おおつもごり(十二支のいわれ)
まえに、神様が、えと(十二支)を決められるときに、
国中の生きものに、布令を出された。
「何月の何日に港へ船の用意をしておくから、
先に着いたもんから乗り込めえ」と、言われたんですなあ。
知らせを受けて、いろいろな動物がやって来て、
つぎつぎに船に乗り込んだ。
先ず鼠がやって来て、チョロチョロと乗り込み、
次に牛がやって来て、ノソノソと乗り込こんだ。
それから、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪と
次々に乗り込こんで、船は一杯になった。
そこで神様は、「もう、これだげおりゃあええ。」と
船を出そうとせられた。
ところがそこへ、鼬(いたち)が、息せき切って
駆け付けてきて、「是非、私も乗せて下さい。」と、
しきりに頼むんで、神様は、
「もう船は、満員になっておるんじゃが、
せっかくの頼みじゃから船の舳先(へさき)に
乗せちゃることにする。」と、言われた。
せえから月の始めのことを、つ・い・た・ちと、
こう言う具合に言うようになったんじゃてえ。
それじゃあ、これで全員揃うたから船を出そうと、
沖へ沖へ出よったら、
今度は羽の生えた横着者の蝙蝠(こうもり)が空からやって来て、
帆柱に止まって動こうとせん、神様は、
「おまえのような横着者は、陽のあたるところへ
出ることは許さん。早う帰れ!。」と、
大いに怒られた。それからというもの、
蝙蝠(こうもり)はいつも洞窟などの暗い所に
住むようになったんじゃ。
蝙蝠は、しぶしぶ帰ろうとしたが、神様も、
「せっかくここまで来たんじゃ。年の暮れに置いちゃろう。」
と、言うことで、せえから年の暮れのことを、
おおつこうもり、おおつごうもりとなったんじゃ。
また、猫は鼠に、日をだまされて、とうとう
間にあわなんだ。せえからというもの猫は
怒って、今だに鼠を追いかけるようになったと
言うことじゃてい。
チャンチャン!。