ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集
 
ハオチェン・チャン(ピアノ) ナタリー・シュトゥッツマン(指揮) フィラデルフィア管弦楽団 (3SACD)
 
録音 2021年10月   ステレオ・セッション録音
録音場所 フィラデルフィア ベライゾンホール
 
 初めて聴くハオチェン・チャンは中国、1990年生まれのピアニスト。
ナタリー・シュトゥッツマンはフランス出身の女性指揮者でコントラルト歌手でもあるようだ。
フィラデルフィア管弦楽団は若い頃京都で聴いたが美しい音だった記憶があり懐かしい。
 昔はアメリカのソリスト、オーケストラそして録音でクラシックが聴けるか、という時代だった。
しかしながら現在のグローバル化と技術の進歩により、そのようなことは殆ど無くなったようだ。
 このCDを聴くと、優れた指揮者の要求にオーケストラが十分に答え、その上をピアノが躍るという生き生きとした演奏が展開される。
録音も優秀で音が整っていて大音量の部分でも破綻することはなく豊かな響きだ。
 
 
もう1枚魅力に溢れるアルバムが有った。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集
アレクサンダー・ロンクヴィヒ(ピアノ・指揮) ミュンヘン室内管弦楽団 (3CD)
 
録音 2022年1月   ステレオ・デジタル録音
録音場所 ドイツ、ランツフート、Rathausprunksaal(歴史的市庁舎のホール)
 
 これも初めて聴くドイツ、1960年生まれのピアニスト。ここでは弾き振りを行っている。
 このアルバムでは小編成の室内管弦楽団と弾き振りによる演奏で作曲当時の雰囲気を味わえる。
 専門の指揮者がいる演奏に比べるとオーケストラの自主性に任せる部分が多くなるのだろうがミュンヘン室内管弦楽団は素晴らしい伴奏でロンクヴィヒも楽しんで弾いている様子が伺える。
 録音もピアノは古典的で美しくオーケストラはクリアで各楽器の音が良く聴こえる。
これはハオチェン・チャン版に劣らずついつい手が伸びてしまうCDになっている。
 
 
 
 
 
 
 
 
マーラー交響曲
 
佐渡 裕(指揮) トーンキュンストラー管弦楽団 
録音 2019~2024年   ステレオ・ライブ録音
録音場所 ウィーン、ムジークフェラインザール、第5番のみハンブルク、エルプフィルハーモニー
 
現在までに発売されているCD
 交響曲第1番 巨人 録音2023年、交響曲第2番 復活 録音2019年
 交響曲第3番 録音2021年、交響曲第4番 録音2022年
 交響曲第5番 録音2019年、交響曲第6番 悲劇的 録音2024年
 交響曲第7番 夜の歌 録音2023年、交響曲第8番 録音2023年
 
全般的に音が良いのは特筆ものだ。その要素としては色々考えられる。
 第1は、録音場所でムジークフェラインザールでライブ録音されている。シューボックス型のこのホールは最新の技術で音響設計されたホールと比べると色々と指摘される点もあるが、録音する場合は適度に音がこなれて聴きやすい音になると感じる。それはここを本拠とするウィーンフィルの録音を聴いてみても分かる。トーンキュンストラー管弦楽団はこのホールで定期的にコンサートを開催している。
 第2は、録音スタッフの技術と録音機器の進歩。
レーベルはあまり耳にしないAVEX CLASSICS。社長の中島氏は、ワーナーミュージック・ジャパンのクラシック担当を経て、クラシック部門を設立したエイベックスに移籍してクラシック分野で功績をあげている。佐渡裕氏とも色々な仕事をしており、このCDもその一部となろう。注目のレーベルだ。
 
演奏については
 トーンキュンストラー管弦楽団は日本では知名度が低いものの100年以上の歴史あるオーケストラ。聴くのは初めてだがさすがウィーンに根付いた地の利でウィーンフィルと共通する優美な音色と迫力も併せ持った素晴らしい楽団と感じた。
 2015年から佐渡裕氏が音楽監督を務めているのだが着実に実績を重ねているようだ。このCDでもオーケストラの能力を十分に引き出して細部にわたって魅力的な音とハーモニーが聴ける。2025年にはこの組合せで来日するようだが日程の都合で行けないのは残念。
 
マーラーは少し曲が長いので今まで敬遠していたが初めて聴く気がする演奏に出会うことが出来た。
 
 
 
シベリウス交響曲全集
 
クラウス・マケラ(指揮) オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 (4CD)
録音 2021年   ステレオ(デジタル)
 
シベリウスの交響曲全集には名演奏、優秀録音が多い。
以前、取り上げた「パーヴォ・ヤルヴィ パリ管弦楽団 録音2012年~2016年」、そして「Okko Kamu ラハティ交響楽団 録音2014」、「ロウヴァリ エーテボリ交響楽団 録音2019」等だが、素晴らしいクラウス・マケラの新録音が出てきた。
 
 クラウス・マケラはフィンランド生まれ現在28歳の天才指揮者。経歴は華やかで、2020年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、2021年にパリ管弦楽団の音楽監督に就任。また、2027年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任予定。
 
