタル対応がランキングに大きな影響を及ぼした。