(その8からの続き)
-唐笠(11:30着・12:05発)-金野(13:40着)-
10分ほど歩くと集落が見えてきました。
このあたりで標高はだいたい700メートルです。
門島駅の標高が350メートルらしいので、あの道を300メートルほど登ってきたようです。
道が続いていることだけを祈りながら歩いていたので、あまり疲れは感じませんでした。
むしろ、県道に合流してから疲れが出てきたような。
唐笠駅への最短ルートを突き進みます。
ここからの道間違いは許されません。
…でも、景色はやっぱり素敵だ。
道を確認しながら先へ進みます。
もっとのんびり歩きたいんだけど、時間が…。
次の唐笠駅も丘の下にあります。
少しずつ丘を下りながら、西唐笠・東唐笠の小集落を通過しました。
集落を過ぎると道が狭くなり、急な下り坂が始まりました。
つづら折れの先に天竜川が見えてきました。
やっぱすごい所だよ、ここは。
走るように坂道を下ると、県道64号線が見えてきました。
下り坂はもう少し続きます。
唐笠駅まであと少しです。
天竜川を鯉のぼりが泳いでいました。
川の奥からエンジン音が聞こえてきました。
唐笠駅の近くには、「天竜ライン下り」の終着・唐笠港があります。
どうやら、ライン下りの船が唐笠港に到着して、天竜峡方面に引き返していくようです。
ライン下りを終えた観光客は、どうやって天竜峡まで戻るんだろうか?
やっぱり、飯田線に乗って帰るのかな??
予定より30分ほど遅れて唐笠駅に到着しました。
昼食時間を少し切り詰めて、遅れの回復を図りたいと思います。
光画部御一行が集団駅寝した駅は、この駅がモデル…のはず。
アニメ版の聖地が田切駅なら、こちらは漫画版の聖地といえそうです。
唐笠港からは駅に向かって観光客が次から次に押し寄せてきました。
駅周辺には、唐笠港と1軒の土産物店しかありませんが、
ここまで歩いてきたどの駅よりも賑わっていました。
ホームは1面1線の棒線駅です。
観光客が押し寄せてくるためか、待合室は特急停車駅並みに広いのですが、
それでもベンチに空きはありませんでした。
さて、どこに座ろうか…。
どこといっても、座れる場所は地べたしかありません。
同じ地べたなら、満員の待合室でも直射日光にさらされる屋外よりはましです。
出入口近くの地べたに座って昼食を食べることにしました。
人目を我慢すること約30分、天竜峡行きの電車がやって来ました。
観光客は列車に乗り込み、駅に静寂が戻りました。
上の写真は、電車が出て行ってから撮りました。
そして撮影も終わり、駅を後にしようと思ったそのとき、
ザックの周りに謎の水たまりができていました。
今回の全駅間歩きでは「ハイドレーションシステム」を使っていました。
歩きながらでも、チューブを使ってストローのように水が飲めるアレです。
区間途中の水不足を恐れるあまり、十分に使いこなせていなかったのですが、
このときザックからボトルを取り出してみると、ボトルがほとんど空になっていました。
どうやら、ハイドレーションシステムの飲み口をザックが押さえつけてしまい、
休憩中に水が少しずつ流出していたようです。
水自体はペットボトルの水がいくらか残っていますが、
これからまた丘を登らないといけないのに、水を一気に失ったのはショックでした。
次の駅へ向かうべく、県道64号線で再び丘を登ります。
上り坂と直射日光のダブルパンチがキツイ…。
県道を5分あまり登ったところで、写真撮影している方を見かけました。
カメラの方向を見ると、こんな景色が広がっていました。
あと3分くらいで特急が下の線路を通過するそうです。
せっかくなんで写真撮影に参加してみることにしました。
ガタン、ガタンという音が聞こえると、まもなく3両編成の特急が通過しました。
…で、その写真はないのかって??
