プラセボ効果 1 | 鬼川の日誌

プラセボ効果 1

   プラセボ(プラシーボ)効果  

                (18、2元記事に補筆)

 

 

  今ボンタンアメが「尿意を抑える効果」があるとして売れに

 売れているそうだ。しかしその科学的根拠は乏しく、効いたと

 思う人たちに効いたのはプラセボ効果だったと思われる。

 

  尿意を抑えるアメなどたわいのないことなら笑って済まされる

 が、昨年の小林製薬の紅麹サプリメントによる重大な健康被害の

 発生などは、サプリメント(一般に健康にいいとか何かに効果が

 あると宣伝されるもの)をどう考えるか、また市場にあふれる

 サプリメントのほとんどがほぼプラセボ効果頼みではないかと

 いう点からも、プラセボ効果とは何なのかをもう一度考えてみる

 必要があると言える。

  しかしプラセボ効果をどう考えるのかということは大変やっかい

 な問題のようだ。

 

  ** プラセボ効果とは?

  「薬効成分を全く含まないが薬剤と同じ形状をした偽薬(プラセボ)

 を投与されても、それが偽薬だと知らされない限り薬効が現れてしま

 うおめでたい人々というのが、どんな実験を行っても必ず少なくない

 数、現れる。多いときには3割、4割も。これをプラセボ効果という。

 それほどまでに人間の身体は信じやすい。」
  (『ルリボシカミキリの青』 福岡伸一) 

 偽薬が一定の効果を上げるということをどう考えるかが問題である。

  福岡ハカセは「プラセボ効果もまた立派な効果である。」と書いて

 いる。だから偽薬であれ効くどうかわからないサプリメントであれ

 「売る人買う人にそれぞれ納得がもたらされるのであればなんの問題

 もない。」と言う。しかし何の問題もないといわれると、なんとなく

 しっくりしないな。

  それは巷に氾濫する「サプリメント、機能性食品」の大半が、医

 薬品・薬剤として売られない限りなんの問題にも問われず、それが

 効くかどうかはほとんど闇の中だからである。「プラセボ効果」頼り

 のものが多いと予想されるのである。

  簡単に言えば「インチキ」がまかり通り(24年には重大な健康

 被害を起こすものー小林製薬の紅麹サプリメントーが出た。そして

 重大ではないにしても様々な被害がある。)それによりしこたま儲け

 るものが現れうることになるわけだ。

  ** 暗示、脳内化学物質

  以下『まだ科学で解けない13の謎』というマイケル・ブルックス

 という科学ジャーナリストの本から、これに関係するところを見て

 おきたい。

  「プラシーボとは、薬剤を介入させない医学処置を指す。
砂糖で

 できた錠剤、スプーン一杯の砂糖水、生理食塩水の点滴その他

 実際にはなんでもいい。白衣を着た医師が次々に患者のベッドサイド

 を訪れて患者を安心させる言葉をかけるだけでも、プラシーボ効果

 は現れる。」


  マイケルは「プラシーボの効き目は、それが持つ暗示によってもた

 らされる。」としている。

  「呪術師やシャーマン、その他、魔術に類する行為の施術者は、

 プラシーボを利用していることが知られている。・・西洋医学の医師

 も例外ではなく、白衣と聴診器が、驚くほどのプラシーボ効果を

 生むこと・・優れた臨床態度にも、プラシーボ効果はある。

  自分は適切な治療を受けているという患者の意識が、治療効果を

 大いに高める・・」

  それがどんなものかが問題だが、「薬剤の化学的作用は、脳内で

 分泌される化学物質によって強まる。」つまり、暗示がもたらすのは

 「脳内で分泌される化学物質」というわけだ。

  「現代の科学的医療は、”無作為二重盲検プラシーボ対象試験”とい

 う概念の上に構築されている。すなわち薬剤は偽薬または生理食塩水

 の注射よりすぐれた薬効を持つことを証明しなければならないのだ。」

  「医療制度は、プラシーボ効果が存在するということを前提として

 いるが、それだけでなく、プラシーボ効果は治験薬の化学作用とは

 区別することが可能だという前提で成り立っている。」ところが、

 物事はそう明快ではないようだ。

 

  (続く)