 さすがに自国の指揮者とノルウェイのオーケストラの演奏らしくシベリウスの爽やかな風を感じる音。
マケラの指揮は最近の新鋭指揮者のような新しい解釈が新鮮だ。昔は聴こえてなかったような音が随所で聴こえてくるので興味深い。しかしながら全体的な完成度が高くこれからどこまで行くのだろう、と期待される。今、生演奏を聴いてみたい指揮者の筆頭に躍り出てきた。
 録音も新しく優秀で周波数特性も自然でダイナミックレンジも広く迫力もある。現在のNO.1 CDではないだろうか。
五所川原から五能線で宿泊地の鰺ヶ沢に向かう。
ホテルグランメールは高台に建てられていて見晴らしがよい。
田舎の港町によくこのように大きなホテルを建てたものだ。
 
夕食後、芝生に出て日本海に沈む夕日を眺める。
この旅はここまで暑いような晴天が続き夕日も美しかった。
 
次の日、リゾートしらかみで五能線沿線観光。
まずは千畳敷へ。15分の停車時間に下車して岩場を散策できる。
サスペンスドラマのロケ地によくなるが延々と岩場が続いている。
 
リゾートしらかみの運転席。この観光列車は全席指定なのでなかなか乗りにくい。空いている時期などは柔軟な運用をしてもらいたいものだ。
 
千畳敷を出ると間もなく深浦の景色が見えてきて列車は徐行してくれる。
深浦はクロマグロ青森県NO.1の水揚げで安く食べることが出来る。
 
不老不死温泉の日帰り入浴に行くためにウェスパ椿山で下車する。
ここを訪ねるのは4回目くらいだが今回は海際の露天風呂に気持ちよく入れた。
最近は写真撮影が規制されているので写真は1枚もない。
日帰り入浴してマグロを食べたのち、東能代に向かうため送迎バスでウェスパ椿山へ。
五能線は各駅停車に古い車両を使用していたが今回は真新しい列車に出会った。
 
 この後、角館に泊まって抱き合わせ渓谷を訪ねたがここでも熊目撃情報が有り駐車場からほんの少し散策しただけで引き返した。やはり熊は怖い。。。

今回の旅は最終日に少し雨が降っただけで天気に恵まれてよい思い出が出来た。

 
 
 
岩木山を下りてからその足で弘前を経由して鶴の舞橋へ。ここも旅行番組で見て是非訪ねてみたいと思っていたところ。
上は宿の部屋から撮影した鶴の舞橋と岩木山。
 
鶴の舞橋は1994年建造の比較的新しい橋で、全長が300mあり日本一長い木造三連の太鼓橋。
歴史の古い岩国の錦帯橋とは異なる特徴がある。
 
鶴の舞橋と名付けられたのは、以前多くの丹頂鶴が飛来していたから。現在は飛来しなくなってしまったが、
橋と岩木山を背景に丹頂鶴が舞う姿を撮影した素晴らしい写真を見ることが出来た。
 
鶴の舞橋は大きな溜池の端のほうにある。そこから見た湖面に日が沈んでいく。
もう丹頂鶴は飛んでこないのだろうか。わずかに4羽のみが飼育されていて見ることが出来た。
 
次の日は五能線で五所川原へ向かいまずは立佞武多の館へ。五所川原の立佞武多は高さ23mの巨大なねぶた。
この6階建ての立派な建物には3台の立佞武多が収められており祭りの際は大きなシャッターが開いて出陣していく。
 毎年8月初旬に催行されるが同時期に青森のねぶた、秋田の竿灯等が重なり凄い賑わいとなる。
来年はこの3つの祭りをこの目で見てみたいと思うが元気でいないと。

 
 

上の写真はジグザグ模様の岩木山スカイラインの観光写真。この不思議な景色に惹かれて初めて訪問した。弘前駅から路線バスに1時間ほど乗って嶽温泉に到着。
 
 嶽温泉近くから見た岩木山の姿(バスの中から撮影)左側の尾根がスカイラインだ。
嶽温泉でシャトルバスに乗り換え、30分位ジグザグ道を登ると8合目に着く。あのジグザク模様は上空からの写真で地上からでは見ることが出来ないことが判明。
 8合目からリフトに乗って約10分で9合目に到着。ここからは徒歩で登るしかない。上の写真は上り初めてすぐの場所から撮影した頂上の姿。
 立て看板を見ると左:岩木山頂上30分 右:鳥海山10分 頂上へはがれ場みたいなところも見え登山の服装でないと無理と判断し、右へ。
 
 鳥海山へ上る途中で見つけた奇麗な花。
 
 下山のリフトから下界を見たところ。9合目の駐車場が見える。この後雲が広がってきた。
帰りも同じルートだが乗換の嶽温泉でバスを待っている時、地元の車から、今すぐの所にクマがいたから下への細い道には行かないように、と。冬眠明けのこの時期は多いが今年は特別のようだ。

 
 



4年半前、バロックリュートに初めて張ったガット弦はAQUILAのHUタイプ。(Unsplit lamb gut strings type "HU")
  
