谷川岳・南稜 | 鬼川の日誌

谷川岳・南稜

 谷川岳一ノ倉沢、烏帽子沢奥壁南稜から国境稜線  

   19,6,3~5     

 

 

  南稜登攀は3度目であるが国境稜線に抜けたのは私は12年ぶりの事であ

 る。経験者として同行を頼まれたものの、何とか行けるだろうか?体力的に

 も近頃限界を感じることが多くなった私には不安があった。そして予想通り

 国境稜線に出るまでの長い笹薮漕ぎでヨレヨレに草臥れた。

  何とか稜線に抜けて目の前にそびえる谷川岳(耳二つ)を越え肩の小屋に

 辿り着くことが出来はした。これだけで私には御の字とはいうものの、前回

 も今回も一緒(つまり12年ぶり)に登ることになり私と同じで古希越えの

 もう1人は私よりはるかに元気だった。ジジイは凄女史に完敗。クライミン

 グも上手で何もかも脱帽だが何処にそんなエネルギーを蓄えているのだろう

 と不思議だ。多分オバケに相違ない。

 

  年寄り集団がこんなことをやるんかい!と思ったのは自分達だけではな

 かったようで、私たちが一ノ倉沢に着く前に指導センターの係りが登山届を

 見て後を軽トラで追いかけてきた。書類上の不備もあったらしいが、何より

 6名全員が65才を越え2人は古希越えのジジ、ババ集団だったから大丈夫

 かしら?と確認に来たものらしかった。出来れば引き留めたかったに違いな

 い。彼には肩の小屋の管理人から無事着いたの連絡があったはずだからホッ

 としただろうな。

  (6名、ツルベ3組。)

  

  *

  3日夜平日で指導センターには私たちだけ。夜は暖かかった。

 4日4時大分前頃には起き出して朝飯を食い、車を駐車場に移すなど準備を

 整えセンターを出たのが4:30を過ぎていただろう。

 マチガ沢を50分頃に過ぎて5時頃かセンターの係りが軽トラで追いついて

 きた。

 

 

  一ノ倉沢に着きテールリッジから南稜テラスを遠望する。

 テラスまででもえらいこっちゃ、5:20頃。

 

 

  一ノ倉沢の雪渓は軽アイゼンかチェーンスパイクを装着して登る。そんなに

 硬くはないから問題ない。テールリッジ取り付きに6:05頃着いた。

 

 

  テールリッジを登る。最後のトラバース部分がいやらしいが大分前から

 ロープが張られている。テールリッジを登り終わり衝立岩の基部を巻いてい

 く。これが行き詰った所で一旦少し下りまたテラスに向けて登っていくが

 ここも結構大変だ。

 

 

  テラスに到着して1ピッチ目を見上げる。7:20頃。(ここまで3時間

 近い。)私たちが一番乗り。待ちの時間ロスがないから良かった。

  さあてこれからだ。登攀準備にかかる。

  装備を付けO2の組から登り始める。この時はまだ他のグループは到着し

 てなかった。O2が取り付いて登り始めたところで7:40だという声が聞

 こえた。

 

 

  O2も南稜自体も登ったのは大分前でルートの詳しいことは忘れていた。

 一旦上のビレイ支点でヌン掛けするがこれが左に寄っていたので長めのスリ

 ングを使い、右手に出て上のチムニーになるべく真っすぐに登っていった。

 チムニーも力がいるがハーケンもあるし切り抜けられる。チムニーを抜け1

 ピッチ目の終了点に支点をセットしてコールがてら下を覗いて写真を撮った

 ところでちょうど8時頃。この時テラスには他のグループも到着していた。

 

 

  フォローの登りの様子は全然見えない。8:15前には登ってきた。

 

 

