沢始め | 鬼川の日誌

沢始め

 丹沢・勘七ノ沢  18,4,21   

 

 例年ゴールデンウィーク明けが沢始めとなる。しかし今年は雪解けが早いし桜も早く

 4月というのに真夏日になるところが出そうだという。ついこの前までスキーで雪山に

 いたというのにそれならと沢始めで勘七ノ沢に行くことにする。21日確かに暖かい。

 今日は物好き4名。

 

 渋沢に着くとバス停は大行列。知らなかったが今日が丹沢の山開きだという。私たち

 はタクシーだがこれも少し待った。来たタクシーの運転手は人出の多さにこれは今日

 は稼ぎ時だとえらくハイテンションだった。「県民の森」までも多くのタクシーとすれ違う

 しゲート前には車がずらりと駐車している。

 

 県民の森のゲートを過ぎて少し歩くと二俣。ここで沢登りの装備を着ける。ちょうど

 装備を着け終わり先行する3名組がいた。今日は私たちとこの組だけだったようだ。

 

 

 

 入渓が9:40頃でいつものように堰堤を越え、小草平ノ沢を分けるとF1である。

 

 

  ここはロープを出しO2がリードする。沢始めの最初の滝の登攀だし沢を歩き始め

 て直ぐということもある。ここは初めのほんの一手二手がちょっと悪い。お助け紐に

 ヌンチャクを掛けランニングビレイにするとともに後続の補助にして上がっていく。

 もう一つボルトがある。上がった棚にはしっかりした支点用ボルトがある。後続の

 ビレイ支点をセットして上がってもらう。

 

 

 F1を越えてロープを収納し少し歩くとF2とその上の大堰堤が見えてくる。

 

 

  F2滝の右手の立った壁を登る。ホールドは豊富だが高さはそれなりにあるし前半

 かなり岩が脆い。その点を注意して登るように確認する。ここはたいだいロープは

 出しても補助程度で登れるから今日は出さずO2から取り付く。登りながらボロボロ

 崩れるものは落として登る。皆さんも慎重に登ってくる。登ると目の前が大堰堤。

 

 

 振り返ると新緑がきれいだ。

 

 

 大堰堤は右手の崖を巻き登る。

 

 

 次のF3も近い。F3は滝の右手も左手の壁も登れるが滝壺のトラバースが面白いの

 で大体は滝の右手(左岸)のつるつる壁を登る。滑らないように登る必要がある。

 

 

  また直ぐの二段滝F4に近づくと先行の3人組が登っているのが見えた。私たちも

 続く。二段目の滝右手横にチムニーがありこれを登る。お助け紐がぶらさがってい

 るがかなりボロイ。使ってもあまり力を掛ける気がしない。

 

 

 滝横のチムニーを皆が登り終わった所で10:40頃。入渓してからほぼ1時間。

 F1以外はロープを出してないのでかなり早い。先行組みに追いついたこともあるし

 ここで少し休憩する。この先は都合5つの堰堤が続く。3つ目の堰堤は大きい。

 堰堤の左手脇を登るのだが一手結構いやらしいところがある。

 

 

 4番目堰堤は巻き道があるが崩れ気味で新しい踏み跡が付けられていた。

 5番目堰堤は右手脇を登れる。ちょうどここに倒れ掛かった木(多分上から根こそぎ

 落ちてきた)があるがもう何年もこの状態で頑張っている。

 

 

 その後10分弱遡っていくと勘七ノ沢メインのF5大滝が現れる。

 

 

 先行3人組はこれを登らず左手のルンゼから巻いて上がっていった。しかしこれを

 登らなくては勘七ノ沢に来た甲斐がないというものだ。これから沢登りを引っ張る事

 になる仲間達にもリードに挑戦してもらいたいが今日はO2が取り付く。

 

 

 下部にはボルトが二つあったが上半分3つ目のハーケンが見つからない。錆びた

 ハーケンだから茶色いコケに紛れてよく分からず、大分ランナウトするけれど仕方

 ないので落ちないよう慎重を期してそのまま登る。確か昨年は見つけたはずだが。

 沢の滝登りではこんなことがありうるからこれをどう乗り切るかが問われる。危ない

 と思えばハーケンを打ち足すか、ランナウトを覚悟で登るか。ビレイヤーもリードの

 行動を良く見て対処しなければならないだろう。ここはそう難しい登りではないので

 慎重に登ることにした。少しシャワーを浴びる。

 滝落ち口に登り着いてしっかりしたボルトでビレイ支点を作り後続に上ってもらう。

 

 

 皆さん快適に登ってくる。

 

 

 登り終わったところで11:40過ぎ頃、入渓から2時間はかなり順調。ちょうど昼頃で

 もありここで昼飯とする。滝上から見下ろす新緑も素晴らしい。

 

 

 昼飯休憩後先に進むと小滝が続く。最初の小滝は問題ないが次にコケで真っ黒に

 なった小滝は良く滑る。いつも誰かが落ちたりするが今日はすんなり通過する。

 

