がん攻撃に新たな武器! 変わる放射線治療 日本初上陸「1・5T MRリニアック」とは。 | ★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

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MRIでリアルタイムにがんの画像を見ながら治療を行える画期的な装置

© zakzak 提供 高エネルギーの放射線装置「リニアック」と、1・5T(テラス)の高磁場を用いて鮮明な画像を得られるMRI装置を一体化させた画期的な装置である。世界で37台(2020年時点)が導入されたばかりの新しい治療装置である。日本では、2021年、千葉大学医学部附属病院が日本で最初に導入し、同年12月から治療を開始した。
 

人気マンガを原作とした昨年、反響を呼んだフジテレビ系ドラマ「ラジエーションハウス2~放射線科の診断レポート~」では、放射線科の診断技術や装置が見どころだった。がん治療の柱のひとつ放射線治療も近年大きく躍進している。身体への負担軽減や難治性のがんに対する新たな武器として注目の「1・5T MRリニアック」が、2021年に日本に上陸。この装置を日本で初めて導入し、がん治療をスタートさせた千葉大学医学部附属病院放射線部の宇野隆部長に、最新の放射線治療について聞く。

 

放射線治療と一言でいっても、X線やγ線、陽子線や重粒子線などさまざまな種類がある。100年以上も前にX線が発見されて以来、放射線治療装置は、「いかにがん細胞だけを死滅させるか」をテーマに発展を遂げた。中でも、リニアック(直線加速器)は、X線の高エネルギー照射線装置として、放射線治療の柱になっている。2008年に保険収載された強度変調放射線治療(IMRT)も、リニアックの一種で、形が多種多様ながん細胞だけを狙い撃ちに治療を行えるのが利点だ。そんな放射線治療を一段と向上させるのが、MRリニアックによる治療である。

 

「従来のリニアックでは、治療中にリアルタイムで患部を見ながら行うことはできませんでした。そのため、微細な照射位置のズレをいかにカバーするかが、治療計画では求められるのです」

 

こう話す宇野部長は、長年、画像診断技術の進展や先端医療機器を用いた放射線治療の向上に尽力している。高精度かつ低侵襲の放射線治療を実現し、その教育と普及にも力を注いできた。

 

「MRリニアックは、MRI(核磁気共鳴画像)で、リアルタイムの画像を見ながら放射線治療を行うことができます。まさに、私たちが求めていた装置ともいます」

 

一般的なリニアックの放射線治療は、最初にがんの位置をCT(コンピューター断層撮影)検査で確認し、治療計画を立てプログラミングすることが不可欠である。がん周辺の組織をなるべく避けるように、がん細胞の形状に合わせて照射の角度や強さを調節していく。形状はがんによって異なり、照射の場所が複雑なことも少なくない。

 

「CT画像でプランニングをしても、実際の臓器は動きます。呼吸や心臓の鼓動、腸のぜん動運動によって、臓器は動きがんの位置もズレます。その動きを想定しながらプランニングしなければなりません」

 

治療を行う前にプランニングするのはMRリニアックも同じだが、計画通りに正確に照射が行えるかどうか、MRIの画像でリアルタイムに確かめられるのが大きな利点だ。結果、治療期間の短縮や治療臓器の適応拡大など、メリットが大きいという。あすは、集中照射と短縮可能な治療期間について紹介する。 (取材・安達純子)

 

■宇野隆(うの・たかし) 千葉大学大学院医学研究院副研究院長、画像診断・放射線腫瘍学教授。日本放射線腫瘍学会専務理事。1988年千葉大学医学部卒。国立国際医療センター放射線科勤務を経て、2012年より現職。