木造カバーで覆われた自販機はなぜ生まれたのか? 世界遺産「石見銀山」にて。 | ★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

★マエちゃん噴泉記★【大阪DE農業】

● DIY 【 だめでも いいから やってみる 】 ● 大阪DE農業

 白、赤、青――自動販売機のメジャー色といえばこの3色ではないだろうか。その視認性の高さから、コンビニがない山奥や街中でも重宝される存在といえるだろう。一方、その視認性の高さが「街並みに全く馴染んでいない」とあだになることもある。

 

 島根県の世界遺産、石見銀山にある自販機が「景観に合いすぎている」と話題になっている。石州瓦の屋根や平屋の家など当時の街並みの中に存在する自販機は、飾り彫りが施された木造のカバーにすっぽりと覆われているのだ。

 

 なぜ石見銀山の自販機は木製カバーで覆われているのだろうか? 設計を担当した「ゆまにてく」(島根県大田市)の渡部孝幸氏に経緯を聞いた。

●発案者に聞いた

 

――なぜ石見銀山の自販機は木造のカバーで覆われているのでしょうか?

 

渡部: 石見銀山は、1987年に国が選定する伝統的建造物群保存地区に選ばれました。城下町、宿場町、門前町など全国各地に残る歴史的な集落・街並みの保存が図られるようになり、ここ大田市でも街の外観を直していくプロジェクトが始動しました。

 

 その中で、自販機の派手な色が古い街並みに合わないということから木造のカバーで覆うことになりました。

 

――木造のカバーにたどり着くにはどのような試行錯誤があったのでしょうか?

 

渡部: 自販機はもともと通りに面したところに置いてありました。景観を守るために撤去して街の端のほうに置く話が出たものの、置ける場所もなく結局元の場所に残すことになりました。

 

 最初は自販機事業を展開している会社に相談して、自販機を塗装するアイデアも出ていたのですが、前例がなかったので応じてもらえませんでした。そこで知恵を絞り、街並みのデザインを取り入れた格子をかぶせるアイデアが浮かびました。

 

●屋外機や電気メーターなどの”脇役”にも苦心

――実際に木製カバーを製作するのにどのくらい費用や時間がかかるのでしょうか?

 

渡部: 期間は1週間から10日程度です。私が自販機の寸法を測り、図面化しました。実際に製作するときには「角をどの程度斜めのするのか?」「被せる大きさはピッタリがいいのか、余白があったほうがいいのか?」など大工さんと相談しながら進めました。特に、自販機の特徴である色をできるだけ目立たなくするのに苦労しました。

 

 最終的に全体をすっぽりと覆い、それぞれの商品だけが見えるように小窓のようなデザインにしました。商品の出し入れもしやすいようにカバーの前面は開くように設計しています。

 

 また、材料には杉を使っています。松やヒノキほどの強度はありませんが、軽いので採用しました。仕上げは柿渋、ベンガラ(赤色顔料)、墨を調合して塗り、景観に馴染むよう工夫しました。もちろん定期的な塗り替えは必要ですが、風食や防水効果も多少は期待できます。

 

 費用は材料から加工、現場設置までの手間を概算して30万円ほどだったと記憶しています。自販機を展開している会社も完成品を見て、同じ取り組みをやってみようと思ったらしいのですが費用を知って諦めたと聞きました。外壁を塗ってしまう方が安上りですからね。

 

――当時から改良などには取り組んでおられるのでしょうか?

 

渡部: 最初はカバー全体が木造でしたが、2代目のリニューアルのときは屋根を鉄板にしました。景観上は木造が望ましいですが、傷むスピードを抑えるためです。今は質の高い塗料もたくさんあるので木造でもできると思います。

 

 また、改良ではないですが、自販機以外にも景観を損ねる要素が多く苦労しました。伝統的建造物群保存地区といっても、実際に人が生活している街なので屋外機や電気メーターなどが邪魔になってきたりします。設置されている場所によってもデザインが異なるので、どう街に馴染ませるか苦心しました。

 

――当時の反響や振り返っての思いを教えてください

 

渡部: 好評だったと思っています。他の地区からも木造カバーに関する問い合わせが入りました。

 自販機だけでなくちょっとした生活機器なども景観を損ねる存在になりうるのは面白い発見でした。街並みを守りながら、街が盛り上がっていけば嬉しく思います。

 

 

 

 

○ワタシ想います。

 地域に溶け込む自販機が、自己主張するのは、

地域の活性化に寄与するかも。独自性を主張する気質がいい。