グローバリズムの頂点に立つアメリカは、
肥沃で広大な北米大陸を舞台に
農業の大規模化・企業化をすすめ、
早くから工業国であるとともに巨大な農産物輸出国になった。
一方、西欧諸国は1970年代の後半以降、
農家を大幅に減らしながら企業的大規模経営を
選別的に育成し、大型機械や化学肥料など
近代的技術によって穀物の増産を図った。
こうしてアメリカを中心にその後西欧や、
熱帯雨林の開発を進めるブラジルなどが加わった
企業的大規模経営と穀物メジャーによる世界戦略は、
アジア、アフリカなどの家族経営・小農を苦しめ、
国内農業の破壊と都市への人口集中を進めている。
2008年は世界の都市人口が50%を超えた転換点でもある。
アジアとアフリカで進む急激な都市への人口集中は、
グローバリゼーションによる農村破壊=
奇形的な都市化であり、
風土にあった産業形成を待たずに都市化されるため、
厖大なスラム街が形成されている。
グローバリズムを推進するアメリカは、
一方では「途上国」に、安い労働力を活用した
プランテーション農業など、石油や資材に依存する
「緑の革命 」を押し付けてきた。
1960年代、大不作に見舞われたインドをはじめ、
パキスタン、フィリピンでハイブリッド品種が導入され
大幅な増収が実現された。
その増産を実現した農法が「緑の革命」と称され、
それを指導し世界の食料不足の改善に尽くしたとして、
アメリカの農学者ノーマン・ボーローグには
1970年にノーベル平和賞が与えられている。
しかし、この「緑の革命」の成功には、
新品種の導入だけでなく、灌漑施設(豊富な水)、
化学肥料、農薬など近代的資材の投入と
多額な投資が不可欠である。
1970年代初頭には、「緑の革命」による一時の
増産効果は翳りを見せ始め、
化学肥料等資材の大量投入は農家経営を圧迫し、
土壌を荒廃させ、それがまた気象災害を誘発するなど、
貧困と不作を広げる結果を招いた。
グローバリズムと「緑の革命」は、
自給と相互扶助で成立していた農村を解体し、
小農を離村させて画一的でイビツな都市空間を
世界に広げている。しかし、
グローバリズムに振り回される不安定な世界を
人々は望んではいない。
安定と永続性を求める動きもまた強まっている。
((農文協主張・ 2009年1月号))