「暗黒時代」へ
またトラが始まる
米大統領選はトランプとハリスが稀に見る接戦を繰り広げていると
日、米のメディアは予報を流し続けていたにもかかわらず、蓋を開けて
みるとトランプの圧勝に終わった。ハリスは「暗黒時代の幕開け」と
いう敗北宣言を出さざるを得なかった。
その後上下両院も共和党が多数派となり、「トリプルレッド」と文字
通りトランプ党の圧勝となった。(共和党の穏健派はほぼ消滅し共和党
はもうトランプ党の様相。)
トランプは既に忠誠心の強い側近で政権幹部を固め始め、これまでの
民主党バイデン政権の政策をほぼ全てひっくり返す準備を進めている。
* それにしても民主党はなぜこのような無惨な敗北を喫してし
まったのだろうか?
* まず直接的な選挙戦でバイデンはあまりに年で次期4年は到底無理
と誰もが判断すべき状況にもかかわらず、バイデンを越える候補を準備
できなかったことがなんといっても決定的だった。
とうとう耄碌ぶりが露呈するまで引きずった。そして慌ててハリスを
担ぎ出さざるを得なかったが、ハリスを売り込むには既に時間がなく
遅すぎたのは明らか。これでも「接戦」にまでは持ち込んだ。
* なんといっても米経済でインフレの亢進が止まらず大多数の人々
の生活が追い詰められてきているのに有効な対策を打ち出せず、必ず
しもバイデン政権のせいでもないことまで、ともかく現政権への不満
としてトランプにいいように利用された。
しかもなんで?と不思議に思うほどこのキャンペーンに対する有効な
反撃も出来なかった。
(今やこれはエスタブリッシュメント=民主党支持の富裕層や政府、
官僚機構への反逆といった形に作られ始めているようだ。)
* バイデン政権は今なお続いているイスラエルによるガザ(ヨルダン
川西岸地区)のパレスチナ住民の大虐殺、ネタニヤフの暴虐を止める
どころか、イスラエルに対する軍事支援を減らす事すらできず、若者や
アラブ人たち本来民主党支持の人たちのバイデン離れが進み、ハリスも
同じと見なされるしかなかった。
(結局トランプには入れないがハリスにも入れないとなる。)
* 移民の急増に対するトランプの反移民キャンペーンに対しても
ハリス(バイデン)はまるで有効な反撃が出来なかったし、彼ら自身の
方針が必ずしも明確であったとはいえない。
揺さぶられる一方でむしろ本来なら民主党支持のマイノリティーを
トランプ派に切り崩された。
* 妊娠中絶など女性の権利をめぐる問題とか、女性大統領への拒否感
(ガラスの天井)が黒人男性で顕著だったといわれていることとか、米
社会の様々な問題で、トランプ岩盤支持の福音派だけでなく広く米社会
の根っこがマイノリティーも含め恐ろしく保守的である事を露呈した。
何せ未だに「進化論」を高校で教えることを拒否し禁止しようとする
福音派、キリスト教原理主義者たちが米社会の4割を占めていると言わ
れるほどなのである。彼らはトランプに票を投じる。
*
こうした中で起きたトランプ暗殺未遂で、トランプが悪運強く生き延
びたことは、岩盤支持層には「神の思し召し」と受け止められ(何せ
神がかっているいるから始末に負えない)勢い付かせる事になった。
そもそも選挙結果がギリギリの争いとなり僅差で敗北かとなるような
場合には、トランプ派は内戦も辞さずの構えであったのに比較すれば、
民主党側はそこまでの覚悟はなく、基本甘かったと言わざるを得ない。
もちろん総体としては民主党と共和党の勢力は拮抗しているには違い
ないとはいえ、この大統領選の明らかな民主党側の失策により、明白な
ファシストトランプが権力を握った。しかもトリプルレッドでトランプ
の暴走を止めるものはどこにもなくなった。
これで欧州各国における極右政党の躍進と軌を一にして世界的な右
旋回が進むのは避けられなくなった。
ウクライナではトランプは現状で固定しての停戦を強制するつもりの
ようだし、ウクライナが容易に飲めるものではない。ガザもイスラエル
よりの停戦案を押し付けるだろうし、これもハマス側の敗北なくして
成り立たない。良くて混迷の一時的固定。
衆院選で自公政権が敗北し少数連立政権となってしまったとはいえ、
国民、維新などの「ゆ」党のおかげで、第2次石破政権が成立した。
しかも最大野党の立民も基本は穏健多数派の取り込みを目指す程度
のもので他の湯党とぬるま湯に浸かっているようなものだ。
ただ低迷するだけの日本にとってもトランプによる関税の引き上げなど
の諸政策や防衛費負担の増額要求などが不可避で、日本経済の停滞に
拍車がかかるしかない。
今は早速円安が進んでいる。先行きの不安が増すばかり。