日本で食糧危機なんてありえない?
『世界で最初に飢えるのは日本』(鈴木宣弘 講談社+α新書)
* アメリカの分断の激化
4日、ニューヨーク市長戦で、民主党急進左派のマムダニが当選、
ニュージャージー州とバージニア州の知事選(こちらは穏健派)でも
民主党が勝利した。来年11月の中間選挙の前哨戦。
特にニューヨークではトランプ関税による輸入品の値上がりがイン
フレを明白に亢進させ猛烈に生活を圧迫したこと、そしてマムダニが
富裕層への増税や家賃の値上げ凍結、最低賃金の倍増などの公約を掲げ
て旋風を引き起こし勝利たようだ。マムダニは公然とトランプとの対決
をぶち上げている。
民主党内でも左派と主流派との亀裂が深刻化することは必至だ。
連邦議会での対立から予算が成立せず政府機関の閉鎖が過去最長に
なるなど民主、共和、両党の対立アメリカの分断は深刻化するばかり。
* 令和の米騒動
日本では米の値段は高止まりしたままだ。貧乏人にはとんでもない
値段。飯が食えないと「棒ラーメン」がバカ売れ。
小泉が備蓄米を放出したものの思ったほど備蓄米が出回らないで値を
下げられないうちに終わり。元農林族が後を引き継いだらすぐさま来年
度の米の増産を辞め、また以前の生産調整=減産に戻ることを表明した。
いよいよ値が暴落するのを恐れたとか?日本の農業政策は小泉=石破
の増産方針からあっという間にひっくり返り、米不足を引き起こした
従来の政策に戻ってしまった。農業政策は混迷するばかり。
米ばかりではなくまた鳥インフルエンザ被害の深刻化で卵がかつて
ないほど値上がりするなど、野菜も肉もあらゆる食料品の値上がりは
続いており、円安が更に進み物価高騰の要因が無くならない。
「コロナショック」に引き続くウクライナ戦争、による穀物、エネル
ギー価格の高騰(23年)以来、引き続く円安により輸入物価は高騰し、
実質賃金は下落し、私たちのエンゲル係数は上がりっぱなし、生活は
苦しくなるばかり。食えなくなっている人たちが激増しているのに、
高市は防衛費のGDP比2%への今年度中の実現などというトランプの
ご機嫌取り暴政を掲げている。全くとんでもない。
米、卵をはじめとする食料品はじめあらゆる物価高騰に私たちは
ずっと晒されているわけだが、「令和の米騒動」とは言っても私たちは
これが本格的な食糧危機というほど深刻なことにまで進行するとは考
えたくはないし考えていない。日本人は甘いんだな。
* ガザ、ウクライナ
だがガザの一時的停戦は停戦とは名ばかりイスラエルの空爆=攻撃
はやりたい放題、ガザへの支援物資の搬入はままならず人道危機は
深刻なまま。
ネタニヤフは自分の政権の維持(=汚職疑惑で牢獄入りから逃れる)
のためという個人的利害だけでガザ住民の大量虐殺をやめようとはしな
いのだからとんでもない話だ。
ウクライナへのロシアの攻撃も、トランプの中途半端な介入のお陰で
返ってプーチンの陣取り攻撃やミサイル攻撃が激化する有様。
戦争はまだまだ深刻化するばかりであり、ヘタをすると局地的な核
戦争の勃発も絵空ごとではない危機的な現状には少しも変わりがない。
* 局地的核戦争のシミュレーション
「米国ラトガース大学の研究者らが、局地的な核戦争が勃発した場合、
直接的な被曝による死者は2700万人だが、『核の冬』による食糧生産の
減少と物流停止による二年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中
し、世界全体で2、55億人の餓死者のうち、約3割の7200万人が日本の
餓死者(日本の人口の6割)と推定した。」
(国際的にそれだけ日本の食糧事情は悪いと認識されている。)
「実際、37%という食糧自給率に種と肥料の海外依存度を考慮したら
日本の自給率は今でも10%に届かない」
「小麦、大豆、飼料用トウモロコシの輸入依存度が、それぞれ86%、
94%、100%にも達している」ほぼ全面的に輸入にそれも主に米国に
依存している。」
* 世界は混迷し飢餓の可能性は高い
そして「重要なことは、核戦争を想定しなくても、世界的な不作や
国同士の対立による輸出停止・規制が広がれば、日本人が最も飢餓に
陥りやすい可能性があるということである。」これが明白になったのが
コロナショックとウクライナ戦争である。
コロナショックによる世界的な物流の混乱で食糧を生産するための
生産資材(農機具、人手や肥料、種、ヒナなど)が日本に入って来なく
なったことは記憶に新しい。
また追い討ちをかけるようにウクライナ戦争が勃発し、穀物、エネ
ルギー価格が高騰した。さらに円安もこれに拍車をかけ、中国などに
「買い負け」しており食糧危機が現実化する可能性がますます明白にな
りつつある。
* 米国依存
こうした状況なのに日本の農業の疲弊は深刻化するばかりで、政府は
日本の食料自給率を上げようとする政策を持っていない。
それどころかトランプに脅され、米国(穀物メジャー)のいうなりで
米国依存をますます強めて(日本の農業を壊滅させる方向に動いて)
きただけである。
日本の政治家も官僚も露骨に脅されると自分の(政治)生命、首に関
わるから何もいう勇気がない。この構造(対米従属のシステム)が最大
のガンである。
(この本の『日本の食料自給率はなぜ下がったのか』)
「お金を出せば輸入できる」を前提にした食糧安全保障は既に成り立
たないことがますます明らかになりつつあると警鐘を鳴らし、この危機
の原因は何か、これをどう突破するべきかをこの本は提唱している。
安保軍事政策だけでなくこの食糧に関してもいかに我が日本は米国
に操られ、いいように牛耳られているかを知ることができる。
食糧を牛耳られることの中には「遺伝子組み換え食品」「ホルモン
漬け牛肉、豚肉」「農薬漬け食品」等を食わされているということ
(食の安全も牛耳られている)も含まれる。
今の日本がいかに危うい橋を渡っているか(そして日本人にいかに
危機感が足りないか、明らかにマスコミが一枚噛んでいるから、危機の
真相を知らされていない)をこの本は教えてくれる。
著者は元農林水産官僚である。米騒動、農業政策などの問題で最近
よくテレビ出演しているが、ボソボソ話し迫力が足りないな。