阿弥陀岳・北稜 2 | 鬼川の日誌

阿弥陀岳・北稜 2

 北稜登攀  17,11,26     (続き)

 

 

 直前雪壁で出したロープを回収して取り付きに向かう。ここでも準備してO2の班から取り付くことになった。まずはいつものクラックを登る。最初のクリップの時左手のジャミングが良く効く。細かいことまで覚えているわけではないが何度もリードしているしここは問題ない。

 

(S)(S)

 

 岩を乗り上がったところにもしっかりしたボルトが打ってあった。足元の雪は岩にただ乗っているだけで保持力は全くない。落ち葉を踏むようなものだ。ボルトのある岩を回りこんで行くと岩混じりの土壁(草付き)の垂壁がある。これがしっかり凍り付いているのか脆いのか何とも微妙でいやらしかったので、私は基本その上の雪面(下は草付きか?)にピッケルを打ち込んでこれをホールドにして乗り上がったように思う。上がると傾斜も緩くなり雪稜になる。ここからはボルトは見当たらないので潅木や岩に支点を作りながら1ピッチ目終了点まで行く。2ピッチ目となる岩にボルトが打たれてある。

 支点を作りフォロー(2人)に登って来てもらう。ロケーションが素晴らしい。新リーダーSさんが先にJfさんが続く。

 

(S)

 

 続いて第2班のリードのTさんが登ってくるのが見えた。Tさんは以前ここをフォローでは登っているがリードは今回初めてだろうからさすが新リーダー頑張ってます。

 

 

 私たちは2ピッチ目登りの準備が出来た所で新リーダーSさんがリードで取り付く。Sさんはここは初めてのリードだから、目の前の岩を登りその先のナイフリッジを越えて雪壁になったところでハイマツか何かを掘り出して支点にするというレクチャーはしておいた。Sさんは取り付きの立った岩も問題なく登っていった。

 

 

 その先は見えないがしばらくしてSさんからコールがあった。問題なく支点を見つけたようだ。O2、Jfさんとフォローで登っていく。岩を上がった所でコブシより大きめの岩が完全に浮いていて後ろの人に危ないので、ナイフリッジを越えて安全な所まで運んだ。

ナイフリッジを越えるO2とJfさん。

 

(S)(S)

 

 Sさんは掘り出すまでもなく突き出ていたハイマツに支点を取っていた。

 

 

 富士山、赤岳の展望。

 

 

 続いてJfさんが終了点上の安定した場所まで上がってきたところでロープを手繰りSさんにも上がってもらう。この先は普通の雪壁であるからコンテにするほどでもないので私たちは一旦ロープを収納し山頂に上がることにした。私たちが山頂に歩き出した所で、後続第2班の2ピッチ目リードのMsさんが終了点に到達してビレイ支点を作っている所だった。女性班は力のある2人だからツルベで問題なく登ってきた。

 

 

 山頂へ。この頃後ろを振り返ると第3班リードが2ピッチ目を登ってくるのが見えた。

 

(S)

 

 阿弥陀岳山頂に着いた。12:35頃。ぐるりと360度の展望だが北アルプス方面遠くは霞んでいた。

 

 

 13時過ぎには第2班が到着した。ご苦労様でした。

 

 

 今日は全般的には暖かいほうだったようだがさすがに山頂は風が冷たいので先着組は少し降った所で風を避けながら後ろを待つ。第3班はYリーダー、Jリーダー、Mkさんとコンテで上がって来た。山頂(13:20頃)はYさんの写真。

 

 

(Y)

 阿弥陀岳の登山道は急峻なので下山は各班コンテで降る。13:40近い頃から。

 

 

 阿弥陀岳を降り終わると踏み跡は一旦中岳沢に降るがまた稜線に戻っていた。中岳沢には全く踏み跡がない。この間一気に積もったし今日は少し暖かいので雪崩が心配で入るのに躊躇した。しかし時間的にも午後2時近くになり日が翳り始め、よく見ると中岳沢に落ち込む斜面にはほとんど雪が残っていない。地肌が出ている。落ちる雪はもう落ちてしまっているようだった。中岳を回ったのでは時間がかかりすぎることもあり中岳沢に入る。雪が谷に落ちているわけでその分相当に深かった。ほとんど腰近くまで嵌り込むところもあるくらい。ラッセルが結構大変なので交代しながら進む。そのうち班毎ラッセルを何度か交代する。

 

 

 沢がほぼ終わりに近づき傾斜が緩んだ所でコンテを解く。行者小屋に帰り着いたのが15時に近かった。

 

(Y)

 

 帰路は南沢を下る。いつも少し遅くなった場合は南沢を降るか北沢を降るかが問題である。北沢へは少し登り返して中山峠を越えていかなければならないが、この登り返しは大したことはない。しかも赤岳鉱泉に降った後の山道が短い。もちろんその分林道歩きが長い。美濃戸までは林道も凍っている。しかし(軽)アイゼンさえ用意すれば歩き易いので暗くなりそうなときはこちらの方が楽だと思う。

 南沢は直ぐに入れる。しかし最初はふかふか雪でいいが半分から以後結構悪い山道だしとりわけこれからは凍結箇所も多いので余計歩き難い。最後に急な登り返しがある。案の定足の遅いグループはすっかり暗くなってようやく美濃戸に到着した。

 凍結箇所の多い山道ではアイゼンなしでは歩行は困難である。しかし12本などの歯の大きいアイゼンも岩がちで雪のないところもあるような道では歩き難いのも事実で(捻挫し易い)、ハイキングアイゼン(4本)とかチェーンアイゼンとか歯の小さなものが使いやすい。この用意のない人が難儀した。

 

 今はプレシーズンということもあるのだろうが、朝食が6:30と遅くこれを食って出たのでそもそも出発が遅かった。その上私たちは足が早いほうではない。登攀にも時間が掛かる。そんなわけで結局また暗くなって下山ということになってしまった。

 まあしかし思いがけず雪がたっぷりで冬山ヴァリエーション訓練山行の目的は十分達成することが出来た。新リーダー達も頑張ったしいい経験になっただろうから実りの多い山行だった。

 

 

  (S)(Y)さんの写真を沢山お借りしました。

 

  (了)