  今回は相棒のツルベデビューである。到着次第リードの準備を整えて相棒

 が登り始める。若干左寄りにルートを取ったようで(つまり難しい方)なか

 なか支点が見つからない様子でランナウトするので心配した。しかし落ち着

 いて登り間もなく見つけてクリップ。後から同じルートをO2も登ったが下

 の方にある最初のハーケンを見落としていたようだ。やはり少し緊張したか

 な?それにしてもランナウトに耐えよく頑張ったものだ。

  02が登り始める前第2組のリードが登り着いてきた。ここで8:30頃。

 

 

  2ピッチ目をフォローで登ると3ピッチ目は草付きの登り半分と易しい岩

 の部分。どうするにせよロープの処理があるので、一応スタカットで私が先

 に登りロープを引きあげ半マストでビレイして相棒に登ってもらった。ここ

 は出来るだけ早く終了させる。3ピッチ目は勘定に入れないこともあるがこ

 の先も奇数ピッチに核心があるので順番通り4ピッチ目は相棒のリード。

  ここは岩を回り込むのであまり先に行くと声が聞こえにくくなるしロープ

 の流れも悪くなるので、なるべく早くピッチを切るようにアドバイスする。

 ここも相棒は落ち着いて登っていった。

 

 

  今日はいい天気で気温も高く岩登り最中はとても暑かった。4ピッチ目の

 終了点はちょうど岩の日影で涼しく少し休む。

  その後5ピッチ目をO2が登る。ここはどの辺りでリッジに出るかまた

 リッジをどう登るかいろいろありそうだ。ロープの流れに気を使う。

 

  リッジを登っていくと幾つかビレイ支点に出来そうなものがあったが結局

 O2はほぼロープ一杯伸ばしてピッチを切る。ここまで延ばすとロープが重

 い。ここで9:40頃らしい。時折雪渓の崩壊音らしいズシンと響く雷鳴の

 ような鈍い音が聞こえてくる。微妙に揺れる感じもする。対岸に雪渓から流

 れる滝も見えるし雪解けが激しく進行しているらしいと分かる。

 

  ここは周りが展望出来て爽快なところだ。相棒が登ってくる。下の4ピッ

 チ目終了点に第2組が小さく見える。

 

 

  5ピッチ目を長く取ったので目の前のリッジを右手に回り込んで足元が切

 れ落ちたチムニー状に直ぐに相棒が取り付く(6ピッチ目)。

  リッジをそのまま登るより易しそうだが足元がなく空中に出るので結構怖

 い。しかしハーケンは沢山あるしホールドも問題なくチムニー状を越えれば

 6ピッチ目は終わる。

  6ピッチ目をフォローで登り最終7ピッチ目の垂壁が全体の核心部分

 (Ⅴ-)。O2リード。少し難しいがハーケンが沢山あるのでゆっくり登れ

 ば問題ない。

 

  支点を作り相棒に登ってもらう。相棒の下に5ピッチ目を登る私たちの第

 2組と第3組の姿が見える。登り終わりが10:40前頃か。私たちはちょ

 うど3時間で登り終えたことになる。相棒も見事にツルベデビュー完了。

  デビューが南稜というのも何とも素晴らしい。

 

 

  私たちは終了点のすぐ上懸垂下降支点の手前でロープを収納し、次の草付

 きスラブ帯の様子を確認するため一段上に上がり取り付き手前で休憩する。

 (12年前に来た時このスラブ岩稜に雪解け水が流れていて、登山靴で登っ

 たのでかなり厳しく苦労したのを覚えていたから履き替えるかどうするか

 だ。)

  草付きスラブ帯は幸い乾いていた。これなら登山靴で登れそうだ。

  しばらくすると後の二組も順調に登り終ったような声が聞こえてきた。

 

  最後第3組も登り3時間だったとか。合図をしてこの取り付きまで登って

 もらい合流し休憩を取るので私たちO2組はここで1時間以上休めた。

  対岸の谷川岳の岩壁が荒々しい。(山頂手前稜線に大きな雪渓が見える。

 雪庇が大きく張り出し今にも崩壊しそうな感じに見えた。)

 

 

 

  (続く)