水準測量から「衛星測位」へ 1
標高とは?
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下記のように水準測量から「衛星測位への移行」が今年行われた
ようです。既に楕円体高などでGPSなどが測量に必須となっていた
わけで、高さをどのように測位して来たのか、高さとは何かを学び
直しておくことは意味あることだと思います。
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衛星測位への移行:
2025年4月1日をもって、国土地理院は標高の基準を従来の東京湾平均海面を基盤とした水準測量から、衛星測位を基盤とするものへ移行します。
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背景:
水準測量では全国の測量に時間がかかるため地殻変動の影響を受けやすく、誤差が蓄積する問題がありました。衛星測位ではこの問題を解消し、大地震直後の復旧工事などでも迅速に標高成果を利用できるようになります。
衛星測位システムには米のGPS、日本の「みちびき」、欧州のガリレオ
などがある。
以下水準測量にもとづく標高とは。20年12月に書いたものです。
(少し補正あり)
** 日本水準原点
私達いや私は相当に「あいまいな」世界に生きていて、かつそれ
ほどその曖昧さで不便を感じることもないので、そのままこの年まで
きている。修正しようとしてもなかなか先端の科学的な成果を理解
するのは難しい。
100名山を目指す人も、3000m以上の山の征服を目指す人もその
山の高さ、標高はとても重要な要素である。
ところで山に限らず高さとはどこから測るものなのだろう。
その基準となる0mはどこなのか?
日本では東京湾霊岸島で、1873年6月から1879年12月にかけて
6年3ヶ月にわたる観測から求められた「東京湾の平均海面」
(ジオイド面)が基準とされています。
そしてこれを0mとして陸地に「日本水準原点」が設置されて
います。当時これは24.500mと決められましたが、関東大地震による
地殻変動で現在は24.4140mと改定されています。
(水準原点は永田町の国会の庭にあります。2011年の東日本大地震で
24,3900mにまた改定された。)
そして霊岸島の観測施設は今は三浦半島の油壺に移され
「日本水準原点」の高さが変化していないかどうか、毎年この油壺
からの水準測量によって確かめられているそうです。
水準点の高さは水準測量によってmmの精密さで決定されて
います。水準点は主要な国道沿いに2kmに1点の割合で全国に
2万点設置されています。
(今は「電子基準点」全国約1300カ所で測位しているのだろう。)
** 平均海面?
ところが平均海面の高さは日本の海岸ならどこでも同じかという
と実はそうではない。北海道から東海にかけての太平洋岸はほぼ
同じだが、四国から九州の太平洋岸では約+10cm、日本海側や
九州西岸では約+20cmになる。
これが異なるわけは相当に複雑だが要は気圧や海流・渦などに
よるものらしい。
そうすると更に世界的に見た場合はどうなるのだろうと疑問に
なる。事実各国はそれぞれ独自に測量を行い高さの基準をきめて
いるので、実はそれぞれの高さ0の位置が国によって異なっている
のだそうだ。
例えばフィンランドとスウェーデンでは20cmを超える差がある。
国境を越えた途端に20cm高さが違うわけだ。
またアメリカでは80年代終わりにに東海岸と西海岸とでは平均
海面に1mに及ぶ高さの差があることが明らかとなり、90年代の
初め北米全体で統一された高さの基準を構築する作業が行われ、
カナダのケベックにある験潮場の高さ1点が原点とされた。
そんなわけで高さ0mの基準を決めることはとても難しいこと
のようです。そうなると世界的に統一された高さや位置の決め事は
ないのだろうか?
** 地球楕円体ージオイド(高)
地球は丸い。しかし完全な球ではなく南北が短く赤道面が少し
膨らんだ楕円体をしている。
(とはいえ目で見分けられるほどではない。)
現代の測量では扁平率が約1/298.256の楕円体が現実の地球に最も
フィットするそうでこの楕円体を「地球楕円体」と呼ぶそうです。
扁平率 f =a-b/a
aは中心から赤道までの距離、bは極までの距離
ちなみにニュートンは既に扁平率を1/231と計算しています。
地球の形は地球楕円体で非常に良く近似でき、更に正確に地球の
表面の形を表現する面のことを「ジオイド面」といいます。
地球の表面積の7割を占める海の上では、ジオイド面は(平均的な)
海面だと考えることが出来る。
陸地の場合は海岸から運河を掘ったとして、海水を通したときに
出来る仮想的な海面をジオイド面と考えます。
ですから標高はこのジオイド面からの高さだということになります。
*(地球全体を平均海水面で覆ったと仮定した場合にできる形
をジオイドといいます。)
地球楕円体からジオイド面までの距離を「ジオイド高」といいます。
地球の形に近似させた滑らかな地球楕円体からジオイド面までの
「ジオイド高」は、凹凸があります。
これは表面が滑らかな卵とほぼおなじ大きさ形のジャガイモを
イメージしこれを重ね合わせたとすると、ジャガイモは卵の表面
より出ているところ、引っ込んだところが出来るだろう。
地球は完全に滑らかにできてはいないから、これと同じことが
起きると想定できる。事実ニューギニア付近では80mほど膨らん
でおり、インド洋付近では100mほど凹んでいるのだそうで、
プラスマイナス100mほどの凹凸がある。
(といっても地球の大きさからすれば半径の6万分の1ほど)
もう一つ重力に関係した凹凸があります。
例えば平均海面高度(ジオイド高)が三陸海岸では35mくらい
なのに、日本海溝付近では20mくらいで15mも凹んでいます。
一般に地下に重いもの(例えば海山など)があれば重力の働く
向きがずれて、ジオイドは盛り上がり、周りより軽くなっていれば
(例えば海溝)ジオイドは凹むのです。
楕円体から見れば海面が凹凸していることになります。
デコボコしていてもあくまでジオイド面が標高0mということには
変わりありません。
(続く)