「日本一小さな缶詰工場」新商品次々に 新鮮なサバ缶が大ヒット。 | ★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

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 「日本一小さな缶詰工場」を自認する社員9人の会社が、岩手県陸前高田市にある。地元特産の食材を使い、新商品を次々と開発。東日本大震災で打撃を受けた水産業の創造的な復興に一役買っている。

 

 「いいサバが入ったぞ」。11月上旬のある朝、大槌町にある「たかのり海産」の佐々木隆治さん(77)から、「タイム缶詰」の吉田和生社長(61)に連絡が入った。吉田さんはこの日の工程を急きょ変更。午後からサバの水煮缶を作るラインを設けた。

 

 運ばれてきたサバは約700キロ。大手の工場なら少量で扱わないが、タイム缶詰では十分すぎる量だ。吉田さんも入って8人で手分けしてさばき、水洗いする。翌日には約3千個の缶詰ができた。

 大量生産のサバ缶は、冷凍したサバから作ることが多いが、ここでは新鮮な生サバを缶詰にする。値段は1個432円と大手の倍ほどだが、昨秋からこつこつ作って道の駅などに置くと大ヒットし、すでに2万缶以上を売った。

 

 タイム缶詰は2005年創業。震災で陸前高田市の海岸近くにあった工場が全壊し、内陸に再建した。吉田さんは東京出身で食材宅配会社に勤めていたが、復興支援に来たことや、一緒に商品開発をしたことが縁になり、昨年10月に専務に就任。今年4月から社長を引き継いだ。

 

 それまでの交流から三陸の産品の魅力を知っており、「水産業の復興に役立てるのでは」と、海産物や調味料を使った新製品を作り、ご当地グルメの商品化にも協力。開発した製品は20種類近くに上る。

 

 特に広田湾漁協とはつながりが深く、昨年発売した「椿(つばき)島定置網サバ水煮」は、2千缶がすぐに売り切れ。今年11月からは、希少な石陰貝のアヒージョの缶詰を売り出した。

 

 たかのり海産も家族経営の零細企業だ。小さな漁港で取れたサバは、大きく良質でも少量のため引き合いはあまりないが、佐々木さんは目ざとく買い付け、自ら小型トラックを運転して、工場に直送する。「漁協や業者が小回りを利かせてネットワークを作れば、いい物が作れる」と話す。

 

 タイム缶詰には、「ジビエを缶詰にしたい」「米の缶詰はできないか」と水産物以外の依頼も次々と舞い込んでいる。吉田さんは「缶詰はいろいろな食材でチャレンジする機会を提供できる。地元の魅力を詰めて、多くの人に届けたい」と試作に忙しい。(東野真和)