日本語研究者に聞いてみた。
先日大阪に出張した際、耳に残る関西弁に出くわした。「知らんけど」だ。仕事相手にこれからの方針を尋ねたり、タクシーの運転手とうわさ話で盛り上がったりする中で何度も聞いた。生まれも育ちも関東人の筆者(私)は「結局知らないのかよ(汗)」と戸惑いを覚えたと同時に、このワードが使われると場の雰囲気がパッと明るくなるのを感じた。
お笑い芸人の「かまいたち」の冠番組でも題名に使われ、今やSNSの急上昇ワードにも出てくる「知らんけど」。一体どんな意味で使われているのか? その謎を解明すべく、日本語研究者で大阪大教授の金水敏氏に話を聞いた。
◆関西出身の友人「僕らにはなくてはならないもの」
まず「知らんけど」を使った例文をいくつか出してみたい。
➀「菅野が巨人残留するようだけど、来季は藤浪が完全復活するから阪神がV奪還や! 知らんけど」
②「フワちゃんのため口は絶対キャラやって! 知らんけど」
③「明日は晴れかもしれへんし、雨かもしれん。知らんけど」
3つに共通するのは、結局の所は知らないということだ。真相はどうなのかはさておき、積極果敢に会話を展開して場を盛り上げようとする意欲がにじむ。関西出身の友人に聞いてみたところ、「(「知らんけど」)日頃からあまりにもよく使うため意識していなかったけど、僕らの会話にとってはなくてはならないもの」と受け止めていた。
関西には街の至る所で話芸に長けたセミプロのような方がたくさんいるんです。日頃から会話の端々で話のオチが求められる状況の中で、正確性よりも相手を楽しませようとすることに重視してしまう人は少なくありません。実はよく知らないことでも面白おかしく話を展開して最後に『知らんけど』と付け加えることで、免責を得たい意思表示でもあると言えます」
○大阪人のワタシ想います。
辛気臭い話より、笑える話が好きな人が多い。
関西のおばちゃんが、飴玉をもっていて、場を和ませる文化。知らない人と友達感覚で付き合おうとする気質。飴を貰ったら嬉しいだろうなと考えています。知らんけど。