え、と、その…一眼レフのダイヤルがいつの間にか動いてて、
シャッターが落ちっぱなしになってしまって…要は白飛びしちゃったんですよ(苦笑)。
マニュアルモードのシャッタースピードは、長時間orバルブになってることが多いもので…。
前にもこーいう失敗やって、撮る前にモードダイヤル確認しなきゃと思ってたのに。
気を取り直して進みたいと思います。
地形図を見る限り、途中から坂がなだらかになるはずでしたが、
実際歩いてみると、同じペースで坂を登っているような感じがしました。
駅から40分あまり歩いたところで、ようやく県道1号線が見えてきました。
合流地点の近くには、集落があるわけでもないのに自動販売機がありました。
ありがたいけど、なぜこんな所に自販機が??
理由はさておき、唐笠駅で失った水を買っておきました。
これで水問題は一安心です。
県道1号を15分ほど歩いて、金野集落にさしかかりました。
標高は700メートルあまり。日本の原風景がそこにありました。
金野集落から金野駅を目指します。
地形図では一本道のように描かれていますが、
実際には所々に小道があり、分岐で確認しながら進みました。
初っぱなから道を間違えて、ちょっと大回りしてしまったのは内緒ということで。
例によって、金野駅も丘の下です。
金野駅へ向かって、長い下り坂が始まりました。
途中に棚田が広がっていたので、思わず足を止めてしまいました。
金野集落から金野駅までは3kmほどあります。
集落を抜けると道は狭くなり、車一台がなんとか通れる幅になりました。
…それでも、たまに車が来るからびっくりします。
坂道を下っても下っても駅が近づいているという感じはしませんでした。
遅れを取り戻さないといけないのに、余計に遅れてんじゃないかという錯覚に陥りました。
いつしか歩みは速くなり、駅が近づく頃には小走りになっていました。
これじゃ駅間歩きやのうて、「駅間走り」じゃけぇ。
ようやく目前に橋が現れました。
この橋を渡れば、金野駅はもう目の前です。
このあたりは駅間ごとに丘の上の集落に行かなければいけないので、
高低差も駅間の歩行距離もハンパじゃありません。
線路に沿って歩くことができたらなぁ。
と、歩いている間ずっと思っていたのですが、
東京に帰って、このあたりの旧版地形図を見てびっくりしました。
(内務省地理調査所発行5万分の1地形図「時又」(昭和8年修正測量・昭和21年発行、一部)を拡大)
線路沿いに道があるじゃん(驚)!
上の地図は旧版地形図のうち、千代駅から金野駅の間を切り取ったものですが、
天竜峡駅から門島駅まで、ほぼ線路に沿って道(聯路)が続いています。
門島駅から先も、現在の鉄道線に沿うように道が続いています。
なんでそんな道が無くなってしまったんだよ!と怒りたくもなりますが、
昔から線路沿いの民家はまばら。鉄道ができると、交通の主体が鉄道にシフトしたのかもしれません。
崖地が続いていることを考えると、崩落もたびたび発生していたのかもしれません。
この橋のように、駅へのアクセス道路として生き残った部分もありますが、
その多くは、時間の経過とともに廃道化してしまったようです。
金野駅が見えてきました。
金野集落からここまで30分以上かかりました。
さっきの地図を見てからこの写真を見ると、左側のスペースが気になりますよね。
かつてこの先に道が続いていたと言われたら、信じてみたくなりますよね。
もっと早く知ってたら、ちょっと冒険してたかも。
(最終回へ続く)
門島駅から唐笠駅までのGPSログです(1/54,000)。
門島駅から今回のルートで丘を登ると、片側1車線の県道1号線に合流します。
ところが、この道を道なりに進むと泰阜村役場方面に進んでしまい、
駅間歩きのルートを外れてしまいます。
正解の県道1号は途中から分岐して、小道に変わります。
分岐点には青看板が立っていますが、うっかりすると直進してしまうかもしれません。