たとえば僕が死んだら | 福留水産0


空腹に耐えられず
お湯を沸かして
賞味期限の切れた
クノールのオニオンコンソメを飲みかけ
熱さで吹き出し全部がびちゃびちゃになり
なにもかもが嫌になったので倒れてみる。

むなしい。

Eテレでは20代の自殺の増加をドキュメンツ。
なぜ生きなければならないのか、ではなく
なぜ死んだらいけないのかわからない、と
モザイクの向こうの少女。

森田童子的思考。
そのニュアンスの違いが分かるなら
きっと答えも知っているはず、と思うけど。

どうして死んだらいけないのか。

だってあなたが死んだら私が悲しいじゃない。
というのが多かったけど全然ピンと来ない。
その点、おしゃかさまの答えはすごかった。

ある日、
不幸で不吉な娘があーもーやってらんない
チョベリバだから死のうと思ってんだよねって
シャカに言ったらシャカは
「お前さあ、死んだら全部終わりだと思ってんの?
死ねばもっと恐ろしい苦しみの世界へ入って
その苦しみは、この世のどんな苦しみよりも、
大きくて深い苦しみだよ。わかってんの?」的な事を言うわけ。

言いきっちゃう。

スカッとしとるね。
そういう炭酸みたいな人に私はなりたい。

二年ほど前、友人宅に遊びにいくと
友人の息子ふたりのテンションがあがりすぎ
鼻血を出しながら絶叫、跳躍、ヘッドバンキングを
深夜まで繰り返し、全然眠らないご様子で
友人夫婦のお叱りもなんのその。
トランス状態で踊り狂っていた。
親のいうことを守らない悪い子め。
ここはひとつ俺がなんとかしなければ、と
イタコになってみた。

和室に正座をして友人夫婦と向かい合い
「今日はどうされましたか」
「息子たちが眠ってくれません」
「それはあなた方夫婦のしつけが悪いので今から鬼を呼びます」

俺はきえええっと唸って鬼を憑依させ
六畳の和室を舞い、友人夫婦を呪い殺した。

呪いの念仏によってばたばたと倒れる両親を見て
先ほどまでのダンシング息子たちはやっとおとなしくなった。
というより、顔は青ざめ世界の終わり、絶望、恐怖。崩壊。
長男はがたがた震え押し入れに引きこもり、
次男はわっと泣き出し熱が出た。


それから一度も呼ばれなかった。

むなしい。