ガザ間接交渉
パレスチナ人虐殺が止まらない
4月23日までにガザ南部ハンユニスのナセル病院敷地内で虐殺され埋め
られたパレスチナ人の遺体が310人も見つかった。北部の病院敷地内でも
多数の虐殺遺体が見つかっている。このナセル病院の遺体は28日までに
計392体掘り起こされた。普通ならこれだけでもイスラエルの暴虐に対し
て国際的な糾弾が巻き起こっても不思議ではないはずのものだ。
ところが今やガザでの死者は3万5千人近くになり、数百人の虐殺遺体の
発見では少しも驚かれなくなってしまっている。酷い話だ。
百万人単位のパレスチナ人が飢餓に追い詰められている状態は悪化する
ばかり。子供たちが飢え、衛生状態の極端な悪化で病気で死んでいる。
こうした中ハマスとイスラエルの間接交渉が続けられているが、米国側
はイスラエルが「寛大な提案」をしているのにハマスがこれを拒否してる
ため和平合意がならない、という構図を作ろうとしているようだ。
しかし他方ネタニヤフは「戦闘休止の合意の有無に関わらず」ガザ南部
ラファに侵攻しハマスを壊滅すると述べているのである。ネタニヤフは
極右派と停戦、人質の解放を求める市民の声のバランスを取っているつも
りだが、政権基盤がそれだけ綱渡り状態に追い込まれていることは間違い
ないようだ。
ネタニヤフはハマスとの間接交渉に対して揺さぶりをかけているわけで
もあるが、間接交渉の一方で依然としてラファに対する空爆は止む事は
なく多数の市民が殺され続けている。これではハマスの反発は必至である。
間接交渉の行く方は暗い。
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米国内ではニューヨークのコロンビア大学をはじめとした全米各地の
大学などでイスラエルのガザでの虐殺に抗議するデモが広がっている。
既に逮捕者は千人を越えたそうだ。
パレスチナ人虐殺に対する抗議はイスラエル寄りのバイデンに対する
批判となりいよいよ秋の大統領選挙への影響が必至となりつつある。
ミシガン州などイスラム教徒が多く勝敗に直結する激戦州などでは
「アラブ系とイスラム教徒が次の大統領を決める」事になりそうだという。
彼らはトランプは論外だがバイデンを支持しない。
ニューヨークはかつてから「ジューヨーク」といわれるようにユダヤ系
の力が強く、コロンビア大学の学生の抗議、キャンパス占拠などに対して
の弾圧が直接的な警察力によるものだけではなく、大学側へのユダヤ社会
(資本やロビー)からの締め付け、圧力という形で厳しいのが極めて特徴的
である。米国社会の有り様に直結している。バイデンもユダヤロビーの力
に屈してイスラエルを支持せざるを得ないのである。
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アラブ人やイスラム教徒も多い移民社会米国ならではの抗議行動とも
言えなくはないが、しかし日本の学生たちのこのガザ戦争に対する反応は
情けないほど対照的にほとんどない。今や労働運動は完全に御用組合に
牛耳られ(メーデーで安倍や岸田を来賓に迎える体たらく)、大幅賃上げ
は中小にはまるで行き渡らず、学生たちも社会問題に何一つ声を上げる
こともなく全社会的な抗議活動はほとんど見られない。
まさにここにこそ日本社会の活力のなさが端的に現れている。
多様な声はどこにも聞こえない。
経済的にも日本社会の衰退を如実に示すものとして恐ろしいほどの円安
(日本売り)が進んでいる。一時160円を越えた円安は日銀の断続的な介入
で155円前後まで戻したがすぐに円安方向に振れている。大体155円などと
いうのが少し前まではびっくりするような水準だったはずなのだ。
FRBがアメリカの金利が当分の間下がることはないと発表したし、他方
日銀は利上げに踏み切れない以上また円安が進むことは避けられない。
どう見ても今の日銀総裁は円安を容認しているとしか見えない。
この悲惨な日本社会の状態は政治、経済、軍事、全ての面にわたる対米
従属社会の完成(アベノミクス)の結果に他ならない。
岸田はそれを受け継ぐだけで手も足も出ない。何をどうするかの志向も
ないだけではなく、何かをする力ももはやない。
目前には円安による空前の物価高。庶民は追い詰められるだけだ。
(補)
米国の大学は高い学費を元手にイスラエルに投資し利益をあげている。
結局自分たちの学費がパレスチナ人の虐殺に手を貸している、この構図に
対しても学生たちは抗議しイスラエルとの断絶を要求している。