エネルギーと糖 | 鬼川の日誌

エネルギーと糖

   続、捕らえられた細菌    (10,9,10 元記事)

 

  約46億年前に地球が出来てから数億年のうちに生命が誕生したと考えられて

 いる。

  原始地球の過激で嫌気的な環境の中で原始生命が細胞の形で誕生し、変化し、

 自然選択の篩に掛けられながらやがて原核生物と呼ばれる細菌のような生物と

 なって20億年もの間進化を続けた。

   *

  最初の細胞が生まれてから1億年ほどたったところで、太陽から降り注ぐエネ

 ルギーを利用して炭酸ガスと水から糖類をつくる光合成細菌や、窒素を利用して

 栄養物を作る 窒素固定細菌が生まれた。

  ちなみに単糖グルコースは(C*6 H*12 O*6)

 (ブドウ糖ともいいます)。

  ガラクトースも同じ単糖。これら単糖類が脱水合成して二糖類、沢山集まって

 多糖類となります。 

  このようにしてつくられた栄養物を小さい分子に壊すときにはエネルギーが得

 られる。

  このエネルギーをどのように効率的に得るかが生命が生き残る鍵である。

  初期の光合成細菌は硫化水素の水素を利用しており効率も悪かったがやがて水

 の水素と炭酸ガスを使って効率よく光合成を行う細菌が進化した。

    CO*2 + H*2 +太陽エネルギー →  糖  

  (坂を上がる化学反応)

  このような細菌はシアノバクテリアとか藍色細菌(緑色細菌)と呼ばれている。
 藍藻類と呼ばれるもの。


  水(H*2+O)の水素を光合成に使うと酸素が廃棄物として放出され酸素が

 地球の大気圏を満たし始める。

 
  ①  6(CO*2) + 6(H*2O) (+太陽エネルギー


           

       → (C*6 H*12 0*6) +  6(O*2)         

 


   *

  光合成によってブドウ糖のような糖類を作る細菌が繁殖すると今度はそのブド

 ウ糖を食べて生きる細菌が増えてくる。勢力を得たのはブドウ糖を分解して、

 アルコールや乳酸にする細菌である。

  ブドウ糖という分子の秩序を保つために使われているエネルギーがブドウ糖を

 分解すると放出される。放出されたエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)

 という分子のなかに貯めることが出来る。(坂を下る化学反応)

  このように蓄えたエネルギーを必要なときに必要な反応に使えることが出来る

 ようになって、細胞の能力は飛躍的に拡大された。

  地球上に酸素が少ないうちは糖類の分解に酸素を使えなかった。
 このような嫌気的な反応では一個のブドウ糖を分解(アルコールや乳酸に)して

 出来るATPはたった二個。

  シアノバクテリアなどにより地球上に酸素が増えてくると糖類の分解に酸素を

 利用する細菌が出現した。このような細菌はブドウ糖を炭酸ガスと水に完全に

 分解することが出来る。

  このような反応は好気的な反応と呼ばれ一個のブドウ糖を分解すると三十八個

 ものATPを得られる。これが呼吸である。

  ②  (C*6 H*12 0*6) + 6(O*2)

      →  6(CO*2) + 6(H*2O)  (+38ATP



  呼吸というのは光合成細菌が太陽光線のエネルギーを捕まえて糖類のなかに

 蓄えたものを取り出し、ATPのなかに蓄えなおすことといえよう。

  呼吸する細胞が地球上に繁栄するまでには、最初の細胞が生まれてから15億

 年の時間が経っていた。

 

  この①坂を上がり、②坂を下る、簡単な化学反応こそ現存の生命にとって極め

 て根源的な意味を持つものだといえるようだ。 

    *

  光合成細菌が現れてからさらに2~3億年が過ぎる間に、細胞の中にDNAが

 裸で入っているのではなく核膜という袋の中に包み込んで(核をもつ)いるよう

 な古細菌が現れた。始原真核細胞。

  始原真核細胞は他の細菌や古細菌を自分の細胞の中に取り込む能力を持って

 いた。細菌や古細菌のなかにはそのまま住み着いて共生するものが現れた。
 このようにして現在の真核細胞ができた。

  その一つが光合成細菌を取り込んだ真核細胞である。

  光合成細菌は真核細胞の中で光合成に最も都合の良いかたちに変化していき

 葉緑体と呼ばれる現在の姿になった。
 これが植物の起源である。

  光合成をする生物が増えれば増えるほど地球上の酸素は増える。しかし酸素は

 細胞内の分子を酸化してしまうので細胞にとっては毒物である。

  この環境汚染から身を守るためあるものは地中深くもぐって酸素の影響から

 逃れ、あるものは好気性の呼吸をする細菌を細胞内に取り込んで共生するという

 方法をとった。

  好気性細菌は酸素を使ってくれるのでその毒性を回避することも出来るし、

 ATPを生産してくれるのでエネルギーを得ることも出来一石二鳥である。

  真核生物と共生した好気性細菌はさらに呼吸に都合のよいかたちに変化して

 ミトコンドリアと呼ばれている現在の形になった。

  葉緑体とミトコンドリアはそれぞれ固有のDNAをもっていて、染色体の

 DNAとは独立に複製される。これはかつては独立した生物であったことを示す

 証拠とされている。

    *

  真核細胞のもう一つの大きな特徴は動く能力を持ったことである。

 細胞に動く能力をもたらしたものは細胞骨格である。

  葉緑体やミトコンドリアが原核生物起源であるのなら、細胞骨格もまた原核

 生物(スピロヘータ)起源なのではないかという説がある。動物の起源

    *

  現在の生命世界は細菌(原核生物)真核生物だけでなくその中間に位置する

 古細菌と呼ばれるグループが存在することが最近になって確認され、三つの

 グループと考えられるようになった。

  真核生物が生まれるまでには20億年近い年月が費やされている。


   (cf、『われわれはなぜ死ぬのか』 柳沢桂子)