埼玉県加須市、栃木県栃木市、群馬県板倉町が接する「3県境」を訪れる人が増えている。要因は、どうも先月に起きた不幸な出来事のようだ。
3連休最終日の20日。渡良瀬遊水地近くの「道の駅かぞわたらせ」(加須市)から、「3県境」を目指して歩く人の流れが続いた。「あれ以来、よく場所を尋ねられますね」と駅の関係者が言うように、数組の観光客に話を聞くと「事件をニュースで知って来てみました」という言葉が返ってきた。
平地の3県境は全国でも珍しく、3県を一またぎできるとして人気の高いスポット。それを示す真鍮(しんちゅう)製プレートがなくなっていることが8月17日に分かった。何者かに持ち去られたとみられ、警察に被害届も出されている。昨年6月には腰掛けなどが隣接の田に投げ込まれたり、記念スタンプがなくなったりした。相次ぐ心ない行為に3市町の担当者らは心を痛めていた。
プレート盗難に最初に気づいた栃木市渡良瀬遊水地課の青木聡さん(37)の話では事件後、SNSなどで「3県境」の書き込みが増えたという。「つらいことが続きましたが、心救われる出来事もありました」
プレートを製造したメーカー、設置を担当した測量会社が「無償で再設置をさせてもらいたい」と申し出てくれた。早ければ10月中にはお披露目の予定という。20日に神奈川県藤沢市から家族で訪れた春成元樹さん(52)は「ニュースを聞いて悲しい気持ちになりましたが、今度は新しいプレートを見に来ます」。
3市町は現地で式典を開き、両社に感謝状を贈る考えだ。(猪瀬明博)
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