南カドナミ沢 2
南カドナミ沢 18,9,9 (続き)
三俣で少し休み一番左手の巨岩の左の沢に入る。11:40頃。
沢は狭くなり藪に覆われている。かなりうっとうしい。水はほぼない。
しかし狭い沢だがなかなか厳しい滝がある。12時頃にはコンクリートの壁のよ
うな枯滝に出くわしたりする。もちろん手掛かりはなく巻くしかない。
巻きも結構厳しい。
これを巻き上がったところで沢の後方が展望できた。
もうすっかり藪の中という感じだが、まだまだ枯滝も出てくるからきつい。
この沢に入ってから私は後方を歩いていたが、そのうち先頭がわりと大きめの
枯滝に出くわしたようでこれを乗り越えるのと、乗り越えた後に行き詰ったようで
進まなくなった。これが12:20過ぎた頃。
沢は狭く前には行けないし様子が分からないので、とりあえず右手の笹薮を先
頭の高さまで登れないか藪漕ぎしてみた。かなり密な藪だし急な壁である。時間
は掛かるが登りを交代したらしい先頭の高さまでとりあえず到達した。
声を掛けてみて先頭はそのまま進むのが難しいということなので、こちらにトラ
バースしてもらい私の方を一緒に進むことにする。
結構厳しい藪登りなのでロープを持っているリーダーに上がってきてもらいここ
までの分を固定して、さらに先にロープを延ばして進むことにする。
リーダーたちには後ろの人たちの面倒をみてもらうことになる。
またここで持ってきたチェーンアイゼンを履く。
まずは30mロープの残り分を目一杯のばして固定して後に登ってきてもらう。
まだまるきり深いネマガリ竹の藪の中である。先が見えないので先ほど合流して
一緒に進んできた藪漕ぎ名人のジオグラフィカで現在地と稜線を確認する。
先ほどの沢の先の方が確かに斜度は緩いようだがともかくこちらの先の出来る
だけ最短を選んで進むことにする。その後時折覗く左手方面の上の方はかなり
ごつい岩場のようだった。
一番心配だったのは先が見えないので登れない露岩にぶち当たる事だったし、
まだどれくらい藪を漕げばいいのか地図のおおよそは分かったがまだ検討が付
かないことだった。
30mは使ったので次の難所のため10mロープを担いで進んだ。
右手に明るいところが見えて進むとスラブに出た。これをちょっと心配していた
のだが斜度はそれほどきつくはなくスラブと藪の際をササを掴みながら登れる。
後ろに声を掛け着いてきているか確認しながら登る。スラブから藪、またスラブを
何度か辿り、少し開けた大きめのスラブに出た。ここでもジオグラフィカで現在地
を確認して真っすぐスラブの際を登り先に見える露岩の壁を何とか越えて上に登
るのが一番近いことが分かった。
しばらく後ろが迷わないように待つ。こうして大きめのスラブを登り始めると後ろ
が開け下の道路が見えた。随分深い藪を抜けてきた。
この時で13:15頃。
上の岩壁に着くと左端が登っていけそうだった。易しいクライミングだがチェーン
アイゼンは外し、落ちると下はスラブで止まらないので、持ってきた10mロープを
固定して後ろに登ってもらう。この後今少しの藪漕ぎでようやく稜線に出た。
13:40頃だった。
足拍子岳と荒沢山間の稜線だが踏み跡程度で藪の中である。稜線に出たことを
後ろに声を掛けて皆が登ってくるのを待つ。この時はこれから降るカドナミ尾根は
良く見えていた。
ようやく藪を抜けることが出来たがかなりきつかった。後ろはへばった人がいる
らしくなかなか上がってこなかった。後で聞くとへばった人は笹薮の登りで何度も
ずり落ちてリーダーたちがこれを支えながら登ったらしく大変だったようだ。それ
でも20分ほどの遅れで辿り着いてきた。元気な人は山頂で休むことにして登る。
山頂に行くまでの左手は露岩や急斜面で、地図上では少し緩い斜度だが沢の
延長を辿ってもそう易しい登りとはいかなかったようだ。実際スラブに出て左手を
見上げても岩場が多くそちらに行く気はしなかった。
山頂には14:15~25頃に着いた。沢で行き詰ってから2時間くらいかかった
ことになるが、藪漕ぎの途中でも何度も待ったしそのうちの3分の1以上は待ち
時間だったようだ。
行き詰ってからこちらに合流し、途中ジオグラフィカで現在地を確認してくれほぼ
一緒に登ってきた藪漕ぎ名人はこの山で(残雪期に)亡くなった知り合いがいると
いうことで、持ってきた花を手向けていた。
皆が到着して休憩が取れたところで下山に掛かる。この頃には弱い雨が降り出し
ガスが掛かってきた。見晴らしがないこともあり、すぐ近くのはずのカドナミ尾根の
入口がなかなか見つからなかった。
カドナミ尾根は急なうえ粘土質で雨に濡れ酷く滑り易く、登山靴でも何度も転ぶ
人がいたくらいだったからチェーンアイゼンはかなり有効だった。何人かが持って
きていた。
下山に1時間20~30分くらい掛かり16:30前頃にようやく降りついた。
宿泊した宿で下山後に風呂に入れるということで直ぐに宿に向かう。
濡れ鼠だからこれは有難い。
さっぱりした所で駅近くのソバ屋で名物ヘギソバを食べて帰京した。
運転は車を出してくれたリーダーとサブリーダーにお任せして他のメンバーは
ビールで乾杯。何から何までお任せして申し訳なかったが結構疲れたのでこの
一杯は美味しかった。
初級の沢ということだったが、滝に挑戦すれば中級だと案内に会ったように
結構難しいツルツル、ヌルヌル滝が多かった。それより何より詰めが厳しかった。
へばった人はかなり往生したようだが上越の沢によく来ている藪漕ぎ名人に
よれば上越の沢の詰めはどこもこんなものだということらしい。
初級ということで私たちの覚悟がまるきり足りなかったようだ。
(了)