渡りをする蝶
アサギマダラとオオカバマダラ
(Wikipedia からお借りしました。)
*アサギマダラ
日本ではアサギマダラが本州から南西諸島、台湾まで渡りをする蝶として
知られるようになってきた。だいたい秋頃に南へ渡ることが確認されている
が、集団越冬地は確認されていない。南西諸島や本土温暖地で幼虫越冬した
個体は春〜夏に数世代を重ねながら本土、北海道などの冷涼地へ繁殖のため
渡っているそうである。
秋には逆のコースで一気に北海道・本州から南西諸島・台湾、時には中国
大陸まで一世代で南下することが判明したという。
*食草
蝶は種毎に幼虫がそれを食べて育つ食草が決まっている。例えばギフチョ
ウはカンアオイの仲間、アゲハ蝶類はミカンやサンショウなどミカン科の植
物を食草とするものが多い。
厳密にそれしか食べないので当然その植物が生えてないところにはそれを
食草とする蝶はいない。この辺りでは石老山にカンアオイが多く自生し、春
になるとギフチョウが見られることで有名である。
進化の過程で無用な競争を避けるようになったのだろうが、これは相当に
不思議な話。
*毒
ジャコウアゲハやトリバネアゲハはウマノスズクサ類を食草としてそれが
持つアルカロイド(毒)を体内に蓄えて、鳥などの天敵に食べられないよう
適応しているという。
そしてこのアサギマダラの食草はガガイモ科のキジョラン(鬼女蘭)で
これもアルカロイドを持っている。毒を持つ幼虫はいかにも毒々しい色を
している。天敵への警告色(あんた、俺を食っちゃひどい目に遭うよ)と
言われる。
(鬼女蘭もすごい名前だが、熟した種子に付いている綿毛を鬼女の白髪に
見立てたもの。私は実際にその種子を見かけたことはない。蔓状の葉は高尾
山などに見られる。Cf、Wikipedia)
*オオカバマダラ
日本のアサギマダラと同じようにアメリカからメキシコにかけて3000km
以上の渡りをする蝶がオオカバマダラ(米名モナーク)という蝶だ。この蝶
はカリフォルニア南部やメキシコで、数億匹が集団で越冬するそうだ。そし
て春から夏に3、4世代を重ねながらアメリカ北部やカナダまで北上する。
そしてこの蝶も秋に北米北部からカリフォルニア南部やメキシコまで
3,000km以上も一気に南下するのだという。
この蝶の食草はトウワタというやはりガガイモ科の植物でアルカロイドを
持ち幼虫は毒化して身を守っているという。
日本と北米とはるか離れた地で似たような習性を持つ蝶がいるということ
も進化の不思議の一つだ。
ところが今このトウワタの自生地などが大規模に開拓され少なくなってい
て、オオカバマダラの繁殖が危機にあるという。開拓はトウモロコシ畑で、
トウモロコシから石油代替燃料を作るためだとかいう話だ。温暖化防止とか
いいながら人間は色々な理由で結局生態系を壊していく。何をやってんだか
分からんね。
*毒を持つ
体内にアルカロイドのような毒成分を蓄えて天敵の捕食から身を守るとい
うのは蝶の場合に限らず色々な動物に見られるようだ。また敵への攻撃のた
めに、また捕食(狩り)のために毒成分を蓄えているというのはかなり見ら
れる。こういう場合毒成分からどのように自分の身を守っているのだろう?
これまた考えてみれば相当難しい話のようだ。
(21、11 記、 22、9、5 補筆)