小麦・米・トウモロコシ・大豆などの基礎食料農産物の国際価格が高騰している。
小麦・トウモロコシ・大豆の国際価格の指標となるメキシコ湾岸輸出価格は、
値上がりが始まる直前の2006年8月に比べて2倍以上になった。
米の国際価格の指標となるバンコク輸出価格は四倍以上にもなっている。
これに、原油高によるエネルギー価格の上昇や、
中国の鉄鉱石等の輸入拡大による輸送需要の増大を主因とする
海上運賃の上昇なども加わって、
パン・米・トウモロコシ製品・乳製品・油・大豆製品などの
基礎食料品価格が、世界中で高騰しているのだ。
その影響は日本の消費者や畜産農家にも及んでいるが、
多くの途上国への影響の深刻さはその比ではない。
国連食糧農業機関(FAO)の最新の「作物見通しと食料情勢」によると、
アフリカ・アジア・中米のいたるところで、
これら食料品の値段が一年前の二倍から三倍にまで値上がりしている。
原料作物の値上がりは、輸入国だけでなく輸出国国内にも及ぶ。
輸出価格が上がれば、国内供給を犠牲にしても輸出が増えるからだ。
そのため輸入国・輸出国を問わず多くの国が、
輸出制限や補助金による安価な食料の供給、
輸入関税の廃止や引き下げ、価格統制などの政策措置を導入して、
価格の抑え込みに懸命だ。
しかし、輸出制限は国際価格高騰をさらに煽る。
安価な食料は何時間も行列しなければ手に入らない。
買い占めて一般市場で高く売る悪徳業者もいる。
関税引き下げの効果は運賃の高騰で簡単に吹きとぶし、
価格統制は闇市場をはびこらせるだけだ。
こうして世界中の貧しい人々が、
国連世界食糧計画(WFP)のシーラン事務局長によって
「新顔の飢餓」と名づけられた飢えと栄養不足に襲われている。
多くの途上国において、都市貧困層や食料が自給できない農民
たちの食料費は家計支出の60~80%を占めている。
そんな状態で食料品の値段が二~三倍になれば、
どうあがいても一日一食分か二食分の食料しか買えない。
WFPさえも必要量の援助食糧を買えなくなり、
援助の一部打ち切りや削減を余儀なくされている。
いま多くの途上国が、深刻な「食料危機」に直面しているのである。