 

 次は滝中は頭からシャワーなのでさすがにこれは遠慮して左の壁を登る。

 

 

  この先でゴルジュに入る。

 

 

 ゴルジュの中は狭いので横壁を突っ張りながら登るがここはどうしてもかなり濡れる。

 しかし今日は寒くもないしむしろ気持ちがいいくらいだ。水浴びを楽しみながら登る。

 

 

 直ぐにコケで真っ黒になった小滝。滑り易いが難しくはない。(一番狭い所は終わり。)

 

 

 またトイ状小滝。今日はシャワーを浴びながら中央突破するにいい日だった。

 コケで結構ヌルヌルの所もあったが皆お助けなしで突破する。

 

 

  これでゴルジュを抜けさらに小滝を越えて進むと壊れた堰堤の下のF6が現れる。

 滝一面がコケで覆われて黒くヌルヌルだがこの状態の時にもう何度も登っている。

 中央左辺りが手掛かり足掛かりが豊富なので皆さんフリーで突破する。

 

 

 これで勘七ノ沢の滝登りで楽しめるものはほぼ終わりである。この後荒れ気味の沢

 を遡っていくと4mほどの小滝とその手前に左から大崩壊した枝沢が合流する。

 この崩壊は結構凄い。

 

 

 この4m小滝を上がりきると背後に登れそうな尾根が見える。これが花立と堀山の

 中間辺りの登山道に出る尾根である。

 いつもはまだこれから湧き水ポイント、鍋割山側からの大崩壊地などのランドマーク

 を過ぎて三俣の真ん中の沢を遡る。この先の滝を登りまた更に枝沢に入るのだが、

 この沢が崩壊が激しい。グズグズの怖い詰めを辿るのも沢登りの醍醐味の一つだ

 ともいえるが今日は滝登りを楽しむことで終わりにして、この背後の尾根を詰める

 ことにする。

 ここですこし休憩する。登山靴に履き替えるか沢靴のまま(チェーンアイゼンを着け

 るか)かは各自好きにする。

 

 

  尾根に取り付いたのが12:50近くだ。この取り付き付近と取り付いてからしばらくは

 相当に急斜面である。写真ではなかなか分からないが地図の等高線の狭まりがどの

 程度でどれくらいの急斜面か実感させられる所である。

 

 

 こういった柔らかくて急な斜面にはチェーンアイゼンやストックがかなり有効だ。

 

 

 尾根には山椒の木の新芽が瑞々しく香りよく、ミツバツツジが咲いていた。しかし既

 にこのミツバツツジは萎れ気味になっていた。季節が進みすぎでは?

 

 

  尾根を登り最後の急斜面をそのまま登り詰めれば登山道に出られたのかもしれな

 いが、少し手前でトラバース気味に登山道に出ようとしたがあまり良くなかった。

 しかし上手いこと鹿避け柵の切れ目辺りに辿り着いて登山道に飛び出した。

 ちょうど花立と堀山の中間ベンチのある辺りでとても大勢の登山者が休んだり行き

 交ったりしていた。かなりの大集団が降っていった。山開きとなると(天気もいいし)

 こんなに登山者がいるのだと感心する。

 

 急斜面の詰めは結構疲れた。ここでまた休憩を兼ね登山靴に履き替えてなかった

 人は履き替える。私はそれに忙しくて記録のための写真を撮るのを忘れた。登山道

 に登りついたのが13:30頃で準備を終えて降り始めたのが13:45過ぎだった。

 

 相変わらずバカ尾根の降りは階段が多くて膝に悪いし疲れる。カエデの若葉が気持

 ちを宥めてくれる。あまり写真も取らず黙々と降る。

 

 

 下山口にはシャガが盛りと咲いていた。カエデの赤い新葉や八重桜がまだきれいに

 咲いている。

 

 

 15:25頃には大倉バス停に着いたようだ。着替えたり帰りの準備をしてバス待ちの

 大行列に並ぶ。臨時便も出たが何台か乗れず見送った。

 

 

 渋沢駅に出ればまたいつものように沢始めの無事を祝して飲み屋で気持ちよく飲む。

 例年よりは半月以上早い沢始めだったが絶好の沢日和となり、気持ちのいい滝登り

 を楽しめたので何よりだった。勘七ノ沢は私はほぼ毎年沢始めで来ている。適度に

 滝登りを楽しめていい沢だと思うのだが、どういうわけかあまり例会では出す人がい

 ないな。その理由の一つに丹沢で猛威を振るうヒルの存在がある。今回はまだお目

 にかからなかった。まあ天気を選び忌避剤や塩などを使えばそれほど被害に会うわ

 けでもないからもっと登られていい沢だと思う。ちなみに西丹沢ではほぼ被害は聞か

 ない。

 (同行の仲間の写真をお借りしました。主にO2の登攀時のもの。)

 

 今日の沢登りルート図を載せます。滝の位置はGPSの記録と写真の時間を照らし

 併せて書き込みました。

 

 

   (了)