当時はまだHLタイプはなかったと思うが、現在はHUタイプとHLタイプについて以下のような説明がある。
  HU タイプの弦は、リュート、テオルボ、アーチリュートなどの撥弦楽器のchanterelleには使用できません。
  そのような楽器には、オイルを塗った滑らかな牛ガット弦 HL を使用する必要があります。

 *Oiled smooth beef gut strings HL Type(HLタイプは最大径が1.6㎜なのでそれ以上はVタイプを使用するになる。)

 *Venice gut roped strings V type
   オイルを塗った弦でロープのように撚られていますが表面は滑らかで、他のナチュラルガット弦よりも高いねじれ強度を誇り
   高い弾性が特徴です。これにより、高調波が豊かになります。

*HUタイプは3ヶ月のみの使用でGamut製に変更し4年間使用してきた。
 今回エクステンション(9コースー13コース)の5本以外をAquila HLタイプに変更した。
 その理由は、
  ①Gamut製は弦がかなり柔らかいので1フレットの音程が高くなる。
   この対策としてナットの内側にクラシックギター用サドルを加工した板を必要なコースに挟んでいた。
   この傾向はAquila製でもあるが程度は低いのでサドル板は外した。ただ抑える指の力を弱めにフレット近くを抑える事が必要。
  ②最近の円安で輸入弦は高くなったが元値がAquila製の方が安い。
  ③ネットの購入サイトはドイツの Music-strings を使っているので、Aquila以外のSAVAREZ、PYRAMID、KÜRSCHNERも同時に購入出来て便利。

*HLタイプの印象
 まだ張ってからの日数が少ないが、期待通りのパフォーマンスを持っているようだ。
 HUタイプは中域の音のざらつき感がガットらしいと思っていたが、HLタイプはオイルを塗って有るためそれほどでもない。
 これくらいが自然で良いと思う。1フレットの音程問題も抑え方に慣れれば克服できるレベルだ。




(参考)CDストリングス
    バスライダー式のバロックリュートには中低域にCDタイプの合成弦を張っているが、AQUILAのサイトに分かりやすい特徴が掲載されている。
    発売当初は結構切れたが現在ではそれは解消されている。

   *CDストリングス
    CD タイプの弦は、リュートおよびバロックギターの低音域および中低音域で使用される合成弦で、
    押出成形段階で合成材料に金属銅粉末を充填してあり比重が大きいことが特徴です。
    表面は天然腸の表面に似ています。 弦はパーカッシブでボーカルのトーンを持っていますが、そのサウンドは豊かで、
    オクターブでペアの弦と完全にブレンドされます。
    弦はチューニングの安定性に優れています。 明るすぎてリュートの本来の性質に適合しない現代の巻弦の代わりとなります。
 



ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番

反田恭平(ピアノ) アンドレア・バッティストーニ指揮 RAI国立交響楽団
録音:2016年  セッション録音(トリノ) 1SACD

 反田恭平という名前を知ったのは彼が2021年のショパン・コンクールで第2位になったニュース。
その時のライブ録音は音が悪く、ディスコグラフィを探していたらラフマニノフの2番が見つかった。
 これを聴いて驚いた。今までこの曲を色々聴いてみたが良い録音は見つかっていなかった。
本CDは素晴らしいピアノソロとオーケストラ、そしてその演奏を優れた録音がとらえている。
ピアノは明確で爽やかな音、オーケストラは豊かな重低音に支えられ重厚で聴きやすい。
早くショパンの協奏曲を録音してほしいものだ。
 

2024年元日に、Wachet auf ruft uns die stimmeを録音した。
 以前も録音しているが、Nigel Northの新CDに収録されていたのを聴いてTAB譜を見直しした。
色々と気になるところもあるがなんとか納得できる録音になったと思う。
パイプオルガンで弾かれる四声の音をなるべく省かないようにしたつもりだが演奏は非常に難しい。

https://youtu.be/kA07Sp5g2NM



 



ブラームス ヴァイオリン協奏曲

エマニュエル・チェクナヴォリアン(ヴァイオリン) クリスティアン・マチェラル(指揮) ケルンWDR交響楽団
録音:2020年   1CD

 チェクナヴォリアンはウィーン生まれでアルメニアで育つ。指揮、作曲も行う新進のヴァイオリニスト。
使用楽器はストラディバリウス。

 この録音を聴いてまず感じたのが、ヴァイオリンの音が信じられないほど美しいことと、オーケストラの音の分解能が高いこと。ヴァイオリンが鮮明な音でしかも聴きやすい。オーケストラは総奏でも音が団子にならずに各楽器が明確に聴こえる。ブラームスの協奏曲の録音でこのような音はほとんど聴いたことがない。

 演奏も素晴らしくソロは重厚なオーケストラのサポートを受けて堂々としたブラームスを聴かせてくれる。指揮者のマチェラルも新進の精鋭だがチェクナヴォリアンとともに今後が大いに期待できる。

 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、Batiashvili (ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン)の録音がベストと紹介していたが録音が2013年とさすがに音がかすんで聴こえてしまう。近年の録音技術の進歩は凄いと感じる1枚だ。